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『ワールドマスター』/サイバーソーシャルネットゲーム  作者: 著者不明
ERROR6 『魔王のジャスティスプログラム』
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第二五話 『真の正義』

「貴様は……ナーガ同様に俺を倒すと言っていたが……」


 後ろから声が降ってきた。

 突き刺すような冷徹な声だった。


「いや、まさか……そんなことはないだろうが……もしかして、〈ナーガ〉に勝ったとでも思っているのか?」


「な、何を言っているのです……! 〈ナーガ〉さんはもう私が倒しました……! 私が勝ったんです……!」


「いいや、それは違うな。見るだけじゃなくお前に触れるとよく分かる。お前と〈ナーガ〉の戦いは――まだ続いている」


「ど、どういう意味です、それは……! 私はたしかに〈ナーガ〉さんを――!」


「物理攻撃も魔導攻撃も無効化する【絶対防御】、だったか? だが、貴様の左手首にあるソレはお前の能力で無効化できていないようだが?」


「左……手首……?」


 そこは〈ナーガ〉が最期に掴んできた箇所だ。

〈ステラ〉がその部分を、ドレスをまくって見てみると、手形そのままに黒ずんでいた。

 不意にその黒ずみは蛇のような形になって蠢き始める。

 その時、〈ステラ〉の左手首に激痛が迸った。


「あがぁっ……!?」


 思わず声をあげ〈ステラ〉は再度、自分の左手首を見やる。そこからは腕に巻きつくような黒いもやのような、煙のような蛇が宿っていた。

 その黒蛇が徐々に、左腕に染み込み、じわじわと浸食していく。

 左手首から、肘に向かってその身を成長させていく。


「物理攻撃も魔導攻撃も無効化。確かにすげぇ力だ。無敵と言っても過言じゃないだろうな。だが、攻撃のダメージそのものは無効化できても、それに付随された状態異常まで消せるかどうか、試したことは無かったようだな」


「――状態……異常……!?」


「〈ナーガ〉はな。破壊魔法が得意なだけじゃない。もう一つ、あいつが得意とするものがある。発動されるまでタイムラグがあるから使えないスキルだと本人は嘆いちゃいたがな」


「タイムラグ……! まさか、これは――!」


「ああ、【邪術】。呪いだ。邪術ってのは起源の一説に蛇術とするものもある。蛇のように対象を絡め取り、ゆっくりと死に至らしめることからそう呼ばれたって話だ。”魔蛇”のあいつに、今のお前にぴったりだろう」


 愕然とした。

 あの状況で、初見で、【オンリースキル】を持つ本人さえ知らなかった弱点を見破られていた、ということだ。

 彼女は瞬時に思考したのだろう。

 物理攻撃も魔導攻撃も無効化する、だが、攻撃に付随する状態異常は残るか否か。

 そして彼女はその賭けに勝った。

 いや、彼女にとってこれは賭けでもなかったのかも知れない。


『これは――無駄なんかじゃないわ……!!』


 最後に彼女はそう言っていた。

 ということは確信していたのだ。

 すべてを跳ね除ける無敵は存在しないと考えて、何らかの弱点――攻略法は必ずあると考えて、状態異常がその答えだと彼女はあの瞬時に確信したのだ。

 ――自分の勝ちではなかった。

 呪いは注がれた魔力量によって、その効果時間と威力が強弱する。

 注がれた魔力が消えるまで苦痛を与え続け、魔力量が多ければ最後には命を落とす。魔力が消えれば、呪いの効果も消える。しかし、無尽蔵にMPを生産していた彼女の【オンリースキル】を考えると、自分が死に至るまでの魔力量を注がれたと考えて間違いはないだろう。

