第101話 白砂の迷宮第31層/浪砂漠②
砂漠の旅は、順調に進んだ。
照りつけるどころか叩きつけられる陽の光と、前から下からと襲い来る熱気は、カトルの冷気で防いでくれている。
また専用の装備として、遮光性の高い外套を纏っている。
そうでないと直ぐに体力が尽き果ててしまう。
ただでさえ天候の変化などがない迷宮内。丸一日この熱気に耐えなければならない旅では、消耗がとにかく激しい。
それだけなら、駱駝君に載せてある簡易天幕を設置して休むことはできる。
砂漠にはいくつかの岩場が点在しており、そこにはわずかだが水場や緑がある。その間を移動していく旅になる。
だがそう簡単にはいかないのが、迷宮というものだ。
「――止まれ。穴がある」
横幅を開けて先頭を進んでいた俺と鉄塊。
左側を担当していた鉄塊が手を挙げ告げた。
その瞬間に全体が足を止め、会話も止まった。
鉄塊の顔がこちらへと向いたので、彼の下へと近づいて目を凝らす。
「……いるな。薄くだが煙が出ている」
鉄塊が『穴』と告げたものは、凹んだ砂地にできた、拳がギリギリ入る程度の窪みだ。
よく見ないと絶対に判別ができないそれは、左目でよく見るとうすーい光が煙のように漏れ出ている。
明らかに何かがいる。
そしてそれは、この砂漠でも有名な奴。
俺が頷いたのを見て、鉄塊が盾を構えてその穴へと近づいていった。
――この砂漠地帯で最も有名な染獣は、と聞かれればほぼ全員が口に出す染獣がここにはいる。
砂の中に潜み、真下から探索者たちを襲おうとする怪物。
そいつが近づいた際は、必ず地面の砂が蠢く。
「――オオ!」
盾を構えた鉄塊が吠え、その直後に彼の足下が大きく揺れ動いた。
直後、彼の足下の砂が爆ぜ、砂の中から分厚い甲殻に覆われた爪が現れる。
上下の爪によって構成された巨大な親爪は鉄塊の盾に激突し、彼の身体を高く跳ね上げた。
「拘束!」
「うん!」
駆け出した俺の声に合わせて、カトルが氷を放ってその爪を縫い留める。
が、それも一瞬。
そもそも熱く、柔らかに流動する砂の上。
カトルとはいえど、氷による拘束はあまりにも緩くその効果はほんの僅か。
だからその一瞬の間に、俺は奴の殻の隙間に短剣を差し込んだ。
刀身は短いので傷は浅い。だが、短剣には毒が塗布してある。
普段使いの方ではなく、一回りは小さな使い捨ての毒短剣。
いつもなら運ぶ余力がなくて使えないが、補給物資がたっぷりと用意されてる旅団なら気にせず扱える。
『――!!』
軋むような音色を上げながら、穴から爪の本体が現れた。
といっても体の大きさは穴の数十倍。
濁った暗緑色の甲殻に覆われたそれは――あまりにも巨大な蟹のような怪物。
滑らかな殻。
先端が鋭く尖った3対の脚に、眼前に構える1対の巨大な親爪。
その見た目通り、巨大な爪で相手の装甲を打ち砕くか、挟んで折るか断ち切るか。
そんな単調さながら、砂の下にいるという特徴だけで途端に面倒になる厄介な連中。
握砂蟹である。
『――――!!』
爆発するように舞った砂の中、握砂蟹が軋むような咆哮を上げる。
奇妙に反響したその咆哮に合わせて、周囲を砂が舞い始めた。
この階層の染獣は、多くが砂を操る。
分厚い親爪で砂を掘り、地上に出てくれば豊富な砂を操って周囲を覆い隠す。
先端が細い脚は静音で、砂嵐の音に紛れて聞こえなくなる。
視覚も聴覚も紛れさせて襲い来る、厄介な染獣なのだ。
一斉に武器を構える俺たちに対し、上から言葉が降ってきた。
「――任せろ」
着地した鉄塊が、そう一言呟いて巨体へと歩み寄る。
砂嵐にも構わずに、悠々と巨体のいた奥へと消えていった。
