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第53話 クランづくり?②




 ルイ先輩に連れられ向かった先は、迷宮区画内に位置するとある建物。


 流石にスイレンたち調薬クラン程隔離――離れてはいなかったが、歩くには遠く、馬車を使うには微妙な距離を進んでようやくたどり着いた。


 見えてきたのは装飾の欠片もない、石造りの真四角な建物。

 その周囲は更に石の塀で囲まれており、近づくにつれ、僅かな揺れと漏れ出る重低音が響いてくる。

 随分と騒がしい場所らしい。

 片耳に手を当てながら、2階建てはありそうなその建物を見上げる。


「……ここですか?」

「ああ、そうだ。先輩方――『赤鎚』の工房だよ」

「工房?」


 確かによく見りゃ、ニーナ女史の工房に似た雰囲気を感じる。

 外観よりも耐久性とか防音性を重視した箱。

 その『赤鎚』って連中も、探索者以外の仕事があるのだろう。


「彼らは職人でね。支部からの依頼で色んな装置を作るんだ。稀にだけど昇降機の整備なんかもしてるよ」

「へえ……」

「僕の剣もあの人たちの作品なんだ。優秀な人たちだよ」


 それだけ聞けば引く手数多で大人気な技師様。人集めが最難関である20層で停滞するとはとてもじゃないが思えないが……。


「そんな人がなんで停滞してるんだ? 人集めなんて簡単だろ」

「……まあ、会えば分かるよ」


 そう言って視線を逸らしやがった。

 分かっちゃいたが、やはり一筋縄ではいかない相手らしい。


 俺が何かを言う前に先輩は扉を開けた。

 途端に、遮られていた大音量がその隙間から飛び込んできた。


「……うるさっ!」

 

 思わず両耳を押さえてうずくまる。

 なんだこの騒音! 耳がいてぇ……。


「ほら行くぞ! ついてこい!」


 半ば叫びながら入っていった先輩に続いて中へと足を踏み入れると、そこはだだっ広い空間になっていた。


 柱はなく、代わりに大型のよくわからん構造物が大量に置かれている。

 何かの装置らしいそれらが壁となって仕切られており、隙間を縫って進みながら、ルイ先輩が声を張り上げた。


「――ウルファさん! いますか! 僕です、ルイです!」

「――ああ!? 誰だ!?」


 それでも掻き消えそうな声に反応して、装置の影から出てきた顔が1つ。

 黒く煤けた顔は分厚く真ん丸のゴーグルに覆われており、年齢も性別も全く分からない。

 ただ唯一判別できる口元が、大きく開かれた。


「おお、ルイじゃねーか! ちょっと待ってな!」


 顔が引っ込んだかと思ったら、直ぐに巨大な騒音は止まった。

 途端に静寂が戻ったんだが、耳鳴りがしばらく止まない。

 何ならちょっと足下も揺れてる気もする。


 こんな場所で仕事をするなんて、俺なら半日でも気がおかしくなりそうだ。

 積まれた木箱に手を付けて落ち着いていると、再び顔が出てきた。

 

「お待たせ! ほれ、こっち来な。そっちのお客さんも!」

「ありがとうございます。行くぞ」

「あ、ああ……」


 ぼんやりと頷きを返してついていくと、装置などで四角く仕切られた空間に出る。

 金属製の大型机が置かれた作業場のような場所になっており、そこに先ほどの人物が立っていた。


「悪ぃな、作業してると来客にも気づかなくなっちまう」

「いいんですよ、こっちが突然来たんですから」


 布の切れ端で煤を拭っているその姿は、下は緩めの下穿き、上はシャツの上から分厚い前掛け(エプロン)を身に纏っている。

 元からなのか煤けてそうなったのかは分からないが、黒く長い髪を纏めたその男は、金属の椅子に腰かけこちらへと手招きしている。


「今日はあっちいなあ。ほら、突っ立ってねえで空いてるとこ座った座った」

「……失礼します」

「それで? わざわざどうしたってのさ。お前が来るなんて。整備は終わったばっかだろ?」


 にかっと笑みを浮かべて、その男――ウルファは問いかける。


 いきなりやってきた後輩に嫌な顔1つせず、笑顔も未だ煤けているせいでどこか愛嬌がある。

 からっとした口調も相まって、人好きのする男である。

 