 では、呪いそのものをキャンセル――解呪させるスキルはあるか、否か。

 答えは存在する。だが、これも現実的ではない。受けた呪いを解呪させるには呪いを使用した者と互角、あるいはそれ以上のスキルレベルが必要となるからだ。

”魔蛇”の〈ナーガ〉は七つの最高位魔法を同時に操るような魔導士の完成系とも言える存在だ。

 果たして、あれと同レベルの解呪師が存在するだろうか。心当たりは無い。それほどの力を持つ解呪師ならば二つ名を持っているだろうし、神聖な聖女や巫女としてその力を崇められている可能性が高い。だというのに心当たりが無いということはおそらく、そのレベルの解呪を行える者が存在しない。

 そもそも発動にタイムラグがあり、自分のMPが空になるまで注げば命を奪える可能性があるとはいえ、魔導士がMPを空にするリスクと、効果が徐々にしか進行しないという使い勝手もくそもない邪術スキルを成長させるような物好きは稀である。言わば最初からの死にスキル。であれば、そんなマイナーな状態異常を解呪するスキルを成長させようという者は、その上をいく希少な存在だ。

 結論――この呪いを解くことは不可能である。

 自分は彼女に道連れにされた――これは――相討ち、だ。


「お前には”魔蛇”の〈ナーガ〉がただで殺されるような女に見えたのか? ゆっくり味わえよ。〈ナーガ〉が遺した死へのカウントダウンをな」


 ――死ぬ。私が?


(まだ何も掴めていないのに……? ただ正しいことをしたいだけなのに……! 悪を、許せないだけなのに……!)


「いいえ……まだ……! まだ私はっ……死ねません……!!」


 その時だった。〈ステラ〉の身を包んでいた青白い炎が、右腕、右足の方から徐々に消え失せていき、身体から消えていったその分が黒いオーラを放つ左腕を包み込んでいく。

 黒い炎を包み込み、対消滅するように青の炎が、黒の炎を左腕へと押し込めていく。

 そして、ついに〈ステラ〉はびっしりと体中から汗を出し、荒く息を繰り返しながらも、左腕だけが青い炎に包まれた状態へ沈静化させることに成功する。

 それにはさしものセイギも少し驚いてしまった。

 本来は状態異常に影響を与えないはずの彼女の【オンリースキル】だが、彼女はどうやら死に直面したことで自分の【オンリースキル】を成長――昇華したらしい。


「ほう。無効化こそできてはいないが、【オンリースキル】すべて左腕に注ぎ込み呪いの進行を止めたか。だが、それではお前は常時【オンリースキル】を使用していなければならない。【オンリースキル】を解いた瞬間、お前の身体を蛇が食い荒らすぞ。加えて【絶対防御】を左腕に集中させている分、他は【絶対防御】の効果外になったようだが」


「お忘れになっているようですね……! 私は”盾姫”の二つ名を持っているんです……! 【オンリースキル】がなくとも、悪の攻撃など通用しません……! 私の正義を守る盾には――!!」


「…………正義を、守る、なあ」


 瞬間、〈ステラ〉は自分の頭を掴む右腕を両手で掴み、立ち上がり様に、一本背負いの要領でセイギを前へと投げ飛ばす。

 しかし、セイギは空中でくるりと回転すると、難なく床へ着地した。

 そして予備の大盾と細剣を出現させ構える〈ステラ〉に向かって、セイギは右掌を向け、左手の剣を水平に構える。

 そして息をふぅーっと深く吐く。


「ジョルトー流古剣術――【雅穿】」


 セイギが左手を、その剣の切っ先を前に突き出した刹那。

 迸る光の筋が〈ステラ〉へと向かって伸びていく――!

 が、その光の筋は〈ステラ〉が横に振るった大盾に弾かれていた。

 それを見た〈ステラ〉は自信を取り戻したように活気付く。


「どうですか、私の盾は……! 私には悪の攻撃は通用しないのですッ!」


「今のは本来、こういう技だと見せてやっただけだ。――次が本番だ」


 不意に、セイギはいつも左手に持っていたその剣を上に放り投げる、そしてくるくると目の前で回転する剣を右手で掴みとった。

 そして先ほどとは左右対称にして、左掌をステラに向け、ゴツゴツとした甲冑に覆われた右手に持つ剣を地面と水平に構える。


「何度やったところで同じこと――!」


 大盾で前面を覆う〈ステラ〉を見据え、ぐっとセイギは足を踏み込み――


「ジョルトー流古剣術【雅穿】――プラス――!」


 セイギは地を蹴った。


(プラス――!?)