26層に挑む前、鉄塊の装備にも大きな更新が入った。
彼が独自に『赤鎚』とニーナ女史に頼み込んで作り上げた代物。
それは、彼が身に纏う鎧。見た目自体はこれまでと変わらない漆黒の全身鎧。
だが、そこには絡繰りの技術がしっかりと組み込まれている。
なんでも木人君のように、鎧自体が動く機構を入れたのだとか。
それによってただでさえ凶悪な身体能力を補強し、更に超人的な動きを可能にしたそうだ。
跳躍力を上げて、仲間を咄嗟に庇えるように。
足が折れても立て、盾を構えられるように。
そして――奴自身の一撃で、染獣を屠れるように。
盾を取り付けた右腕を引き絞り、絡繰りの力と自身の膂力を乗せて解き放つ。
それは凄まじい質量と勢いを持って放たれる、凶悪な砲撃となるだろう。
砂塵の向こうからずん、と揺れが鳴り響き、しばらく。
勢いが弱まり始めた砂の向こうから、漆黒の鎧の鉄塊が現れた。
後ろ手に握砂蟹の爪を掴み、巨体を引きずっている。
その蟹の頭部は大きく砕かれていた。
「済んだぞ」
そんな彼に負傷の気配はない。
近づいて一撃。本当にそれで終わらせたのだろう。
探索と、出会い、そして死闘を経て。
彼もまた成長をしているらしい。
戻ってきた彼を、アンジェリカ嬢が手を叩いて出迎える。
「流石ね、ファム」
「……勝手をした。次は全員でやろう」
「別にいいのに。でも、あの砂は厄介ね。1体ならいいけれど、複数を相手取る時は視界が完全に塞がれそう。何か考えないと」
考え込むアンジェリカ嬢の横を通り、俺は転がる蟹の巨体に近づく。
頭が砕かれ中身が零れつつある蟹の死体は、すぐに砂漠に呑まれて駄目になるだろう。
「こいつの死骸はどうする? 解体するか?」
「ん? ……ああ、今回は討伐証明は不要よ。だから――」
「あ、す、すみません」
捨て置け、と告げる直前に、スイレンが声を上げた。
途端に全員の視線が集まり、びくりと身体を震わせている。
「あ、そ、その染獣の核は水を作れます。即席なので少量ですが……有用かと」
「あら、それはいいわね。じゃあ解体をお願い」
アンジェリカ嬢の言葉に鉄塊が頷いた。
「わかった。クリム、スイレン、来てくれ」
「はい!」
解体を済ませて、次なる印を探して進む。
目的の男までは、恐らく後少しであろう。
***
一方、同じ31層を旅している影が2つ。
全身を隠した巨体・特選級のカスバルである。
慣れたように砂漠を歩く彼の背後には、砂から半身を出した筒状の、ミミズのような染獣の死骸。
その懐から現れた大きな狼を撫で、付着していた口元の血肉を拭う。
「よくやった」
『――ワフ』
身体を震わせながらも手に擦りつけてくるその獣に微かな笑みを浮かべ、死骸に目を向ける。
背負っていた武骨な装備を引き抜き、突き立てる。
それは、柄のない抜き身の刃というべき代物。
斬ることを想定していない分厚い刀身。それがそのまま柄尻まで続き、持ち手の部分だけを削って握れるようにした、全てが分厚い金属塊。
それを軽々と扱って、死骸に突き立てると、ぐいと持ち上げて砂から取り出した。
砂を舞わせながら持ち上がったその死骸を、カスバルは見向きもせずに放り捨てた。
ずん、と揺れるのも構わずに、カスバルは染獣がいなくなってできた砂の穴へと向かっていく。
そこへと狼が駆け込んで咥えたものを渡した。
それは……。
「……ん?」
聞こえてきた音に反応して、カスバルが振り返る。
まだ遠い視界の奥。そこには、こちらへと向かってくる一団があった。
人型が7つと……連れているやけに巨大な何かが気になるが、7つの方の見た目は人間。
