第82話 白砂の迷宮第25層/蠢森林②
そうして、俺たちは大穴の階層を駆け落ちていった。
「――ぃやああああああ!?」
『――――!!!!』
相変わらず響くカトルと虫の大合唱を空中に響かせながら、短時間の命がけの落下を続けていく。
迎撃をしてくる虫たちもどんどんと強力になってきており、俺らに攻撃が当たることが増えてきた。狙いも正確になり、弾速が上がっているのだろう。
大半は俺の障壁と鉄塊で防げているが、それを超えて損傷を与えてくる奴らもいる。
特に巨大な巣を作ってそこから無数の兵隊が酸を放ってくる軍蟻には手を焼いた。
軍蟻の巣は高く長大。
そしてやたらと意志疎通が早く、上層の連中が俺たちを察知すると、下層の砲兵たちが俺たちを正確に捉えて酸の弾幕を放射してくるのだ。
ヘドロの様な黒緑色の粘液は鎧を溶かし、煙を上げている。
こっちは高速で落ちてるってのに、凄まじい粘着性で剥がれ落ちないのだ。
新装備の肌着で身体は無事だったが……これがなかったらと思うと恐ろしい。
更に、俺らの落下速度に追いついてくる奴まで現れ始めた。
そいつらは蟻などの狙撃してくる連中と違って、通り過ぎれば終わりじゃない。
呑連虫みたいな大型なら的がデカくていいんだが、狙撃みたいな高速で飛来して、大穴を開けようとしてくる貫蜂なんかは機動力が高く攻撃も簡単には当たらない。
滑空装備は小回りが利きにくいのが不便だ。
その場合は俺が蔦で捕まえて短剣で仕留めるか、鉄塊が無理やり掴み取って頭を砕くか。
魔法で迎撃できたら楽なんだが――。
「――ひぃいいいいい!?」
……カトルは今回、あんまり使い物にならないからな……。あとアンジェリカ嬢は気合でぶった切っていた。
そんな4回の落下を繰り返し、辿り着いた25層。
「やっと、着いた……」
視界には相変わらずの深い森が広がっている。
ちなみに、穴に落ちた直後は次の階層の天辺にいる。
下に落ちたら上に着く。
それが正しいのか、おかしいのか……もうわけがわからない。
「ひぃ……ひぃ……」
カトルは膝から崩れ落ちるとよくわからない呼吸を繰り返している。
その顔色は青白い。落下時間は全部合わせて5分程度だが、耐性のない人間からすれば凄まじい恐怖体験だっただろう。
……あれは、もう駄目そうだ。
「今日はここまでだな」
かく言う俺も、あまり気分がいいとはいえない。
視界はくらくらと揺らいでいるし、気付けば身体が斜めに倒れそうになっている。
平衡感覚がやられているらしい。
装備も風圧と酸やらの攻撃でガタガタ。
これで主に挑むのは自殺行為だろう。
「元からその予定よ? ただ、まだ少しだけ進む必要があるわね。十分休憩をとってから行きましょう」
「……というと?」
「明日の下準備よ。――丁度いい木を見つけておかないとね?」
そうして、その日は少しの探索と露払いだけして帰ることにした。
屋敷に帰ったカトルの機嫌は、ミンナにお願いして夕食を豪華にしてもらうことで何とか保つことに成功したのだった。
そして翌朝。
俺たちは25層の攻略に挑みに向かった。
「これで最後。これで最後……」
「……この子は大丈夫かしら?」
「逃げずに来たから、それだけで十分だろ」
屋敷を出る頃からぶつぶつと同じことを繰り返している。
そういえばこいつ、1層の時も泣き叫んでたよな。高いとこ、駄目なのか……。
「なあ、カトル」
昇降機の中で既に青い顔で震え始めたカトルの肩に手を置く。
「今日で終わりだ。あともう少しだけ頑張れ」
「……うぅ……頑張る……」
「その意気だ。それに、今日は落ちる時間は今までの半分くらいだ。そう考えたら、気楽だろ?」
「半分……? 半分で良いの?」
「ああ。それに作戦を思い出せ。今日は昨日みたいな滑空はしないし、俺も一緒だ」
「……それなら、大丈夫かも……」
顔を上げたカトルが、自分の頬を叩く。
「……うん! 私、頑張る!」
やる気を出したカトルを皆で微笑ましく見守ってから、アンジェリカ嬢が拍手を鳴らした。
「さて、今日は主攻略よ。手順は頭に入ってるわね?」
