舞い上がる気持ち
東京某所。
今日は生憎の雨だ。いや、雨女としての本領とやらを発揮しているだけかもしれない。
でも、今日はせっかくの初デートだというのに。
重いのは空だけでは無く、気持ちまでやるせなくなってくる。おかぴーとの最後のLINEにまだモヤついている。あれから3日が経とうとしているのに。
『もうすぐ着くー』
彼氏からのLINE通知にニヤけてしまった。
彼は可愛い人だと思う。可愛いくて、不器用で優しい人。友人の知人たちからは″かわいい…?″と不思議がられたことがある。
たしかに童顔とかでも無く、高身長で声が低い。だから見た目は可愛いとは程遠いかもしれない。
『はーい、気を付けて来てね!』
口元のニヤけが止まらないまま、そんな返信をする。そんな中、立て続けにLINE通知があった。友達からのLINE。
『今日のデート楽しんで』
ただ、その言葉にさらにふふっと笑ってしまった。デートという言葉にすら舞い上がり、笑みが溢れる。
「あ…、居た」
聞き慣れた声が、駅の雑踏の中で聞こえた。姿が見えて、溢れた笑みをそのままに小さく手を振った。
「…?iPhone見てニヤけてた?」
「うん、友達からのLINEで」
「ふーん…」
彼氏はちょっとご機嫌斜めになった。その感じを横目に私は2回目のふふっという笑みを溢した。
「さ、行こうー?」
「…雨、結構降ってるね」
「んー?私が引き連れてきた」
「…やめてくれ」
少し困ったように眉を顰めた。
うん。そういうところが可愛くて好き。
たぶん、みんなに伝えてもよくわからないと言われてしまいそうだけど。でも、私だけが知っている可愛さがあってもいいと思う。だから、誰も知らなくていい。
この時間を思う存分楽しむ。
そう心に決めて、iPhoneを鞄の奥底にしまった。