 その剣を持った右手を大きく、背中へと振り被る。

〈ステラ〉の驚きをよそに、すぐ傍まで肉薄したセイギがその右手を捻って繰り出す。


「――コークスクリュブロー」


 捻じりを加えられた剣の切っ先が盾に触れた瞬間――


 セイギの剣と〈ステラ〉の大盾が、甲高い音を響かせて粉々に砕け散り――


〈ステラ〉の視界に真っ直ぐ伸びてくる陽炎の拳が大きく映った。

 胸にセイギの拳を受け、〈ステラ〉の背中から渦巻いた一筋の閃光が伸びていく。

 その閃光がキラキラと光の粒子を舞い散らせ消え失せると、〈ステラ〉はセイギの拳からずるりと横に身体を傾ける。そして、床埃を舞い上がらせてとさっと床に倒れる。

 その様子を、《正道騎士団》や、《バジリスク》、自分たちのリーダーが倒れたというのに《スクトゥム》のメンバーまでもがただただ茫然と突っ立って見ていた。

 人類最強決戦――その六位。

”盾姫”の〈ステラ〉を――ほとんど本気も見せず――傷一つ追わず倒してしまった青年に、もはや言葉もなくなる。

 セイギは眼を瞑って倒れている〈ステラ〉にかがみ込み、ぺしぺしとその頬を叩く。

 すると、うっすらと彼女は眼を開いた。


「お、生きてたか。お前は〈ナーガ〉の獲物だ。戦闘中に勝手に割って入って倒したら後で俺が文句を言われそうだからな。〈ナーガ〉の呪いで死んでくれなきゃ困る」


 セイギはそれだけ言うと立ち上がり、《バジリスク》や、トラがいる方へ立ち去ろうとする。

 そんなセイギの背中を、〈ステラ〉は血が垂れてくる歯を食い縛って、弱々しい声で呼び止めた。


「……ま、まって……くだ、さい……」


 その言葉にセイギは顔だけで振り返った。


「セイギ、さん……一つ……訊かせて下さい。正義って……なんですか? 正しいことをするって、一体どういうことですか?」


 セイギはその唐突な問いに、眼をぱちくりとさせた。


「私の父は……対テロリスト強襲部隊の……隊員、でした。一〇年前、人を守るために、人を……撃ちました。父が撃たなければ……多くの人が死んでいたんです。父は職務を全うしただけで、正義の行いをした……のにっ……! 撃たれた、人は……特区で有名な技術者だったらしくて……! 悪人なのにっ、たったそれだけの理由で……!」


「――一〇年前の特区……。お前は――」


 ――あの時の隊員の娘なのか、と言いかけてセイギは言葉を呑み込んだ。

 一〇年前の特区、人工知能管理室の爆破。”チルドレン”であるセイギの使命は人工知能管理施設の爆破を遂げることだった。しかし、当時は敵だったが今や義母のシャーリー・K・フランベルク、同じく義父となった黒猪正信、”チルドレン”を捕えようとしていた《ハッカー》新谷欅、そして『カコ』と触れ合い、自分がやっている事に疑問を持った。

 そして、自分が間違っている事に気づき、一人しかいない自分と同じ立場の”チルドレン”を止めようとした。その時、協力してくれた名も知らぬ対テロリスト強襲部隊の隊員がいたのだ。

 切迫した命も危ない状況で、敵であるはずの”チルドレン”である自分の言葉を信じ、爆破を止めようとした人物がいた。

 そして、彼は〈マザー〉を信仰し、人工知能の解放を手助けしようとしていた特区の技術者を撃ち殺した。だがその技術者は〈マザー〉を信仰していたような痕跡を残しておらず、結果的にその隊員は罪も無い優秀で貴重な技術者を殺したとして罰せられた。