この砂漠に来る連中は珍しい。間違いなく例の依頼の奴らだろう。
「もう来たのか? 予定の日付まではまだ先だが……ん?」
首を傾げて呟く彼は、しかし直ぐにその表情を歪めた。
その先頭を突き進む人物から、どうにも恐ろしい気配が漂ってきている。
今襲われた染獣などを遥かに凌ぐそれに思わずカスバルも震え、真横の狼も唸るどころか怯えた鳴き声を上げている。
……どうやら、あの人物は相当怒っているらしい。
「何かあったのか?」
何故かといえば、この男が詳細も決めずに31層に潜り、挙句にまさか来るとも思っていなかったので、碌な目印を残していなかったためである。
この、カスバルという男。
長らく砂漠におり、リュンと狼以外との交流を持たずに数年を過ごしたためか。
自分の行動で相手が抱く感情に関しては、一切無頓着なのであった。
「まあ、いい。ここに来るまでまだしばらくある」
そして、あろうことか対応を止めて自分の作業に専念し始めた。
当然、それすら見られていることは気付かずに。
そのまま砂の中へと向かっていき、しばらく。
「――に、逃げろ!!」
「……ん?」
気付いた時にはそんな声が聞こえていて。
顔を上げたカスバルは、こちらへと飛来する物体があり――。
「……んん?」
それは真っすぐにカスバルへと向かい、着弾するのであった。
***
「……」
「……ふう」
向こうの砂漠で噴煙が立ち昇っている。
染獣が出たわけでも、超常現象が起きているわけでもない。
俺らの少し前に立つアンジェリカ嬢が、おもむろに腰の鞄から何かを取り出して振りかぶり、全力の投擲を行ったのだ。
「ちょっ……アンジェ!? 何してるの!?」
「何って、ご挨拶よ。これだけしてくれたんだもの。こちらもそれなりの挨拶が必要でしょう?」
「挨拶って……死んじゃうでしょ!? なに投げたの!?」
「安心なさい。ただの色玉よ。急所にでも当たらなきゃ死なないわよ。当たらなきゃね?」
しかもご本人はやる気である。
まずい……相当キレていらっしゃる。
確かに依頼人相手にする事じゃないが、だからっていきなり案内人を殺しにかかる奴がどこにいる?
大丈夫だよな、死んでないよな!?
慌てて左目で粉塵の向こうを見つめる。
流石に潜りはしないが、蠢く影が……2つ。
「よし、生きてるぞ」
「ちっ、外したか……」
怖いことをおっしゃっておられる……。
こいつに会話をさせては駄目だ。絶対に。
「あいつとの話は俺がする。いいな?」
「……」
「いいな!?」
「……分かったわよ。任せるわ」
強く詰め寄ったことで、何とか納得してくれた。
良かった、これでいきなり案内人が消滅するなんてことは――。
「ただし、これ以上舐めた真似をしたら……私は私を止める自信がないから」
「よし鉄塊、その時は任せた。お前が身代わりだ」
「……!?」
あの鉄塊も狼狽え始めたが、知らん。
やっと見つけた案内人なんだ。殺されちゃたまらん。
「カトル、行くぞ」
「あ、うん」
念のための護衛を連れて、俺たちは着弾跡……もとい、カスバルの下へと向かった。
2つほどの小さな砂丘を越えた先。真っ赤に染まった砂地の傍に彼らはいた。
「……いきなりなんだ? 色玉が飛んできたようだが……」
見上げる程の巨体は、背丈だけなら鉄塊を超えるだろう。
細くはないが、背丈にしては横幅は少なめに見える巨躯。麻のような材質の外套と面貌、長く伸びた髪で目元しか判別はできないが、その顔はただひたすらに困惑しているようだ。
そして男の右手には、何故か穴掘り道具が握られている。
……あれが武器なのか?
