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第8話 エッチな下着

 その日、翔太は陽菜子の夢を見た。


 現実の世界で陽菜子にやられているようなことを夢の中でもやられて、非常にドギマギさせられた。


『真っ赤になった翔太先輩、すっごくかわいいですよ?』


 なんてことを耳元で囁かれたりもした。


 正直に言おう。


 めちゃくちゃしあわせだった。


 目が覚めた瞬間、今もう一回寝たら続きが見られるんじゃないかと、そんなふうに思ったくらいだった。


「俺、陽菜子のこと、好きすぎるだろ」


 顔を両手で覆って、ベッドの上でごろごろ転がる。


「けど、陽菜子には好きな奴がいるんだよなぁ」


 それがまさか自分のことだとは微塵も思わない翔太は、ある決断を下した。


「……よし。これ以上、陽菜子のことを好きになる前に、陽菜子の恋をさっさと成就させよう!」


 夢にまで見ている時点でもうすでに手遅れだったりするような気がしなくもないが、そこは気にしない方向でいきたい所存なのである。




 朝、翔太がいつもより早く家を出ると、そこにはもう陽菜子がいた。


 陽菜子の顔を見られてうれしい。


 いや待て違う。


「早くないか!?」


 いつもより30分は早く出てきたのである。


「翔太先輩がちょっとでも早くわたしに会いたいんじゃないかな~って思いまして♪ 気を利かせてみたんですけど……どうです、先輩? うれしいですかー?」


「ああ、めちゃくちゃうれしい!」


 思わず肯定してしまった翔太だったが、


「なぁっ!?」


 陽菜子が変な声を出すので、それどころではなくなった。


「なぁ?」


「――んでもないに決まってるじゃないですかー?」


 と言って、なぜか顔を盛大に背ける陽菜子である。


 そして小声で何かを呟いた。


「……めちゃくちゃうれしいとか、いきなり言うのはちょっと反則だと思うんですよねー? まあ? うれしくないって言ったら嘘になりますけど」


「陽菜子、そんなちっちゃい声だと何も聞こえないんだけど」


「今日のわたしの下着の色、黒なんですよ?」


「はぁっ!? お、おま、い、いいいいいったい何を言って……!?」


「あ、想像しちゃいました? 翔太先輩ってばえっちですねー?」


「し、してない……! 全然してないぞ……!」


「え、してないんですか……? わたしの下着姿は全然魅力がない……?」


 陽菜子が俯き、肩を振るわせ始める。


 心なしか声も震えているような気がした。


 もしかして泣いてる……?


 え、泣かせちゃったの……!?


 生まれて初めての経験にテンパる翔太は、陽菜子の肩に手を置くと言った。


 いや、叫んだ。


「何言ってるんだよ! 魅力的に決まってるだろ!?」


「でも翔太先輩……全然してないって……」


「そ、それは……」


「ほら、やっぱり! わたしの下着姿は――」


「した! 思いっきりしたから!」


「具体的に詳しく」


「陽菜子、色が白くて綺麗だから、黒の下着がめちゃくちゃ似合うんだろうなあとか――っておい! 陽菜子、泣いてたんじゃないのかよ!?」


「えへ♪」


 小首を傾げられてもかわいいだけであり、すべて許してしまいたくなるだけでもあった。


 翔太は思う。


 俺はいったい何を叫んでいたんだ!?


 しかもどんなふうに想像したかとかまで告白させられて……!


「くっ、殺せ!」


 と思わず口にしてしまう翔太に、すすす、と陽菜子が近づいてきて、耳打ちしてくる。


「ちなみにレースたっぷりのすんごいやつですからね? わたしの下着?」


 とんでもないことを囁いたぞこいつ! と衝撃を受ける翔太である。


「陽菜子は俺の純情を弄んで楽しいの!?」


「全然そんなことないですよー?」


 そんな眩しい笑顔で言われても、まったく説得力がない。


「それより、ほら、翔太先輩」


 陽菜子が腕を組んでくる。


「早く学校にいきましょ?」


 雑すぎる誤魔化し方である。


 だが、それでも。


「ああ、そうだな」


 翔太たちは揃って歩き出した。




 学校へ向かう、その道中で。


 翔太が何度か咳払いをすると、


「翔太先輩、風邪ですか? なら今日は学校を休んだ方が……」


 陽菜子が翔太のことを心配してくれる。


 本気でそう思っていることは、その表情を見ればわかった。


「いや、違う。そうじゃなくて――あの、さ。陽菜子の、す」


「す?」


「す、好きな人のことを教えて欲しいんだ」


「別にいいですけど……でも、どうしてですか?」


「陽菜子のさ、恋の成就を手伝いたくって」


「それならもう充分してもらってますよ?」


「それ以外でだよ。俺のクラスのやつなんだろ? なら、そいつの好きなものとか調べられるだろうし。休日、どこに行くかとかわかれば」


「偶然を装って会うことができますよね」


「ああ、そうだ。だから教えてくれ」


「そんなに知りたいですか、わたしの好きな人のこと」


 その人のことを考えているのだろう、陽菜子の顔に笑みが浮かぶ。


 陽菜子には翔太のクラスに好きな人がいて、そいつのことを今思ってうれしそうにしているのかと思ったら――胸の奥が締め付けられるように痛くなった。


 果たして陽菜子の好きな相手とは、いったい誰なのだろうか。


 サッカー部のエースだろうか。


 それとも野球部のキャプテン?


 あるいは生徒会に所属している、成績上位者という可能性も……。


 その誰もがみんなイケメンであり、しかも性格までもよくて、翔太に勝てる要素は何もない。


「ああ、知りたい! 陽菜子が誰のことを好きなのか、教えてくれ!」


「しょうがないですねー。翔太先輩がそこまで言うなら」


「教えてくれるのか!?」


「いいえ? 教えませんよ?」


「何でだよ!? 今、完全に教えてくれる流れだったよな!?」


「翔太先輩は余計なことを考えないで、わたしの恋が成就するための実験台になることだけに集中してればいいんです」


 もう本当に隠さなくなったなと改めて思った翔太である。


「そ、それはそれでがんばるけども……! いいだろ、教えてくれても……!」


「ちょ、やめてください翔太先輩! 通学路で男子高校生に土下座されるわたしの身にもなって欲しいんですけど」


「してねえよ!? 俺、そんなことしてないから!」


 とんだ風評被害である。


「しょうがないですねー。じゃあ、ちょっとだけ見せてあげますね? わたしのえっちな下着」


「話が戻ってるし……!!」


「見たくないんですかー?」


「……み、見たくない!」


「今、答えるまでに間がありましたねー」


 ジト目ではなく、なぜかうれしそうに言う陽菜子に、翔太は「そ、それはその……!?」とあたふたしていて気づけない。


 なので、


「……翔太先輩、わたしのこと意識しまくりですね。えへへ、いい感じです」


 陽菜子がそんなことを呟いていることも、もちろん気づけないのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。もし少しでも『面白い』『続きが気になる』と思っていただけたら、ブクマと、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると執筆の励みになります!

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