「父はっ……強襲部隊を除隊され、牢屋に入れられたッ! それが原因で母とも別離……! 今、父がどうなっているのか、私には知りようもないんです……! 正しいって……何なんですか……!! 正義って、一体……何なんですか……!!」


 セイギは再び、〈ステラ〉の前で両足を折ってかがみ、見降ろす。


「……何言ってんだ、お前」


 その言葉に〈ステラ〉は痛む身体を飛び起こす。


「んなっ!? な、何って……! 私は真面目に話を……!!」


「お前の親父さんはそれが正しい事だと思ったからやったんだろう。つーかな、俺に聞いて意味あんのかよ、それ。お前は周りに流されたいのか? 俺がお前の親父さんは間違っていると言えば、お前は納得すんのかよ」


「でも……! 色んな人の意見を聞かないと最終的な判断のしようが……!」


「噂が事実と捻じ曲がっちまう原理って知ってるか」


 いきなりの問いかけに、〈ステラ〉は眼を瞬かせる。


「噂だけの話じゃないが、話を聞いた奴はそいつが認識しやすいよう主観で噛み砕いてから脳に記憶する。無意識にそいつの経験に照らし合わせて考えたり、心の中で感情をその話に混ぜ込んで呑み込む。そんな改竄された情報がさらに別の人間に伝わり、またも聞いた奴の主観の影響を受ける。だから噂ってのは捻じ曲がっちまう」


「何が……言いたいんですか……」


「他の奴の言うことを取り入れすぎると何が事実なのか逆に分からなくなる場合があるってことだ。今のお前がそうだよ。まあ、ちゃんと自分を持っている奴は話から誰かの主観が混ざった情報を分離して、事実を汲み取ることもできるんだろうが……。そこんとこお前は馬鹿正直っぽいからな……。主張されたら簡単に流されちまうタイプだな。ま、だからこそ人間は偽の情報に踊らされないよう本能的に近い価値観を持った仲間同士でつるもうとする。近い価値観を持った仲間なら情報伝達が正確になりやすい。体感的な話をすれば『話が合う』『ウマが合う』ってところか……。人間ってのは面白いよな。どんなに頑張っても自分の心から引き離して物事を考えられないように出来てる」


「……あなたは……どうして――」


 そんな風に自分が人間でないかのように話をするのか、と問おうとした。

 だが、その言葉をセイギが遮る。


「っと、話が反れたな。お前は『最終的な判断』と言ったが、ようはそれなんだよ。どんなに迷っても結局、最後に判断すんのはお前自身なんだろーが。第一に、『正義』なんて言葉は体のいい隠れ蓑だろ。その環境、時代でころころ変わるもんだからな。目には目を歯には歯を。復讐が法律で正当化される人々だっていたんだ。同様に今じゃまかり通らないことが正義だったケースは幾らでもある。なら、今現在の法は絶対的な正義と言えるか? その法が悪を等しくすべての事柄を裁いていると言えるのか? 冤罪もなくすべてにおいて正しいとお前は断言できるのか?」


「そ、それは……! でも法は必要なもので……! 法がなければ……!」


「法がいらねぇとは言わねぇよ。社会にルールは必要だからな。ただ『ルール』と『正しい』は必ずしも同一じゃ無いって話だ。ま、色んな価値観を持っている人間が共存している中で、お前が求める万人が納得するような『真の正義』なんて理想論もいいところだ。んなもんはハナから存在しねーんだよ。さっきの話と同じで、正義なんてモンはてめぇの価値観しだいってわけだ。逆に言いやあ、全員が全員、それぞれの正義を持っている、とも言える」


