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二度目のツバメ

作者: 黒楓

愚妹に後れを取る訳には行かないので、私も『純文学』を目指しました!


もちろんエロ抜きです!(*^^)v




 新居のフローリングの床に積み上がった使用済みの段ボールをコウくんと二人、バカみたいにはしゃぎながら運び出す。


 建材や畳や植栽など……総てが真新しい匂いで、六畳一間の古いアパートに()()()()()()()()私には眩し過ぎるのだけど……私の事をコツン!と肩でノックするコウくんの笑顔がもっと眩しくて、少しだけ涙が滲む。


『今度、独り暮らしを卒業するのは子供を引き取った時!!』と

 固く心に決め、連れ去られた子供を()()()から奪い返す為に!!

 男達に伍して走り続けて来た。

 けれども……

 世の中にはどうにもならない事もあると思い知らされた。

 決して諦めたくはなかったのに!!

 二年前、私は無慈悲な母親を演じ、自ら子供との縁を断ち切った。



 一昨日、このマンションの駐輪場へ、()()()()()()()()()()()()()()()()が付いた古い自転車を運び込んだ時、外壁にカタツムリがくっ付いているのを見つけた。

 コウくんと二人で近寄って見ると、カタツムリは殻の口と壁の間を淡色の()()で固めて雨の来るのを待っている様だ。


 私が「カタツムリは植栽には害になるから取ったほうがいいよね」って言うと、コウくんは頭を振って(かぶりをふって)「この一生懸命な姿が美しくて本当の琥珀の様に見えてしまう……だからこのままにしておこう」と答えた。


 そんな風に“優しい眼鏡”を持つコウくんだからこそ!! 

 こんな私の事を「美しい」と()()()()()拾ってくれたのだろう……


 見た目も心もちっとも美しく無い私がコウくんとこんな(えにし)を結べるなんて、本来は有り得ない事だから……


 子供を“捨てた”罪と悲しみからは逃れる事はできないけど、そんな私を理解し寄り添ってくれるコウくんに限りない感謝と愛情を抱き、私はカレの手を取る。


 今日からは二人で行く新しい通勤経路!

 電車の中で、Bluetoothのイヤホンをヒロくんと分け合い聴いたのは、ずっと昔、私のお気に入りだったレイチャールズ……

 歌詞の意味とは違うけど、今の私は……

 この人を愛さずにはいられない。


 駅の改札を通って表に出ると、私は思わずコウくんの裾を引っ張り、壁の上の方を差した。


 そこにはこの春、海を渡ってやって来たツバメの掛けた巣があり、子ツバメ達が巣立ってからは、しばらく空き家になっていたが……新しくやって来た一羽のツバメが顔を出している。


 私達に見上げられたツバメはその気配に警戒したのか、パッ!と飛び立ち、少し離れた電線に留まってこちらを窺う。


「新しいお父さんかな?」

「うん!お母さんかもしれないね」


 二人、“恋人繋ぎ”をしながら会話を交わす。


 ああ!!こんな風に……私もまた卵を抱けるのだろうか……


 お互いの左の薬指にあるリングがまだ新し過ぎて……時には気恥ずかしく、ぎこちなくはあるのだけど。




ここに書いた風景は今朝、私が通勤途中に見かけたものです(#^.^#)



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― 新着の感想 ―
[一言] 「優しい眼鏡」という表現が素敵ですね。 人間に対してだけでなくカタツムリにも優しいコウくん、きっと主人公に惹かれた理由が描かれていないだけで、主人公も素敵な女性なんだろうなぁと思いました(*…
[良い点] 涙を引きずる過去と、笑いに輝く未来──その対比に少し戸惑いました。 笑顔でばっかりはいられないけれど、心から笑えるひとときがあるのって、いいですね(*´ω`*)
[良い点] 収入が少ないと、親権がとれないのが現実ですよね。 自転車からすると、まだ子どもは小さいのでしょうか。 捨てたという罪意識に苛まれて辛い思いをした主人公ですが、これからはコウくんと新しい生活…
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