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『ワールドマスター』/サイバーソーシャルネットゲーム  作者: 著者不明
ERROR4 『偽りのディカイオシュネプログラム』
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プロローグ


 ぐるぐると視界が回転していく。

 大空、吃驚している生徒の顔、地面、痛そうに顔をしかめている生徒の顔、大空、吹き出して笑う虎雄、地面、なんか叫んでる未来、大空――


「どんぎゃるばぁっ!!」


 後頭部を地面にぶつけた鈍痛に俺の口から奇怪な叫びが飛び出した。何回転したか分からない身を地面から起こして顔を上げる。俺を吹っ飛ばしたポニーテールのイケメン――相馬栄治はやれやれといった感じで両手を天に向けていた。

 俺は体に痛みを感じながらゆっくりと立ち上がり、くつくつと笑う。


「くっくっく、見事な剣捌きだな、相馬っち。さすがは《ホワイトフォース》のリーダーをやっているだけはある。だがこれしきの剣撃、俺にダメージがあるとでも?」


「正義くーん。足が笑ってるよー? めちゃくちゃ効いてるように見えるよー?」


 離れたところで座っている虎雄が手をメガホン代わりにして言っていた。その言葉に周りで座っているクラスメイトたちもクスクスと笑っているではないか。なにこの辱め。


「こらぁっ黒猪っ! ちったぁ踏ん張れや! 査定できねぇだろうが! てめぇマジで実技0点にすんぞー! 単位やらねぇぞ!」


 武道実技講師がぎゃーぎゃーと喚いていた。

 そんなこと言われたってこちとらか弱い男の子である。幼少の頃から剣道場に通っていた相馬っちの相手をしろというのが間違っているんじゃなかろうか。

 二一五三年、サイバー社会と言われる昨今では電気、水道、交通機関といったライフラインのすべてを人工知能が管理するサイバーネットワークにより人の手を煩わせることなく機能している。

 今まさに、俺たちが受けている学校の授業でもサイバーネットワークは利用されている。必要な仮想現実空間や、道具がぽんぽん出せるというのがサイバーネットワークのいいところだ。なので体育の授業や武道の授業は仮想現実で行う学校も少なくない。

 特に、俺のような次代を担う秀才が集められた城東学園はそれが顕著だ。

 もはや人類にとってサイバーネットワークは生活の一部であり、サイバーネットワークなくして人類はこれ以上の発展もないだろう。

 サイバーネットワークはそれだけでなく、人類の娯楽にも大きな影響を与えた。

 それがCSN――サイバーソーシャルネットと呼ばれる仮想現実空間だった。特にそこで行われているCSNゲームと呼ばれる多人数参加型のRPGゲームは留まることを知らない成長を見せている。そのCSNゲームの中で最も注目を受けているのが『ワールドマスター』というタイトルだった。攻略すれば賞金一○○億円という目玉が飛び出る話に既存のCSNゲームプレイヤーはもちろんのこと、興味はあるけどきっかけがなかった人や、ゲームに興味がなかった人を巻き込んで新規参入プレイヤーは増加する一方だった。

 俺が少し回想している間も顎鬚生やした筋肉ゴリラが人の言葉を操って俺に発破をかけている。

 えぇい、うるさい実技講師め。0点だろうが別に構わないけど……このままじゃヤツも収まりがつかなそうだ。……仕方がない……。

 俺はゆっくりと立ち上がり模造剣を構えた。


「頑張ってー、まぁくん! まぁくんならきっと勝てるよっ! へっちゃらだよっ!」


 白いヘアバンドをした少女――明日野未来が興奮した様子で拳を振りかざす。

 その声のする方へ俺は歩いていき、未来の首根っこを掴んで立たせる。そして不思議な顔をしている彼女の首筋に剣を突きつけた。


「ふははは! 油断したなぁ、相馬っち! 俺はこの隙をずっと狙っていたのだ! どうだぁ、これでは攻撃できまいっ!! 動くとこの女の命はないぞ、ギャハハハ!!」


 俺はゲラゲラと高笑いしてやる。相馬っちは「くっ、外道めっ、卑怯な……!」と苦虫を噛み潰したような表情になった。人質のはずの未来も意図を理解したらしく俺と一緒になって高笑いを始める。


「ふははは! まぁくんに攻撃できないでしょ! 動いたらわたしの命がないんだからねっ! すぐ死んでやるんだから! もうね一突きどころの話じゃないんだからっ! ショック死だからね! 一歩でも動いたらショック死してやるんだからっ! ふはははっ!」


 一歩動いたらショック死ってどんだけノミの心臓なんだ、お前は……。人質のくせに緊張感の無い奴だなぁ。これは人質の選択を誤ったかもしれない。

 だが即座に俺と未来は後ろから頭を叩かれた。背後から不意打ちとはどんな卑怯な奴かと振り返れば武道の実技講師こと筋肉ゴリラがお怒りの表情で俺たちを見下ろしていた。


「アホがっ! 何をしとるんだ、お前らはっ! 実技の趣旨を理解してるのか、あぁ!?」


 ゴリラがでかい手で俺と未来の頭を掴むと、中央に引き寄せぶつけさせる。ゴッという音ともに視界に火花が散った。


「「いったぁ~~っ!!」」


 俺たちは二人して頭を押さえてしゃがみ込むのだった。




 さてさて、GWはとおの昔に終わり、学生の俺たちは講義の空いた時間や放課後、休日を利用して『ワールドマスター』をプレイするという生活を繰り返していた。

 そして、今日も違わず俺たちは冒険に出るため、放課後になるとCSN同好会の会室に集まった……のだが――


「絶っっっ対、おかしいわよっ!」


 全員が揃うなり一之瀬美耶子はツインテールを振り乱してはっきりと俺たちにそう告げた。『おかしい』と発したその表情は困惑というより怒りに染まっちゃっている。


「…………。……なにが?」と未来が首を傾げる。


「……なにが? じゃないわよっ! クノッソの村を出発したのが五月の五日よ!? 今日はいったい何月何日!?」


「「六月七日」」


 俺と未来はすぐに答えた。


「クノッソからジョルトー城下町まで何日かかる予定だった!?」


「「一週間」」


「で、今日は何月何日!?」


「「六月七日」」


「どうして私たちはまだ城下町についてないのよっ!! 月変わっちゃった、ほらっ!」


 一之瀬さんはカレンダーの五月をめくって六月にしたり、五月に戻したりする。


「ああっ、もうっ! 月変わっちゃってるじゃないのよっ!! っざけんなぁ!!」


 今度はカレンダーをばちんっと机に叩きつけた。おー、見事な発狂っぷりだ。

 口ではキツいことも放つが、なんだかんだでいつもは温厚な親友の豹変っぷりに未来は涙目でガクガクと体を震わせていた。

 実は……と言うほどでもないが俺たちはまだジョルトーの城下町に到着してなかったりするんだよね。あれから一ヶ月以上も経ってるっていうのにね!


「にひひ、まあ、かなり道草くっちゃってるしねぇ。セイギくんがやたらとおいしいクエストを見つけてくるってのもあるけどねん」


 せっかくの旅路を急ぐのはもったいないという理由で、俺たちは行く先々で遊びまわったり、観光したり、お買い物したり、遊びまわったりしていたのだ。


「今日中に絶っっ対! ジョルトー城下町に入るわよっ!? いいわねっ!?」


 鬼気迫っちゃってる美耶ちんの言葉に俺たちはコクコクと首肯した。



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