 実際、こうして礼節にうるさそうなルイ先輩がいきなり押しかけてるんだ。

 色んな人間から慕われていそうだ。


 だからこそ、20層で停滞しているとは思えん。

 実力不足なのか? いや、ならルイ先輩も紹介しないだろうし……。

 なんてことをうんうんと考えてたら、ルイ先輩が早速本題を切り出した。



「こいつが20層攻略の仲間集めをしてるんですよ。それで、ウルファさんたちはどうかと思いまして。……ウルファさんたち、20層突破を目指してましたよね」

「なにぃ?」


 ギロリ、とウルファの鋭い目が動き、先輩を、次いで俺を睨んだ。


「あんたがか? ……見ない顔だが、本気で言ってんのか」

「……ああ。本気だ」


 頷きを返して、俺らの目的を話すことにする。

 当然身分偽装とか第三王子の揉め事なんかは教えずに。

 ……アンジェリカ嬢の目的から考えりゃ、事情も全部知った上で協力できる仲間を探してこいってことなんだろうが、流石に初対面で全て話すわけにもいくまい。


 まずは主撃破のための、一時的な仲間でいいだろう。

 当座の目的は、あくまでとにかく早く、深くへ潜ることなのだから。


「――というわけだ」

「……なるほどな。あんたが噂の民間から採用された探索者なのか。その話ならそこのルイから聞いたよ。確かに眼帯の兄ちゃんだ」


 ぶんぶんと小刻みに頷きながら、幾分か柔らかくなった視線が俺を見据える。

 

「お前さんたち、強いんだってな。確か、パーティーメンバーはシュンメル家の……ああ?」

「……?」


 なんだ? 今、不自然に言葉が乱れたな。

 かと思ったらいきなり視線が泳ぎ始めて、あっという間に汗を流し始めた。

 暑さのせいだよな? そうだよな?


「あ? つまり、シュンメル家の人間が20層攻略のメンバーを募集してるってことか? そんで、オレらのとこに来た? そういうことだな?」

「……一応は、そういうことですけど」

「おいおいおいおい、まじか……!!」


 柔らかくなったはずの視線が、どんどん怪しく、粘っこいナニカに変わっていく。

 気づけば奴の腰が椅子から浮いている。

 なんだろ……すげえ嫌な予感がする。


 ひょっとして、なんか恨みでも買ってんのか?

 なら、この状況はかなりまずい。ここは奴の工房で、対する俺は武器を持っていない。


 その上相手は俺より深く潜ってる探索者。

 例え殴り合いでも危険な相手だろう。


 不意に膨れ上がる不穏な気配に、せめて眼帯を外そうと身構えようとしたその時。



 彼はばっと立ち上がると、いきなり俺の前に滑り込んで――跪いた。



「頼む!! オレらを20層攻略に連れてってくれ! 絶対に役に立つからよ!」

「……!?」

「お前さんたちと一緒で、オレたちも20層の主を倒さなきゃならないんだよ、頼む!」


 金属床なのを構わず滑り込んできて、奇麗な土下座を披露している。

 それはもう見事な頭の下げっぷりだった。


 ……どういうことだ?

 てっきりアンジェリカ嬢やシュンメル家との間にわだかまりでもあんのかと思ったが、どうやら違うらしい。


 咄嗟に先輩を見たら苦笑いを浮かべつつも、一切動じていない。

 むしろ『やっぱりこうなっちゃったか』みたいな顔だ。

 分かってたんなら事前に言えこの野郎……!!

