Chapter 1
装備品、守護神を見直して、週末は禁足地に向かう。
攻撃モーション、パターンはある程度把握した。
あとはどれだけダメージを与えられるか。一歩踏み込んだ攻撃をしかけ、一刀両断に繋げたい。
これが決まれば、首を落とすことができる。
制限時間のある中で、8つあるのだ。
ちんたらしているわけにはいない。
だが、一刀両断にこだわるせいで、こちらに隙が生まれる。振り下ろした直後が無防備に。そこを狙われ、体が宙に浮く。
受け身がとれずに、岩場に背中を打ち付けた。
ヤマタノオロチが猛追してくる。
――まさに、だった。土日、惨敗したプレイが、そのまま夢で再現されて……
大剣でガードしても、岩とヤマタノオロチとでプレスされるんじゃないかと冷や汗が流れた。
「横に回避しろ!!」
ヤマタノオロチの首を転がるようにして傷つけながら、双剣使いの青年が輝羽の前に現れた。
俊敏さが上がるカマイタチのマントを身にまとった、金色の髪が印象的で。彼がヤマタノオロチの攻撃を一手に引き受けて、輝羽は体勢を整えることができた。
双剣の特徴は、タイミング良く攻撃をすることでカウンターを決められることだ。
青年は神がかっていた。
「今だ!! 行けっ!!」
大剣を振りかぶり、骨までぶち斬る。
これが、協力プレイ。
初めて、首を落とすことに成功した。
――――そんなところで、無情にも目が覚めてしまうのだ。
またリアルな夢が視られて、喜びは半分だった。
疲労感と、背中が痛い。
夢で打ち付けたところが、とにかく痛かった。
*
背中を丸めて登校する輝羽は、駅前で声をかけられた。
「最高の夢を視せてやる。そんな囁きに耳を傾けてはいませんか?」
「え、いや……」
最近視るリアルな夢に歓喜こそしているが。
「ストレスは貴女の心を蝕み、その隙を悪魔はついてくるのです」
「はあ……そう、ですか」
あまりそういった信仰心のない輝羽は、足を止めることなく、美術の教科書で見るような、聖母の微笑みを携えた女性からビラを受け取るだけにとどまった。
新興宗教、と思っていいのだろうか。
それにしては、神様がどうこうの文言はない。
「――大丈夫ですか?」
興味があると思われて追ってきたのか。輝羽がおずおずと振り向けば、同じビラを持った和葉だった。
「和葉ちゃああんっ……」
「すみません。とても辛そうに見えまして」
ぱきぽきっと音を鳴らしながら、輝羽は背筋を延ばした。
猫背、良くない。
「……本当に大丈夫ですか? 痣だらけで、とても痛々しいですわ」
「あざ?」
手の甲から手首にかけて、膝よりちょっと上の内側に青々とある。
「ご家庭でなにかありまして? それとも、お付き合いされてる方に?」
真剣な表情で聞いてくる和葉に、輝羽はすぐさま首を横に振る。
「付き合ってる人いないの知ってるじゃんっっ、違うよっ。ベッドからっっ、派手に落ちちゃっただけだからっっ」
苦しい言い訳だったが、それで押し通すしかない。
「背中、すっごく痛いしっ!」
心当たりは、夢の中にしかなかった。