「ああ。……空中戦ってのは厄介だよな」
当然ながら、この25層には主がいる。
そして他の階層と同じように、この先に行くには主を倒さなければならない。
つまり、今まで通りにただ落ちても意味がないのだ。
もしそのまま落ちれば閉じた穴に叩きつけられて、即死……。この階層だけは、むやみやたらに落ちるわけにはいかない。
そしてそれはここの主についても同様らしい。
25層の主は、巨大な大蜘蛛――搦羅蜘蛛。
奴はこの広大な穴に糸を張って巣をつくり、落ちてくる虫や探索者――獲物を待ち構えているのだ。
横にも縦にも広く巨大な糸の要塞。当然粘着力も耐久性も抜群。
絡めとられたら最後、主に食われて終いだ。
例え無事に着地できたとしても、細い――といっても迷宮基準で立てるくらいの太さはあるが、糸の足場は不安定で、奴は縦横無尽に動き回る。
奴は通常の脚に加えて4本の天脚という多腕を持つから、その動きは通常の蜘蛛よりもずっと素早い。
しかも糸の弾性を利用して砲弾みてえに突っ込んでくるのだ。
これまでの主と違って、個の力よりも環境によって圧倒的優位をつけてくる、厄介な主である。……この階層が嫌われてるの、大体こいつのせいだろ。
――ただ、まあ。
それは普通に攻略をした場合である。
「さっさと終わらせるわよ。今日もこの後、やることがあるんだからね」
残念ながら、俺たちは急いでいるのだ。
だから厄介なだけの主は、さっさと退場してもらわなければならない。
***
蟷螂たちを蹴散らしながら、昨日のうちに目印をつけていた場所へとたどり着く。
そこは傾斜が始まり、木がほぼ真横へと伸び始めている下がり始めの区画。
その中でも太く巨大な木を選んだ。
「どう、ファム」
「……問題はない。いつでもいけるぞ」
先に様子見をしていた鉄塊が、下を見つめながらそう言った。
見た目は今までと変わらない大穴。
流石にここからでは主の巣は見えない様だ。
本来なら風魔法で斜面を駆け降りていくパーティーも、この階層だけは木々を飛び降りる安全進行をとることが殆ど。
何故ならばどこに主の巣があるかは全く予想ができず、気付かずに減速できないまま巣に突っ込めば、あっさりと捕らえられてお終いだからだ。
そしてゆっくりと木の階段を下っていくと、大量に潜む虫たちとの連戦になる。
そちらのルートを選べば、虫に削られまくった体力で空中に巣を作る主と戦う羽目になるって寸法だ。
どちらを選んでも厄介な主なのだが――。
「よし、じゃあ降りましょうか」
残念ながら、我らがリーダーはその程度で止まるお方ではなかった。
とはいえ、無策で降りるなんて無謀なこともしない。
きちんと殺せるように、俺たちは入念な準備を済ませてきた。
「ゼナウとファムは取りつけ。カトルは魔法の準備ね」
「おう」
「うん!」
アンジェリカ嬢の号令の下、その準備を実行に移す。
俺と鉄塊は協力して、巨木に帯を取り付けていく。
蔦撃ちを駆使しつつ伸びた木の下に回って帯を巻きつけ、巻き取り機で締めて固定。
それを計2カ所取り付け、仕上げにカトルの氷で補強する。
下側に弧を描くそれは、まるで木と氷の小舟の様な姿になった。……小さくはないが。
船ができたら更にその外側から別の帯を巻き付ける。
中心に大きな箱を取り付けたそれが、丁度船の下側に来るように設置すれば……準備は完了だ。
「――皆、終わったわね? じゃあ繋ぎましょうか。ファム、取り付けをお願い」
「ああ」
両腕を上げたアンジェリカ嬢の腰に、鉄塊は専用の腰帯を取り付けた。
それは鉄塊の背負った滑空装備、それも昨日よりも大型のものに接続されている。
今回は2人1組となって落ちていくのだ。といっても、これは緊急事態用の念のためだが。
俺はカトルと組む。俺が滑空装備持ちの後ろ側だ。
「カトル、こっち来い」
「あ、う、うん……」
そのまま腰帯を取り付け、それをそのまま足元の帯――最初に巻き付けた方に取りつける。
これで俺らはこの木船に固定されたことになる。
――これから落ちるのに、なんで木に固定するのか?
