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信じたい未来  作者: はる
20/22

薄暗い場所で



「んー…」


あれから数日。彼氏との関係性は相変わらずだった。毎日おはよーとか、おやすみとかのスタンプを送り合う。電話もたまにするし疲弊していなければ2時間ぐらいは通話をする。


「どうなんだう…」


倦怠期なのかとも思うけど、電話にはちゃんと反応してくれる。冗談も言うし、普通に笑い合えている、気がする。


「次、いつ会うの?」


隣にいた和田さんが問いかけてきた。ハッとし、パチパチと瞬きを数回繰り返す。


「あ…、と……。まだ決まってないです」


そうだった。まだ未定なんだった。

そろそろ繁忙期のピークも落ち着いてきたし、話してもいいかもしれない。

退勤後、バスを待つ間にも彼氏にLINEをしてみた。


『今度いつ会えそう?』

『あー…、ごめん。暫く無理そう。遠方に行くことになった』


一文を読んだ私は思考が止まり、危うくバスにも乗り遅れるところだった。


『…え?どういうこと?』


思ったことをそのまま打ち込んだ。整理がつかない。呼吸が浅くなっていることも気付かずに、LINEの言葉を待つしかなかった。


『仕事で遠方に行くことになった』


まるで彼氏が目の前にいるかのように、淡々と通知が来ている。ようやく息苦しさに気付き、呼吸が浅くなっていたことを思い出した。


いつもだったら、ちゃんとラリー形式で返してくれる文章も、今は彼氏からのLINEが多い。整理が付かないまま、溜まっていく文面。現実味がないというのはこういうことをいうのだろうか。今まで理解できていた言葉なはずなのに、全然頭に入ってこない。


『…そうなんだ…』


絞り出すようにしか返事ができない。『どのくらい行くの?』『少なくとも年単位だと思う』その文章に目の前が暗くなっていくのが分かる。


『せっかくだし頑張りたい』

『うん、きっと経験した人にしか分からないこともあるだろうし、頑張ってきて!』


本心のはずなのに、溢れたため息は震えていた。仕事だから仕方ない。今そう言い聞かせないと涙が止まらなくなりそうだ。


『ありがとう!』


彼氏は既に前を向いているんだろうか。寂しいというのはもう遅いのかな。もっと一緒に居たかったし、もっとたくさんの思い出を作りたかった。こんなに脆く終わってしまうんだろうか。


『もし、好きな人が出来たらそっちにいってもいいよ』


私たちの関係性はそんなところまで、希薄になっていたんだろうか。誰にも取られたくないと言っていた彼氏が、今は正反対の言葉を言っている。バスを降りて、駅周辺の静かなところに移動した。


やっぱりもっと早く、色んな気持ちを伝えれば良かった。今更後悔しても遅い。溢れ出した涙が頬を伝う。

他に好きな人ができるとか考えられない。だけど、きっと彼氏はもう前を向いているんだろう。


『…うん』


酸素不足で頭が働いていない。涙を拭うごとに、止めどなく溢れていく。どうすればよかったんだろう。もっと早く、会いたいって伝えれば良かった。もっと早く。

そんな気持ちが拭えないまま、薄暗い夜の中、ただひたすら泣いた。





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