疲弊と罪悪感
『これはどういうことですか?』
一言、と写真が添付されていた。
遅番としてシフトに入っている店長からだった。
あ、やばい。
後で詳細を書こうと思っていたのに忘れていた。簡易的なメモしか残していないことに気付く。
『すみません。本日、大量注文のお客様分です。会計済で、2週間後に取りに来店されます』
『在庫確認した?』
『すみません、出来てません』
淡々と打ち込み、次第に眠気よりやってしまった罪悪感のほうが大きくなっていく。もしかしたら、在庫も少なかったかもしれない。限定品もあったからなおのこと確認が必要だった。疲れ切った気持ちと、やってしまったと落ち込んだ
店長からのLINEは既読スルーになっている。
明日も早番のシフトだったが、30分ほど早めに行って在庫確認と発注をしよう。
「まもなく、到着いたします」
バスのアナウンスが知らせる。バスに乗り込む前より重く感じる身体を起こし、ヨタヨタと頼りない足取りで清算まで辿り着く。
とりあえず、今日はもう何も考えたくない。無心で清算し、最寄駅までの電車に乗り込んだ。
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お母さんの「おかえりー」の声にも、ほぼ無言な状態で帰宅し、無言で部屋までの階段を昇った。
「ご飯にするー?」
その言葉で、そう言えばそんなLINEが来ていたかもしれないと思った。
「うん、ご飯にする」
乱雑に鞄とジャケットを置いて、どうしても抜けない疲れにため息を溢す。
早く寝たい。ただそれだけを思いながら着替えて、手を洗いに下に降りた。
「お疲れー」
お母さんはにこやかに迎えてくれるが、私はそんな気分ではなくただ力無く「うん」と答えることが精一杯だった。
鯖の煮付けとサラダ、ご飯ときんぴらごぼう、スープがテーブルに並べられていた。
そういえば、お昼をそんなに食べていなかったことを思い出す。
「…いただきます」
お腹が空くだろうと思ったが、空き過ぎてしまった所為かただ無心で手を合わせ、サラダを手に取る。
「疲れた?」
「……うん」
「忙しかった?」
「………うん」
ただ一言で返す私にお母さんは、小さくため息を吐いてテレビを付けた。今流行りのお笑い芸人が複数出ているバラエティーだ。芸人やスタッフの笑い声がリビングに響くが、今はその声すら煩わしく感じてしまう。
「この芸人さん達知ってる?この間、大阪のイベントに来ててさ。お母さんさんも見たのよ」
「…へぇ、そうなんだ…」
スイッチが完全にオフモードとなり、疲弊しきっている今の状態では反応することが難しい。私の生返事にお母さんはむすっとした。
心の中では謝るものの、本当に心身ともに疲れているためどうしようも出来ない。今こうして、かろうじて返事をしているだけでも許して欲しい。
「ナナ、今日もお姉ちゃんは話してくれない」
ついには猫に話しかける。隣に座っていたお母さんはテレビ前にあるソファーに移動し、寛いでたであろう猫を抱きしめながらそう言った。
「ごちそうさま」
パチン、とてを合わせ食器を重ねる。椅子から立ち上がり、食器をシンクまで持っていった。洗剤を付けて洗った。