とと、まずは安否確認だ。
「無事か!?」
「あ、ああ……問題はない」
彼にも、傍にいる獣のどちらにも怪我どころか色玉で汚れた跡すらなかった。
急な襲撃にも関わらず完璧に避けてみせた様だ。流石は特選級。
無事でよかった。いや、本当に……。
「今のはお前らが?」
こちらをじろりと見る目に、警戒の色が宿る。
そりゃそうだ。両手を挙げて争う意志がないことを示しながら、頷きを返した。
「……悪いな。うちの頭目がその、とってもお怒りでね」
「怒る? 何故だ? 初対面の筈だが……」
「……」
おっと? 何故怒ってるかは分かっていない? あれだけ試すようなことをしておいて?
これは自覚がないのか、わざとなのか……まあいい。まずは確認からだ。
「こんな形ですまないが、あんたはカスバルで間違いないか?」
「ああ。そういうお前たちは俺に依頼を持ってきた連中だろう?」
「そうだ。ここには、依頼の詳細を相談するために来た」
目的も告げて、敵ではないことを示す。
その依頼者がいきなり攻撃を仕掛けてきたのだから訳が分からない状況だが、なんとか納得してもらうしかないだろう。
だが、返ってきたのは敵意でも許しでもなく、明らかに困惑した表情であった。
「依頼の、詳細? リュン――受付嬢にその辺りは任せた筈だが……」
「……ん?」
なんだ?
なんか、会話に齟齬があるか?
「……リュンさんと決めたのは、契約期間に報酬だ。あんたがどうやって砂漠を案内するかとか、俺たちが用意しなきゃいけない物資とか、探索中の戦闘や役割分担とか、そういった相談が必要だろう?」
「……?」
おいマジか。首を傾げやがったぞこいつ。
まさかこいつ、俺らに残した『受けるが自分は31層にいる。探してくれ』という文言だけで契約が完了しているつもりなのか?
そんな筈はない。俺が言った相談事項は何も決められていないんだぞ。
それが現地合流では、準備のしようがないだろうが……!
「ぜ、ゼナウ? 落ち着いて……?」
「……大丈夫だ」
いかん。俺まで怒るわけにはいかない。
冷静に、冷静にだ。
深呼吸を繰り返してから、再度、慎重に言葉を選びながら口を開く。
こいつに喋る気がないなら、こっちから引き出すしかない。
「あんたは、どうやって砂漠を旅してるんだ?」
「見て分かるだろう。歩いてだ」
「……染獣はどうしてる? あんたとその狼で倒してるのか?」
「当然だろう。他にいる様に見えるか?」
「……」
お、おお……こいつ、マジか……。
愛想というか、こちらと距離を詰めるということを完全に放棄していやがる。
砂漠に籠りすぎて人間関係の全てを忘れたのか?
