日常に戻る
「あ、おはよー」
「おはよーございます」
先に職場に来ていた和田さんに挨拶をした。眠たい目を擦りながら、私もオープン準備をする。バッグヤードで制服に着替えて、店の電気を付けて行く。
ブン…と小さな音を立てて、ショーケースに並んでいるチョコレートたちに冷気が送られる。湿度のチェック、賞味期限の確認をしていく。
「昨日は楽しかった?」
「はい、とっても!」
管理表に数値を書き入れながら、和田さんからの問いかけに答える。和田さんが懐かしむように「いいわねぇ…」と溢した。
「おはよーございます!」
「あ、おはよー」
「おはよー」
少し遅れてやってきた東田さんと挨拶をする。東田さんは私を見るなり『あれ?』と声を上げた。
「なんでいるんですか?」
「え?なんでって?」
「えー、泊まってきてないんですか?」
制服に着替えた東田さんが、カツカツと音を鳴らしながら私の横に立った。東田さんが少し不満げに声を出している。
「泊まってないよ、仕事だもん」
苦笑いをしながら、管理表を閉じて引き出しに仕舞う。和田さんもレジを開放し、お金を準備してくれている。東田さんは私が動けば一緒になって横に移動し、はぁぁ。とため息を溢した。
「相変わらず、ワーカーホリックですね。泊まってきたらよかったのに…」
「えー…、だって勝手に当日休みますって難しくない?」
「仮病でも使えばいいじゃないですか」
サラリと答えた東田さんに声を出して笑う。そこまで潔いと、不思議と怒る気持ちにはなれはかった。
「和田さん、どう思います?」
私の傍から離れ、次は和田さんに歩み寄って問いかけた。和田さんはどう答えたらいいのか。そんなふうに少し困った表情をしながら答える。
「んー、まぁ人それぞれペースがあるからね?」
「えー、もう…。つまんないー!」
東田さんは″不服″というように、頬を膨らませた。そして、私に視線を合わせてくる。
「でもまぁ、お土産話聞かせてくださいね!」
「……はいはい。オープン時間になるよ?」
私の声がけとともに、オープン前のアナウンスが流れ始める。東田さんは店舗入り口にスッと立ち、お客様を迎える準備をした。