 しばらく待ったが微動だにしないので、諦めて声を掛ける。


「えっと……とりあえず、話、聞きますから。まずは、ほら立ってください」 

「お、おう。悪ぃな……」


 何とかウルファを立たせて元の位置へと戻る。

 下手したらあのまま話し続けそうだったからな……。


 戻りながら必死に考える。

 一体何がどうしたらあんな滑り込み土下座をするような事態になるんだ?

 いくらルイ先輩がいるとはいえ初対面だぞ。

 明らかに、形振り構ってられない状況にいるだろ、こいつ。


 早速『残りもの』(ヤバいやつ)の濃密な気配がしているが、ひとまず我慢して話を聞く。



「それで……そこまでして20層を攻略したいなんて、何か事情でも? 21層以降に何かあるんですか?」


 問いかけにウルファは首を横に振った。


「……正確にはちと違う。オレらは20層を突破したいんじゃなくて、20層の主を倒したいんだ。要は、あの主の素材が欲しいのさ」

「素材を、ねえ」


 これまた珍しい理由が出てきた。いや、生産職っぽいから妥当なのか?


「ああ。あいつのどでかい装甲は、オレらの作る()()()にぴったりだからな」

「絡繰り?」


 聞きなれない単語に呟くと、ウルファは膝をぱん、と叩いて頷いた。


「おうよ! オレら『赤鎚』は武器を作ったり探索道具を作ったりもしているが、一番の夢は手前(てめえ)の発明で染獣たちをぶっ倒すことだ」


 どういうことだ? 発明? 絡繰りってのはなんなんだ?

 まさかの返答に困惑する俺を見かねてか、先輩が口を開いた。


「ウルファさん。何か見せてやってもらえます? 最近作ったものとか」

「――よしきた! 任せな!」


 ルイ先輩がそう聞いた途端、彼の目が爛々と輝いた。

 椅子から飛び上がって駆け出すと、大きな何かを抱えながら戻ってきた。

 ……この感じ、知ってるなあ。ニーナ女史といい職人ってのは皆こうなのか?


「見ろ! オレたちの新兵器、携帯型回転掘削機――その第三号だ」


 どん、と置かれたそれは箱形に近い持ち手から槍のような構造物が伸びており、その『槍』は螺旋状に溝が入っている。これ、刃か?

 この刃に関しては分からないが、全体の形状自体には見覚えがある。

 

「これ、旋角馬(カバク)の角みたいですね」

「そう! そこから着想を得たんだよ」


 俺の呟きに、ウルファは大げさに指をさした。


「あいつらの角は塞頭牛(ラタンカ)の硬い額すら貫くだろ? なら、あの構造を金属で再現できれば岩山地帯のどでかい岩も貫けると思ったわけよ」

「それで、結果は?」

「勿論大成功だ! これで戦闘も、鉱石掘りも楽々だぜ」


 そう言ってウルファが装置を握ると、角の部分が音を立てて回転を始めた。

 ゆるりと動き出したそれはすぐさま凄まじい速度で回転をし、相応の駆動音を鳴り響かせる。


 さっきの騒音の原因はこれか!?

 咄嗟に耳を塞ぐも、それを貫通した音に貫かれ、視界が揺れる。

 直ぐに装置は止めてくれたが、またしばらく声が遠く聞こえる気がする……。


 まあとにかく、これは人力よりも素早く穴が掘れる絡繰りらしい。

 俺たちには哮喉狐(ココハ)がいるが、そうじゃなければ便利な道具かもしれない。

 ただ……。


「迷宮で使うんですよね。こんな音を立てて平気なんです?」

「いや、平気じゃないな。だからこいつで染獣をぶっ倒してから穴を掘るのよ。普通に掘るよりは断然早いぜ?」

「……なるほど」


 倒せれば結果的に早い、みたいな考えらしい。

 主を倒したくて燻ってるんだから、他の染獣相手なら問題なく倒せるってことか。

 ルイ先輩が推薦するだけあって、戦闘能力も問題はないらしい。


「つまり、絡繰りってのはこういうへん――特殊な装置の事ですか」

「おうよ! ここにあるのはオレらが作った絡繰りばっかだぜ」


 どおりで設備にしては物が多いわけだ。

 この角もどきは携帯型とか言ってたが、実際は大型のものも多いのだろう。

 俺はふと周囲を眺めて、装置の向こうに覗く一際背の高い物を見つける。


「アレもそうなんですか?」

「あ……」

「……?」


 指さしてそう訊ねると、なぜかルイ先輩が反応した。

 振り返ると、僅かに目を開いた先輩と、なぜか押し黙ったウルファがいた。

 ……間違えたか?