その答えは単純。
俺たちは主攻略のため、この木ごと落ちることにしたからである。
「――さあ、行くわよ。……起爆!」
アンジェリカ嬢の叫びと同時。
木の根元に埋め込んだ爆薬が炸裂。
凄まじい爆発を起こして、木を根元から叩き折った。
がくりと、視界がゆっくりと傾いていく。
「カトル、氷!」
「うん!」
そしてカトルの氷が一気に展開。
それは折れた木が触れる地面から先、お誂え向きに真っすぐ伸びる木までの道を氷で舗装し、巨大な滑り台を作り上げた。
「全員、帯に掴まれ――!!」
当然の如く重い木は速度を上げて滑り始め――空中へと勢いよく飛び出した。
「――――っ!!」
声にならないカトルの悲鳴を聞きながら、俺は左目の潜航を開始。
ただでさえ暗い視界が真っ暗に染まり、足元の木と氷の先を見つめる。
そしてそのまま、前にいるカトルの腹を左手で抱いた。
「――ふぇっ!?」
「カトル、落ち着け! お前が頼りだ。魔法の準備!」
「……!! うん……!!」
俺の腕をぐっと掴むと、カトルは魔力を貯め始める。
途端に溢れ出す冷気に身体が震えるが、後十数秒の辛抱だ。
引き続き虫たちの砲撃が続くが、無視! ってかこの状態じゃ何もできない!
氷船は分厚く作っているから虫たちの砲撃じゃびくとも――あっ、火はまずい! 耐えて!
凄まじい速度と圧力、そして何よりぶっ潰れる恐怖に耐えながら、長い長い十数秒が経ち、そして――。
「――見えた!」
視界の奥に、空中を走る無数の光の線が現れ始めた。
主の張る粘着糸の巣は、通常の蜘蛛と違って超高層の立体構造になっている。
穴と同じようにすり鉢状に設置され、落ちてきた獲物は特別分厚く編まれた中央で確実に絡めとる。
それはまるで食虫植物の腹に飛び込むのと同じだ。
愚かにも空から降ってくる、大型の獲物。
主からすれば待ち望んだ愚かな相手だろう。
だが、今の俺たちには関係ない。
「カトル、行くぞ!」
「うん……!!」
叫ぶと同時、俺は帯に仕込まれていた絡繰りを発動させる。
それは木に巻かれた帯の下側で作動し、破裂。その中身をぶちまけた。
ぶわりと空中に広がる袋の中身は、木屑と綿のような素材を混ぜた、ゴミ爆弾とでもいうもの。
本来は何の役にも立たないそれらは、高い魔力伝導力で、カトルの氷の魔力を一気に行き渡らせる。
「――えいっ!!」
気合の声でカトルが木の幹を両手で叩いた、その直後。
広がる屑袋を土台に、巨大な氷塊が作られた。
大蜘蛛が獲物を搦めて捕らえるんなら、足場ごと突っ込んでしまえばいい。
それが俺とアンジェリカ嬢が考えた、この階層の主攻略方法だった。
氷塊の大きさは直径5mを超し、途端に強烈な風圧が襲い来る。
それと同時に滑空装備を展開。風にあおられ吹き飛びそうになるのを、必死で堪える。
その間も全力で目を見開き、その時を待つ。
そして遂にその時が来る。
氷の奥、糸の密度が急激に上がり始めた。
ここが奴の巣の中心だろう。そこへ、突っ込む――!!
