小さな意思表示
「あー……、これは難しいかもね」
「…だねー」
私と彼氏はとある画面を見ながらそう言った。iPhoneの画面に映し出されているのは″当日予約 △、×、×、×″という文字だった。せっかく少し遠出もしてみたけど、当日券は難しそうだ。
「どうする?」
「とりあえず、周辺回ってみる?」
「うん、そうしよっか」
目的地を変更し、駅へと向かう。私は迷子にならないよう、彼氏の半歩後ろを追う。私はとある場所をチラリと盗み見た。
(…どうしたらいいんだろう)
こんなことで悩むなんてと強く思う。いつ手を繋いだらいいんだろう。そもそも彼氏は繋ぎたいと思っているのかさえ曖昧な気がした。
そういえば、私の恋愛はいつだって相手任せだった事に気が付いた。やりたいと思うことすら、発言する前に「どうせこう思ってるんでしょう?』そう言われて、無理やりに手を繋がれたことも、食べたい料理も、あの時みたいに『部屋に行きたい』とごねられたこともあった。
自分自身から意思表示したことが無さ過ぎて、考えがまとまらない。ただ彼氏の後を着いていくので精一杯になっている。
「…っていうことがあってさ。参ったよね」
「んー?そうなんだ…」
「疲れてる?」
少し静かになった私を気遣って言ってくれた。本当にもう、ただその言葉だけでも嬉しい。ふふふっと何度溢した笑みかは分からないけど、ニコリと笑って彼を見つめて「大丈夫」と答えた。
「疲れたら言って」
「うん、ありがとう。それよりもお腹空いた!」
無事に電車に乗り込んで、大きなショッピングモールのある駅に降りた。ちょうど時間もお昼時、もしかしたら飲食店は混んでいるかもしれないけど。今はひたすらに、好きな人と美味しいご飯が食べたい。ただそれだけでいい。