「君って男は……」


 なんだよ!? どういうことだよ!?


「アレか。……流石は、シュンメル家のパーティーメンバーってわけだな」

「は……?」

「ウルファさん、あれは流石に……」

「いや、構わねえよ。元より隠し事はするつもりはねえ。ついてこい」


 そう言って案内されたにあったのは、四角で作った巨大な人型のような構造物だった。

 前倣えしたまま固まったようなその姿に、背中や肩から細長い棒が伸びている。


「これは?」

「新人の訓練用にって思って作ってみた自動木人だ。動かすと、腕やあの棒が襲ってきて、それを防ぎながら胴体を殴れば止まる。迷宮の素材を使ってるから、中級でも痛いし、速いぜ?」

「おお……よくわからんが凄そうだ」


 人が操るわけじゃなく勝手に動くってことか? どんな仕組みだよ……。

 訓練用って言ってたが、どこかで使われてるのかね。ウィックたちの施設とかでは見たことはなかったが。


「これは試しに動かすことはできるんですか?」

「……」

「……?」


 軽く聞いただけなんだが……なんか、急に黙ったな。

 視線を露骨に逸らすウルファを見て、ルイ先輩が大きくため息を吐きだす。

 よくわからんが、よくわかった。こいつだな、原因。


「念のため聞きますが、どうして、主の素材が欲しいんです?」

「……金が要るんだよ」


 ぼそりと、ウルファはそう言った。


「はあ?」

「だから、金が要るの! 協会からの借金を返さないとこの工房がなくなっちまうんだよ!」


 思ったより直球の理由が飛んできた。

 つまりシュンメル家に反応したのは、貴族で金持ちの雇い主だったってわけか?

 ……いや、まだわかんねえか。適当な連中を連れて行ってアンジェリカ嬢にぶっ飛ばされるのは御免だ。

 ちゃんと全部聞きださないといけない。


「借金って、何をしたんです?」 


 絶対に聞き逃すわけにはいかないと、肩を掴んで問いかける。

 どうせ、いやほぼ間違いなくろくでもない答えだろうが。

 案の定、虫のような微かな声が聞こえてきた。


「この木人が暴れて、新人を病院送りにしちゃって……あと建物もぶっ壊して……」

「ああ……」

「君たち新人が使っている訓練施設があるだろ。あれの前の建物を半壊させたんだ。その請求がね……」


 どうりで、真新しい建物だったわけだよ。


「それで借金か」

「別に無理やり取り立てているわけじゃないけどね。20層まで潜れる探索者は貴重だから。……返すまではやめられないだろうけど」

「おかげで支部からの仕事は断れなくてな。最近じゃ探索も減ってきて、自分たち用の素材も満足に集められてない。……そこで!」


 がばっとこちらへ振り向くと、目を輝かせて彼は言う。


「あの馬鹿でかい主の素材で最強の絡繰りを作って、そいつで荒稼ぎして借金を全て返済してやるのさ。そうすりゃオレらは自由の身。絡繰りも作りたい放題ってわけよ! ――だから、頼むよ! オレらを仲間に入れてくれ!」


 そう言って、ウルファは再び頭を下げた。

 その姿を見て、思う。


 ……ああ、ちゃんと変人だった……。


 こいつらもスイレンやニーナ女史と同類。目を離したら、絶対に問題が起きるタイプの変人技術者。

 迷宮に関わるのはこんなんしかいないのか?


 てか、ちょっと待て。

 俺はこの人をアンジェリカ嬢の所に連れていくのか?