「着陸するぞ! 耐えろ!」
「「「――――!!」」」
叫び、右腕に帯を巻きつけ、左腕でカトルを掻き抱いて身体をぐっと縮める。
直後、全身に凄まじい衝撃が襲いかかった。
「――――っ!?」
ぐわん、と大きく糸がたわんで、落下の衝撃を吸収する。
流石は主の粘着糸。捕らえた獲物は逃がさないようで、千切れることなく氷床を受け止めきった。
そのまま糸の塊は反動で上へと跳ね上がる。
俺らはその跳ね上がった木船と衝突し、更に真上へと吹き飛ばされた。
命綱である帯を巻き付けた俺の右腕に一気に負荷がかかり――鈍い衝撃と、骨が砕く激痛が響く。
……痛ってぇ!!
右腕はやられたが、木船改め氷床は無事
滑空装備で旋回しながら、氷の床と化した樹の上に降り立つ。
奴の、そして俺らの狙い通りに、氷塊を使った強襲着陸作戦は見事成功したのだった。
「――ゼナウ!」
「無事だ! 俺は腕を治療する。援護頼む!」
俺は無用になった帯を短剣で切り離し、即座に治療を開始する。
回復薬をぶっかけている間に、カトルや鉄塊たちも帯と滑空装備を外し、氷床に立って周囲の警戒を行う。
「カトルは可能な限り氷の強化をして広げて。今後も暇なときは続けること」
「うん。これが壊れたら駄目だもんね」
カトルの全身から冷気が迸り、氷塊を糸ごと呑み込んで広げていく。
既に10m近い大きさになりつつあり、大量の糸に絡まったおかげで着陸の衝撃の揺れもようやく収まっていた。
「……静かだな。ゼナウ、見えるか?」
「……いや、見えねえな」
それでも周囲はやけに静かだった。
砲撃していた筈の虫たちも壁の森の中に光って見えるが、大人しく見守っている。
そして肝心の蜘蛛の姿は見えない。
一体どこに――。
「――――っ!!」
瞬間、視界の端に変化が起きた。
それは斜め上空。
張り巡らされた糸が大きくたわんだのだ。
「――来るぞ! 上空!」
俺が指さし叫んだ直後。
向けた視界には、こちらへと突っ込んでくる巨大な光があった。
俺は反応が遅れていたカトルを掴んで、光の進行方向の真横へと飛び込んだ。
『――――!!』
飛び込んで回避した俺たちの間を通り抜け、巨体が氷の上を滑っていく。
鋭く尖った脚が氷をひっかき、嫌な音が鳴り響いた。
「わっ……!?」
「とと……」
ぐわんぐわんと足元が揺れ、全員が姿勢を崩す。
カトルがすぐさま補強して砕かれた氷床は再生したが、氷と屑の煙が視界を覆っていた。
「なに今の!? 飛び込んできた!?」
「ああ。奴は上下に生えた脚で糸を操って、砲弾みてえに突っ込んでくるんだ。空を飛んでいたり、俺らみたいに糸に捕まらなかった奴は、力づくで狩りに来るんだよ」
蜘蛛は巣によって獲物を狩る生態を持つが、この主はそんな待ちだけの生温い相手ではない。
12本の脚と強靭な糸の舞台を駆使して、死角から突っ込んでくる生粋の狩人なのだ。
『――――』
赤黒い殻は強固で、蠢く外顎には毒が滴る。
鋭く伸びた脚は鋭利で、当たり所が悪ければ串刺しされてお終いだ。
蜘蛛独自の身体の上面は花の蕾みたいな棘が湾曲して伸びており、そこから4本、天に向かって伸びる天脚が生えている。
それは他の普通の脚の倍近い長さがあり、追加の脚としても、腕としても器用に操る。
天脚は人のような指を持ち、それで糸を掴んだり、時に探索者たちの武器を奪って扱ったりもするそうだ。
