すれ違い
『今日、電話してもいい?』
『うん、いいよ!』
二つ返事で返ってきた言葉にホッとした。コラムの記事を鵜呑みにできるほど、まだ冷めていないはず。
(きっと、大丈夫)
願うように、祈るように心の中で呟いた。
ポツリと降り出した雨。空を見上げれば、少し不安な気持ちが大きくなった。振り払うように、小さく首を横に振った。
「…大丈夫」
小さく、決意するかのように呟いた。
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「お疲れー…」
「おつー……」
4日ぶりの通話はお互いに第一声で疲労しているとわかった。疲労し過ぎて、その後の言葉が無言になる。たった一言で安心してしまった。その状況にふふっと笑みを溢す。
「…なに?」
彼氏には苦笑いを浮かべたと思われたのかもしれない。少しだけトーンが低くなった。いつもならさほど気にしないのに、今日はなんだか気になってしまう。
「ううん、ごめん。お互いに疲れてるなぁって…」
「たしかに…」
なんだか波長が合わない。そんな感じがする。きっとお互いに疲れているだけ。何か、話題を切り替えようとするも何も浮かばない。
「………ごめん。今日は疲れてるからまた今度話そう」
「うん。…わかった」
急に今までどう接していたかが分からなくなる。こんな展開を望んでいたわけじゃないのに。電話をすれば心が晴れるかと思ったのに、今は冷たい風が吹き荒れている。不安が増した。
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それからも繁忙期は続き、どこかギクシャクとした関係が続いていた。
(やっぱり、あの時押し倒すとかすれば良かったんだろうか…)
おはよー!という言葉とともに、スタンプを送ったものの既読スルーになっているLINEを睨む。こういう時の対処法がよくわからない。急に好きとか言ってみたらいいのだろうか。モヤモヤとする気持ちと、焦る気持ちが合わさる。
「あー……ね」
彼氏と付き合った時からの一連の流れを知っている友達に、今の現状を伝えると歯切れの悪い言葉が返ってきた。
「んー…」
いつもは色々とアドバイスをくれるのに、今回に至ってはどうしていいのか分からないらしく言葉を濁した。
「すっごい彼氏のこと好きなんやなぁ…って今一緒にいるから伝わるけど…。ちゃんと伝えてる?」
友達は私をまっすぐに見て問いかけてきた。
「…伝える……」
友達の言葉を反芻する。その様子を見ていた友達はやっぱりというようにため息を溢した。
「やっぱりなぁ…。ちゃんと伝えた方がいいで?」
良いことも、悪いことも。友達はそう付け足した。




