連休初日
朝、3人体制でのオープンは正解だった。その後は雑談する間も無かった。東田さんが、お客様を迎え入れるため一礼をしている間にもお客様はやってきた。
「このチョコレートの詰め合わせを1つと…、熨斗は付けられる?」
「はい、可能でございます」
「用途は…?」
「あー…、どうしよう…。友人に子どもが産まれて」
「それでしたら内祝いにされますか?」
「うん、じゃあそれで」
「お名前をお伺いいたします」
名前をメモし、ショーケースを開けてストックから、冷えたチョコレートを取り出した。横を向くとすでに和田さんが会計の準備を進めてくれている。
「お願いします」
和田さんに商品を預け、バックヤードにあるパソコンに向かった。電源を入れて熨斗をプリンターにセットする。Excelファイルを開いて名前を打ち込む。Enterキーを押し、印刷完了をそっと待つ。
その間にもお客様は来ているようで、ドリンクを注文している声が聞こえる。
(早く戻らなきゃ…)
きっとレジは和田さんが対応してくれているはずだがドリンクを作る人が必要だ。東田さんが売り場に戻れればいいが。ソワソワと待つ間に、聞き慣れたヒール音が微かに聞こえた。東田さんだろう。よかった。
熨斗の準備が終わり、バックヤードから出るとすでにレジには列が出来ていた。学生や家族連れが多い。さすがは連休初日だ。
(早くドリンクにも入らないと)
熨斗を付け紙袋も1枚多く入れて、お客様の元へ向かう。
「お客様、お待たせいたしました。こちらで準備が出来ましたがご確認いただけますか?」
「ありがとう」
一度熨斗付きのチョコレートを両手に持ち、お客様に確認してもらう。一瞥したお客様はにっこりと満足そうに微笑んだ。良かった。
今の一瞬だけでも、また列にお客様が並び始めているのが分かった。焦る気持ちを抑えながら、私もにこりと微笑みゆっくりとチョコレートを元に戻し、商品を渡す。
「ありがとうございました」
お客様に深々と頭を下げ、数秒したのち顔を上げる。ふと、過去の恋愛を思い出した。