長期間生き残るような凶悪な個体になると巣の至る所に狩ったり落としたりした探索者の武器がずらりと並び、それで攻撃したりもするらしい。
今回は違う。今までの経験なら全然ありえたので、一安心だ。
「思ってたより、小さいね」
カトルが呟いた通り。
搦羅蜘蛛は主としては小柄で、体長は長い脚を含めて3m程度。
俺らが戦った骨染獣より余程小さい。
「その分速くて毒持ちよ。気をつけなさい」
『――――!!』
甲高い鳴き声を上げて、蜘蛛は毒弾を乱射した。
奴のあれは神経毒。喰らえば即座に行動不能になる。
全員が回避している間に、大蜘蛛はそそくさと逃げていく。
狡猾な狩人である奴は決して直接戦おうとはしない。
近づいては毒弾を乱射し、離れては跳躍で襲い掛かってくる。
そんな、厄介な主のはずなのだが――。
「残念ながら、それが効くのは足場が不安定な場合なのよね」
本来は穴の暗闇と無数に張られた糸に紛れて消えていけるのだろうが、俺の目なら1度見つけてさえしまえば追跡は容易。
自分の居場所がバレているとも知らずに呑気にこちらへ向けて糸を引き絞る主の方角を俺が指さし、アンジェリカ嬢がそちらへと歩み出でる。
「カトル、固定お願い」
「あ、うん」
彼女の足場をカトルが氷で作り出し、滑らないように囲って固定する。
そのすぐ横に鉄塊が盾を構えて待機する中、アンジェリカ嬢が斧を真後ろへと振って、力を貯めた。
そこへ、愚かにも搦羅蜘蛛が飛び込んできて――。
「――ふん!!」
「――はぁ!!」
串刺しせんとする脚を鉄塊が受け止め、それと同時。
アンジェリカ嬢の全力の振り下ろしが、その頭部へと叩き込まれた。
『――――』
それは確実に蜘蛛の頭部を半ばまで叩き潰し。
断末魔すら残すことなく、大蜘蛛の主はたった1撃で絶命するのだった。
「――悪いけど、今は急いでるの。あなたの狩りに付き合ってる暇は、ないのよ」
崩れ落ちる主の個体に素早く俺と鉄塊が駆け寄って、討伐証明となる部位を剥ぎ取る。
丁度良く頭が潰れたので、その破壊面から掘っていけばすぐに回収はできた。
アンジェリカ嬢は斧を担いで足場の端まで歩いていき、そのまま下を覗き込みながら、ふむと考え込む。
「……まだそれなりに高さがあるわね。3人とも、もう一度落ちましょうか」
「……え?」
「仕方ないか。ほらカトル、滑空装備をつけるぞ」
「え? え?」
「急ぐぞ、主がいなくなったから、虫たちが主を喰いにやって来る」
今回は想定よりも高い位置に主がいたので、このまま穴に飛び降りる訳にもいかない。
主の糸は斬りにくく耐火性も耐氷性も抜群。だから斬るのは諦めるしかない。
途中までは近くの糸に飛び降りていって、そこから穴へと飛び降りればいい。
困惑するカトルを再び固定して、同じように準備を終えた鉄塊たちと頷きあう。
「だって、今回は半分って……」
「一応半分だよ、落下時間は」
「だ、騙したのね……!!」
「よく考えろカトル。この階層だけ穴の深さが半分とか、あるわけないだろ」
「……それは、そうだけどぉ……」
昨日みたいにずっと滑空しての移動でもない。
嘘は言ってないよ、嘘は。
涙目のカトルに、申し訳ないが、告げる。
「……悪いな。後半分だ。我慢してくれ」
「……いやああああああ!!」
こうして、俺たちは最速での25層踏破を果たすのだった。




