表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

epilogue



「おはよう」と、力強く挨拶する和葉は、もうかぐや姫ではなかった。

 けじめのつもりで長髪をばっさり切った彼女は、持ち前の雅さと合わさって、黒髪の麗人なんて呼ばれ始めて。

 常に同性に囲まれ、輝羽と話せないことが多くなってしまったが、和葉はまだライデンだった祥人をよく思ってはいないので、いい距離感なのかもしれない。


「ちょっと、このクエスト手伝ってよ!」


 白雪は化粧こそ健在だが、新作のドラゴンハントに夢中だった。意中の人がやっていることを知って、接点を増やすためにやり始めれば、思っていたより面白かったらしい。

 白雪がしているならと、彼女との共闘を望むプレイヤーが増え、輝羽にとっても堂々とできる環境にはなる、が……


「あんまやってると赤点とるぞ」


 はよ、と挨拶する祥人はもうフードを被っていなくて。


「アンタに言われたくなーい」


 白雪とよくわちゃわちゃ言い合うようになる。その様子を見たクラスメイトは、もしかしたら取っつきにくくないかも、と祥人の印象が変わりつつあった。


ひろくん、私も手伝ってほしいクエストある」

「……どれだよ」


 兄と差をつけるための期間、ずっとゲームをしていた祥人の腕は神がかっていて、輝羽もちょこちょこお世話になっていた。


「輝羽には、ほんっと優しいよね。アンタって」

「うるせえな」


 白雪が茶化せば、祥人も負けじと。


「おまえは兄貴に手伝ってもらったらいいだろ。なんのために交換したんだよ」

「白雪ちゃん、悠人先輩とプロフィールカード交換したのっ? いつっ?」

「……先週の日曜。オンラインで祥人に救援送ったら、人手が足りねーって悠人先輩連れてきて」

「なら、4人でできるじゃんっ」


 スマホを取り出して、どの日がいいか――さっそく計画する輝羽に、祥人はやれやれと柔らかなまなざしを向けた。

 そんな彼に、白雪はまた絡む。


「俺だけでいいだろ。なんて、思わないの?」

「どいつのこと言ってんだよ」




 ――――ご都合主義の自己中野郎は、もういない。




「シュウさん、今日の運動量ハンパなかったんで、こっちのドリンク飲みません?」

「ミナト、さっき足首ひねってたろ。アイシング、ほら」


 大樹は休部していたサッカー部を辞め、マネージャーとして再出発を誓った。

 自分の性格を叩き直すため、気遣いというものを自然に身につけたくて。


「ありがとな、大樹」

「……うっす」


 独りよがりだった頃にはかけられなかった言葉が大樹に沁みる。

 調子に乗っていた大樹を、最初はこき使っていたチームメイトも、彼の献身さに水に流して。今年の鳴海大附属高校のサッカー部は、ひと味違うチームになるかもしれない。



 そして、もうひとり。



 自分の身の振り方を改めた生徒がいた。



「息抜きしないと、頭に入るもんも入んないぞー」

「うるせえ」

「ほらー、祥人の彼女から遊ぼーって」

「勝手に見んな、っておい」


 悠人がスマホに気をとられていると、友人たちに参考書を奪われる。


「返せよ。こちとら、おまえらについてくのでやっとなんだぞ」

「それ、学年トップが言う?」

「それなりにしたからな、前回は」

「つーか、やれば確実に覚えられるのって、ずるくね?」

「ずるくはねえだろ、ずるくは」



「むしろ最強じゃん」と羨むことはあっても、悠人の強みを笑う者は誰もいなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