嫉妬
「あ、観覧車。あれ乗りたい!」
歩いていると、観覧車を見つけた。観覧車は遊園地限定のものだと思っていたのに、こんなショッピングモールにあるなんて思わなかった。ワクワクしながら指を差して言う。
「…いいよ?乗ってきて」
あれ。一緒に乗ってくれるのかと思ったのに、どうやら違うらしい。横を向いても彼氏の表情までは分からなかった。
「高所恐怖症?」
「いや、違う」
「閉所恐怖症?」
「いや」
私が今思い浮かぶ理由は全部違った。数秒考えたものの、よく分からない。元カノと何かがあったとかなのだろうか。ふと思った疑問に、先ほどとは違ったモヤモヤが浮上した。
(…これは、もしかして)
嫉妬というやつなんだろう。きっと。でも早くない?デートの半日で、そう思うのは重たいと思われるんだろうか。チラリと彼氏を横目にするが、なんの気なくスタスタと前を歩いていく。このまま本当に通り過ぎてしまう。
「ねぇ、本当に乗らないの?」
「うん。いいよ?1人で行っておいで?」
本当に乗りたくないらしい。よく分からない。あの観覧車に何か理由でもあるんだろうか。感情がグレーになっていくのが分かる。
さすがに観覧車を1人で乗る勇気は無かった。諦めよう。ため息を溢し、少し離れた距離に近付くため、小走りで追いかけた。
___
ショッピングモールに入り、とある物を見つけた。
「あ、あるじゃん」
隣の彼氏は嬉しそうに指を差した。もちろん、私もある物があるのは認識している。
「おばけや」
「絶対やだ」
「お化け屋敷あるじゃん?」
「…やだ。絶対やだ」
霊感などは全くないが、ホラーや血だとか暗闇だとか嫌いだった。何がいいのか分からない。よく夏の特番でやっている心霊スポットだとか、怪談話も嫌いで数秒ですぐに切り替える。
「なんでよ」
もちろん、隣でケラケラと笑いながら言っている彼氏もそのことは知っている。知っていて誘ってくるなんてタチが悪い。名案を思いついた。そんな気持ちで言い返す。
「観覧車に一緒に乗ってくれたら考えるよ?」
「やだ、無理」
「なんでよ」
本当によく分からない。彼氏の言葉をそのまま返して笑い合った。
今、この瞬間が幸せだと思った。
小さなことで笑って、このままずっと隣にいたいと思った。




