普通の幸せ
「んーー、ここにしよう!」
「おけ」
レストラン街を隈なく探したものの、やっぱりどこも家族連れで賑わい長蛇の列が出来ていた。お腹を空かせていたため、早く食べたいと美味しいものを食べたいが掛け合わさる。フロアを2.3周回ってようやく食べ放題のお店に落ち着いた。
「やっと食べれるー」
空腹を満たせる喜びと、店内には既に美味しい香りが立ち込めていて、それだけで凄く満ち足りた気分になる。
「何食べようかな」
味の想像をしワクワクとした高揚感と、満ち足りた嬉しさに口角が上がる。
そんな姿を見て、彼氏は頰杖を着きながら静かに目を細めた。
「たくさん食べていいよ?」
「もちろん!」
「…吐くまでは食べなくていいけど」
「ふふ、そしたら介護してくれるでしょ?」
「デートで介護とかしたくねぇーよ」
彼氏のツッコミにケラケラと声を上げて笑う。こういうのが普通のデートっていうんだろうか。そんなことを思いながら、食べ放題の品を取りに行くために2人とも席に立った。
各々すきな好きなものを小皿に取り分け、席に戻る。
「いただきます」
「いただきます」
静かに手を合わせて目を瞑り、食事の挨拶をする。
最初に手に取ったのはサラダだった。瑞々しく、シャキシャキと音を立てる。プチンと口の中でミニトマトが弾け、更に味が変化する。
モグモグ
つい、無言で食べてしまっていた。だけどきっと表情には出ていたのだろう。彼氏がふふっと小さく笑った。
「おいし?」
「うん、めっちゃ、美味しい」
言葉を吐きながらも咀嚼はやめず、次々に料理を口に運んでいく。食べながらご機嫌になっていくのが自分でも分かった。食べながら嬉しくなって、味を楽しんだり、これは何の食材なんだろうとか、調味料はなんだろうと考えを巡らせ独り百面相状態になっていた。
「まじで、吐くなよ…?」
「ん、…大丈、夫だよ」
彼氏をまっすぐに見つめて、ニコニコと答える。ふと、ある物が気になった。じっと見つめると彼氏もその物に気付いたかのように、恥ずかしそうに少しだけソレに触れた。
「……ふふ」
今日は一体、何回可愛いと思えばいいんだろう。その照れた姿はなかなか見れないような気がして、全力でカメラのシャッターを切りたくなった。
「着けてくれたんだ?」
「…まぁ、うん」
お揃いで買ったネックレス。身長差があり、首元を見れなかったこともあって、着けてくれてるとは思わなかった。シャツの少しの隙間から見えるネックレスは一段と輝いて見えた。