 笑顔で叩き殺されそうなんだが。


「頼むよお……!!」


 ウルファはまだ頭を下げ続けてる。


 その姿を見てると申し訳なくなってくるが、どうしよう……めっちゃ断りたい。

 だが、他に当てもないんだよなあ。

 ()()以外だと、今度は俺がスイレンに土下座をしに行くしか選択肢がない。

 そしてそれは絶対に御免だ。今度こそ毒を盛られて解体される可能性がある。


 まあ、考えようによってはこの人は借金で協会と揉めている。悪いのは全面的にこの人らしいが、まあ問題は問題だ。

 後は騎士団とのつながり。

 ルイ先輩と仲が良いってことは騎士団派閥の可能性もあるが……。

 ウルファにちょっと待っててくれと伝えて、先輩を連れて離れる。


「あの人、騎士団との関係はどうなんです?」


 こそっと問いかけると、先輩が首を横に振る。


「最初は僕たちと同じ騎士団派だったんだ。ただ行動が色々と、その、奇抜過ぎて自然と疎遠になってね……もう、つながりはないよ」

「そんなことがあるのか?」

「あるんだよ。極稀に。……あ、そうだ。確か君、調薬クランに行ったんだろ? あそこも同じだよ。あれは協会相手だけど」

「ありそうだ……」


 どいつもこいつも、迷宮の技師は碌なのがいねえな!


「……はあ」

 

 ともかく、こいつらの事情は理解した。

 莫大な借金のせいで協会からは常に監視され、仕事をしても殆どが借金の返済に充てられる。

 なら騎士団派閥から仕事をもらえばいいんだろうが、色々やらかしたせいで半ば追放状態と。

 今はルイ先輩みたいな、昔ながらの知り合いが定期的に仕事を振ってくれてるようだが、派閥を離れた以上は大々的には付き合えない……そんなとこか。


 確かにんな状況なら、どちらにも属さないシュンメル家の支援は欲しい。

 そりゃあんな土下座もするか……するか?


 まあいい。

 これなら借金を握れば裏切ることもないだろう。


 しかし……まずいな。

 どんどんアンジェリカ嬢の告げた条件を満たしていく。

 唯一の問題点は紹介したら殺されそうなことくらいだ。


 元の場所に戻りつつも押し黙る俺に、流石にまずいと思ったのか、ルイ先輩が慌てて両手を振っている。


「じ、実力はちゃんとある人たちだから……」

「そうだ! それに、20層の主の討伐にオレらは役に立つぜ?」

「……というと?」

「奴の分厚い装甲を貫くのは至難の業だ。てか、あの主討伐はあの装甲を『どう破るか』が全てと言ってもいい。……そこで、オレらの出番ってわけだ」


 ようやく立ち上がったウルファは、両手を振り上げると盛大に柏手を打った。


「アミカ! イマ! 聞いてただろ、来い!」

「ほいきた」

「はーい」


 叫ぶと同時にウルファは片足を椅子に乗せ、ポーズを決めた。

 そこに突如、天井と床からするりと現れた女性2人――緑髪の厚ぼったい眼鏡をかけたギザ歯の女に、火みたいな橙色の髪の女が両脇に立って、似たようなポーズを決める。


 


「お前さんが新人ってんなら知らんだろう。深層の岩山地帯で岩と金属を掘り続けて2年。誰が呼んだか迷宮採掘師!」


 中心のウルファが吠える。


「俺が掘って」

「ウチが爆破」

「最後に私が精錬まで♪」


 何故か両脇の女性陣が続く。


「なんでも掘って溶かして造る! それがオレら、鉄鋼クラン『赤鎚』だ! オレたちに貫けねえ装甲はねえ!」

「「いぇい!」」

「……」

「どうだ!? 俺たちを雇わねえか!? 後悔はさせねえぜ!」


 ……これ、アンジェリカ嬢に紹介しなきゃならないの?

 今からスイレンの所に土下座しに行こうかと、本気で悩むのだった。

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