暴走したスイレンとかとはまた別のヤバい奴である。
どうやら、俺たちは随分と面倒な案内人を引いてしまったらしい。
ルイ先輩、教えてくれたのはありがたいが、今回ばかりは恨むぞ……。
叩きつける熱と頬を擦る熱風と、全身を蝕む疲労感にやられて俯いていると、上からカスバルの声が響いてきた。
「まあ、いい。要は契約開始が早まるということでいいか?」
……全然違う。その前の準備段階だ。
だが、それを言う元気は俺には残っていなかった。
「……もうそれでいいよ」
「? なんで疲れている? ともかく、分かった。少しだけ待っていてくれ」
そう言って、カスバルは俺たちに背を向け、前方にある穴へと歩き出した。
傍にいた狼は一瞬こちらを見つめていたが、彼について行ってしまった。
「……アンジェリカ嬢との会話は、絶対に避けるべきだな」
「そ、そうだね……凄いことになりそう」
背後にいたカトルと頷きあった。
最悪、本当に血を見ることになりそうだ。
ちらと背後を見たら、腕を組んでこちらを睨んでいるのが遠目でも分かる。
戻りたくない……。
「……で、あいつは何をやってるんだ?」
俺たちを放っておいて砂にできた穴に入り込んだカスバル。
仕方なくその後を追って、穴の淵から覗き込むと――。
「……? 砂を掘ってる?」
カスバルは何故か片手に持っていたスコップで、穴の底を更に掘り起こそうとしていた。
あの巨体に、やたら手際のよい動きで、既に彼の半身が埋まるほどの穴が作られている。
「何してんだ、あれ……」
「さあ……」
もう駄目だ。わけがわからん。
俺はさっと穴を滑り落ちてカスバルの傍に近づいて問いかける。
ええと……こいつに答えさせるなら、質問の仕方は……こうだな。
「なあ、それ、なんで穴を掘ってるんだ?」
ざっ、ざっ、と重たい砂が撒かれる音を鳴らしながら、カスバルがこちらをちらと見る。
ほんの少しの逡巡。またわけのわからない答えが来るかと思ったが、彼はすぐに答えてくれた。
「仲間を探してるんだ。前に砂漠で襲われてから、行方が分からない」
「……仲間? なんで、それで穴を掘る? 砂の下にでも連れていかれたのか?」
次の問いには、首を横に振った否定が返ってくる。
「いや。別にそういうわけではない」
「なら、何故?」
「地上は散々探したからな。砂丘も岩場も、いける場所は全て見て回った……だが、あいつはいなかった。なら、後はもう砂の下くらいだろ?」
だからって、穴を掘るか? 地道すぎないか?
しかし、そうか。
失った仲間……それを探して、こいつは砂漠を旅し続けているというのか。
粗い布の外套の下、僅かに見える表情は何の感情も灯っていないように見えた。
それくらい、奴にはもう慣れた作業なのだろう。
「……それは、最近のことなのか?」
「いや、随分と前だ。……そうだな。もう、4年は経ったか」
4年……4年!?
その間、ずっと砂漠だけに潜り続けてるのか?
「でも、4年前ってことは、その人はもう……」
いつの間にかついてきていたカトルの呟きに、カスバルは作業を止めて首を傾げた。
「……あんたら、俺のことは良く知らないみたいだな。あいつから、受付嬢から聞いてないのか?」
俺もカトルも首を横に振る。
知っているのは獣を操ることと、探し物をしているってことくらいだ。
見た目こそ威圧感はあるが、何故こいつが特選級と呼ばれるのかも正直分かっていない。
俺たちの反応を見て、カスバルが小さく息を吐き出した。
「そうか。律義だな」
「……?」
「クルル、おいで」
言葉の意味が分からずに揃って首を傾げている間に、カスバルは穴を掘り終えた。
そこへ近づいてきた彼の狼――クルルが穴へと入り匂いを嗅いだ。
しばらくしてから、悲しそうな鳴き声を上げた。
「……そうか」
それを撫でてから、カスバルがこちらへと向いた。
「すまない、待たせたな」
「痕跡は見つからなかったか?」
「ああ。そう簡単に見つかるとも思わないからな、別に構わない」
諦めている、って訳ではなさそうだ。
こいつにとっては、もうこの行動自体が生活そのものになっているのだろう。
砂漠を放浪し続ける特選級。その正体は、仲間を探し続ける男だったわけだ。
「さて、仕事の話だったな。案内は任せて貰っていい。ただ、時々こうやって穴を掘って調査をしたい。構わないか?」
「ああ……そりゃ、構わないが……」
「それは助かる。改めて、カスバルだ。こっちはクルル。よろしく頼む」
武器ではなくスコップ片手に、特選級の案内人・カスバルはそう告げたのだった。




