情報の女神リピカをわからせる
「二対一でもいいよ、決着がつくかもねぇ!」
カーリーは、それぞれの腕を分裂させる。計四本となった。
さらに、全ての手に刀剣を出現させて握る。
「璃里音は性愛の女神候補だ、応じる意志があるならそっちで戦え」
言いつつ、アテナも抜刀する。
「そんなの退屈!」
当然のように拒否して突進してくるカーリーに、戦略の女神も構える。
「だろうな、故にまず動けなくしよう」
「できるもんならねぇ!」
直前でジャンプして飛び掛かってくるカーリー。
「じゃがんばって♥」
のを合図に手を振ってそばを離れる璃里音。
「遠慮ねぇな!」
若干気を取られるも受けるアテナ、四本の腕のそれぞれ異なるタイミングと速度、方向からの剣を、上ってきたばかりの階段を下りながら器用に捌く。
はずが。
一太刀捌ききれずに後方へ回転ジャンプして避けた。
叩きつけられたカーリーの剣は階段を両断。のみならず、砂浜を真っ二つにし、見渡す限りの海の果てまで裂く。
モーセの割った大海のようになった海底まで見通せる空間に、再び海が戻って凄まじい波が起きる。
「ちっ、油断した」
肩口を斬られて血を流し、アテナは悔しがる。
その目前に再度跳躍して着地したカーリーは、挑発した。
「おやおや。あの小娘に気を取られ過ぎじゃないかい、新人を性愛の女神候補と認めてわざわざ案内するとこからして。よっぽどよかったってところかねえ」
「そうだな」あっさり認めた相手に、血戦の女神が驚いて隙を生じる。「おまえも体験してみれば早い!」
たちまち、カーリーは三本の剣を折られて払われる。しかしアテナの剣にもひびが入っていた。
(長期戦を捨てた全力の振り!)
血戦の女神は悟るも、先が読めない。
カーリー最後の剣を弾くと同時、アテナの剣も折れた。戦略の女神はそいつを構わず捨て、手ぶらで突進してくる。
「なんじゃと!?」
不意を突かれたカーリーにのし掛かって組み敷き、アテナは四肢による関節技を決めたのだ。
「今日は剣で決着をつける気がないからな」アテナは宣言した。「これで勝負ありだ」
「はあ!? なにをぬかすか。これじゃどちらも動けん、いつも通りの引き分けじゃぞ!」
ざっと、倒れる彼女の頭上で砂を踏み締める音がした。
「やるじゃない、ざこお姉さん♥」
両手をわきわきと動かして、襲いかかろうとする璃里音であった。
「さぁて、おばさんもいい身体してるじゃない♥ なまいき~♥ ちゃちゃっと、わからせちゃいますか♥」
「お、おばさんじゃと。このガキめが。よかろう、ならば貴様の舞台で戦ってやるわい!」
それがカーリーの断末魔となった。
三人の服が宙を舞う。
来た、見た、やった♥
数十分後。
「……ま、参りました」
脱がされた水着で局部だけ隠した状態で、カーリーはしおらしくなって観念していた。
「はあ、朝から二人連続で女相手は初めてだよ♥ しかも3Pなんて♥」
また乱れた服装でそばに立ち、璃里音はそれを見下ろしている。
「いいかげん、シャワーとか浴びたいんだけどね♥」
「それなら案内所にあるぞ、負けたしあたいが案内してやろう」
「おまえが邪魔したんだろうに」
服を着直しつつ言うカーリーに、ちゃっかり自分も脱いでいたアテナも着直しつつ隣で呆れていた。
かくして、城壁と一体化した案内所とやらには二人の女神が同行。改めて扉を開けた。
「ようこそいらっしゃいませ。女神様ですか、候補様ですか?」
入り口のすぐそばカウンターテーブルで迎えたのは、眼鏡を掛けて翼と光輪を持つ天使の美少女だった。
「あっ申し遅れました」彼女は控え目な胸に手を当てて名乗る。「わたしめは受付嬢、情報の女神リピカ・エンジェルと申します」
来た、見た、やった♥
「何でもお命じになってください、本日のリピカは璃里音様の貸しきりです♥」
手っ取り早くこの世界のことを学ぼうと、出会って数秒で合体。乱れた服装となってわからされた天使であった。