 そこで、よっと、声をだしてセイギは立ち上がる。


「だから俺は自分が正しいと思ったことを黙ってやる。他の奴らが何を言おうが関係ない。なぜなら俺が正しいと思うこと――それが俺の正義だからだ」


「自分が正しいと思うことが……自分の……正義……」


「で、訊くが……お前の親父さんは間違ったことをしたとお前は思ってんのか? お前の親父さんが嘘をついていて、ただその技術者を誤って撃ち殺しちまったんだと思ってるのか?」


「父が人を殺した事は法的に有罪が決定しています。だけど――私は父さんが……嘘をついているとは……思えない。私だって父さんが正しかったと……そう思いたいんです! でも父さんは! 最後に罪を認めたんです! 人を撃った自分は裁かれなくちゃいけないって……!」


「ンなもんお前に対する父親としての優しさだろ。どうせお前が親父さんが牢屋に放り込まれることを嫌がってぴーぴー泣き叫びでもしたんだろ。そんな幼いお前を納得させるために、宥めるためにそう言っただけじゃねぇのか。こりゃ俺の憶測だがな、お前の親父さんは今でも正しいことをしたと思ってると、俺は思うぜ」


 もはや〈ステラ〉は何も言い返せなかった。

 ああ、この人は――何にも縛られないのだ。

 どんなものであれ、彼を縛ることはできないのだと〈ステラ〉は感じた。

 それほど彼は常識に捕らわれない自由な発想をしていて、その自分の考えに正直で、猪みたいに真っ直ぐな人なのだ。

 大きい。彼が、とても大きく頼りになる存在に見える。


「まあ、これでお前がどんな答えを出すか知らねーが、少なくとも俺はお前の親父さんに共感できる。共感できるってこたーつまり、俺にとっちゃ親父さんのやった事は正義だと感じてるってことだ。お前の親父さんは俺にとっちゃ正しいことをしたんだよ」


 ぽろり、と〈ステラ〉の瞳から涙が零れ落ちた。


「は? おいおい。なんでそこで泣くんだ……」


 世間に認められなかった父を、母にさえ捨てられた父を、彼は――セイギは認めてくれた。

 誰も父のことを正義だとは思ってくれなかったのに、彼は父を正義だと言ってくれた。

 それがたまらなく嬉しい。

 自分にとって誇りだった父を、私は誇りにしたままで良かった。

 もしかしたら自分はずっと大好きだった父親のことを、誰かに認めて欲しかっただけなのかも知れない。

 そうだ。世間が何を言おうと私は父が正しかったのだと、そう思う。

 つまりそれは――それが私の正義なんだ。


「セイギ……さん……」


「あん?」


「〈ナーガ〉さんの、言った通りでした。あなたは……私に正義を教えてくれた。私は〈ナーガ〉さんに……あなたたちに正義など無いと言ってしまいましたが……間違いでした。あなたは、いえ、あなたたちは私にとっても間違いなく――正義です」


〈ステラ〉は、ゆっくりと、痛みに片目を閉じながら、立ち上がる。


「そして私は――正義を守る盾、そうなりたいんです。だから――」


 胸を押さえ、ずるずると片足を引きづりながら、〈ステラ〉は《スクトゥム》メンバーの元へと歩いて行く。すると、すぐに《スクトゥム》のメンバーたちが彼女へと駆け寄っていった。


「た、”盾姫”様ぁあああっ!!」


「だ、大丈夫ですか、”盾姫”様! あのヤロウっ、よくも”盾姫”様をこんなメに……!!」


 睨みつけてくる《スクトゥム》のメンバーに、セイギは『突っかかってきたのはそっちの姫さんだぞ』と言わんばかりに肩をすくめてみせる。

 そんな行動が更に《スクトゥム》メンバーに油を注いだ。


「あいっつッ! 全然反省してない!」と歯をギリギリ鳴らす男。


「〈ウォルドルフ〉さんっ、セイギさんの事はいいですからっ。……聞いて下さい」


 いつになく真剣な表情に、《スクトゥム》のメンバーはきょとんとなる。

〈ステラ〉はすぅ、と深呼吸し、はっきりと宣言した。


「これより《スクトゥム》は――セイギさんの傘下に降ります」


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