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第44話 陽キャの幼馴染とノートの交換をした

「相変わらず綺麗にまとまってんなぁ」


 無駄な装飾のない、シンプルで整理されたノートを見て、(れん)はうなり声を上げた。

 自画自賛しているわけではない。彼が手にしているのは凛々華(りりか)の英語のノートだ。


「相変わらず大袈裟ね」


 ため息混じりに答えたのは、彼の隣に座る凛々華だ。

 呆れたように肩をすくめつつもわずかに口元を緩めている彼女の手には、蓮の数学のノートがある。


 教え合うのもいいが、相手のノートを見て自分なりに学習するのもいいのではないかという話になり、ノートを交換しているのだ。

 テスト二週間前を切った昼休みなので、彼らの他にも勉強をしている者たちはチラホラと見受けられた。


「そう言うあなたも、前よりはまとまってるじゃない。文字も問題なく読めるわ」

「そりゃ、一応交換する約束したからな。見やすいノートをもらうのに、こっちは雑じゃダメだろ」

「変なところで気が利くわね、相変わらず」

「変なところでは余計だ」


 などと雑談を挟みつつも、彼らの手は止まることなく動いている。

 相手のノートから読み取れることを、自分なりにまとめているのだ。


「——ねぇ」


 蓮と凛々華が昼休みの終了を告げるチャイムに合わせて勉強を終わらせ、次の授業の準備をしていると、心愛(ここあ)が背後から話しかけた。


「もしかして二人、ノート交換してるの?」

「えぇ。自分なりに理解することも大切だもの」


 早口で答える凛々華の口調は、どこか言い訳をしているようにも聞こえた。


「そうなんだ〜。でもそれなら、ノート見ながら問題解いたほうが良くない? 二人ともまとめてるみたいだったけど」

「それだと結局、その場でわかった気になるだけで、応用問題とかに対応できないのよ。紙に書いて、自分なりに理解しないと本当に身についたことにはならないもの」

「なるほど。確かに紙に書くって重要って言うもんね。私も真似しようっと」


 心愛がノートを開いた。


「えっと〜、メモは重要……あと、二人は数学と英語のノートを交換している、っと」

「それは書かなくていいだろ」

「それは書かなくていいわよ」

「「——あっ」」

「あはは、綺麗にハモったね〜」


 心愛が無邪気な笑い声をあげた。

 声が重なって思わず見つめ合っていた蓮と凛々華は、心愛の声を合図に慌ててお互いから視線を逸らした。


 いそいそと授業の支度を再開する彼らの頬は、誤魔化しようがないほどに赤らんでいた。




◇ ◇ ◇




 それからの日々はあっという間に過ぎていき、テスト本番を迎えた。

 テスト四日目の二限——最後は数学だった。


 終了のチャイムが鳴った瞬間、蓮は机に突っ伏した。


「終わったー……」

「死にそうな声出してるね」


 左隣の井上(いのうえ)亜里沙(ありさ)が、頬杖をつきながら苦笑した。

 テストのときは男女関係なく出席番号順の並びになるため、凛々華や心愛は離れた席にいる。


「なんか黒鉄(くろがね)君のそういう姿、ちょっと意外かも。頑張ったんだ?」

「まあ、対決してるしな」

「あっ、柊さんたちとやってるってやつ?」


 亜里沙が目を輝かせた。


「そう」

「どう? 自信ありそう?」

「やれることはやったけど……一匹人外が混じってるからな」

「——それは誰のことかしら?」

「っ……」


 背後から聞こえた冷ややかな声に、蓮はビクッと体を震わせた。

 亜里沙がおかしそうにクスクス笑いながら、ひらひらと手を振った。


「やっほー、(ひいらぎ)さん。お疲れー」

「えぇ、お疲れ様……それで? 言い訳なら聞くわよ」


 凛々華が蓮に視線を向け、スッと瞳を細めた。


「いやぁ、柊の計画性とか集中力は異次元だからな。オンオフの切り替えも含めて、あれは人外だって」

「そんな特別なことじゃないわよ。自分の立てたスケジュールに従っているだけだもの」


 凛々華が澄ました表情で肩をすくめた。

 蓮にじっとりとした目線を向けて、


「あなたのほうこそ、集中したときは私の声も聞こえないくらい没頭してるじゃない。あれこそ人外だと思うのだけれど」

「ま、たまにな。でも、あの後ガス欠起こすから、長い目で見たら柊みたいにちゃんと規律を守ったほうがいいんだよ。だってお前、集中してても休憩時間は強制的に休むじゃん」

「えぇ。それこそ長い目で見たときは、そちらのほうがいいもの」


 凛々華がどこか得意げに鼻をつんと上に向け、胸をそらした。


「二人ともすごいねぇ。というか——」


 亜里沙は感嘆するようにそう言った後、蓮と凛々華に顔を近づけて、イタズラっぽい笑みを浮かべて囁いた。


「——そんだけお互いのことわかるくらい、一緒に勉強してるんだ?」

「「っ……!」」


 蓮と凛々華は揃って赤面した。


「べっ、別にそんな——」

「あはは、そういう関係の人がいるのはいいことじゃん」


 慌てて何かを言おうとした凛々華を、亜里沙が笑顔で遮った。

 彼女は反論の隙を与えずに立ち上がった。


「あっ、柊さん。私の席座っていいよー。それじゃっ!」


 最後に意味深なウインクを残し、亜里沙は軽い足取りでその場を離れていった。


「なんなのよ、言いたいことだけ言って……」


 ぶつくさ文句を言いながらも、凛々華は亜里沙の椅子に腰を下ろした。


「それで、どうしたんだ?」


 蓮は気まずい雰囲気ごと、話題を変えた。

 この後はホームルームがあるため、帰りのお誘いではないだろう。


「いえ、大したことではないのだけれど……テストの反省会も兼ねて、この後——」


 珍しく歯切れの悪そうに喋っていた凛々華が、不意に口を閉ざした。

 もじもじとしていた態度から一転、鋭い視線を蓮の背後に向けた。一瞬のことだったが、見間違いではなかった。


(どうしたんだ?)


 蓮がさりげなく振り返ると、英一(えいいち)がこちらに向かって歩いてきていた。

 何気ないふうを装っているが、体の向きや視線から、凛々華の発言に注目しているようだった。


「……いえ、帰るときに改めて話すわ」

「わかった」


 凛々華は感情を押し殺すようにため息を吐いた後、自分の席へと戻っていった。

 英一は不服そうに彼女の背中を追っている。


(こいつもなんというか、すごいよなぁ)


 蓮は思わず感嘆の息を漏らした。

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