メスガキの女神死す
一言で言い表すのならば、美李奈璃里音はメスガキだ。もっと長めに説明するのならば、天才ビッチ美少女子小学生だ。
知能指数200。セクシー表現の才能を持つギフテッド。
なのに、ある年齢と364日23時間59分59秒までない能力が1秒後に備わるなるこの科学の時代に非論理的な占星術的オカルト規制を理由に、大人より頭がいいのに子供だからと性的知識の勉強を禁じられ性表現披露の場を奪われた。以来、璃里音は家出して金を溜め、そうした価値観をひっくり返す機会を窺っている。
「あー、このパパもだめかあ♥」
早朝。ドアをノックする音で璃里音は目を覚ました。
目覚ましの携帯アラームより早かった。
ネットで自分のヌードや自慰を撮影した動画や画像を販売していた彼女は悟る。
顔は写さないし黒子などの特徴的な部位も避ける。まず普段見られることはないが、見られたところで個人の特定などできない程度の露出でしかない。
それでも違法だ、基本的に受け手側が。
正確には児童を守るためという法律の下で、彼女のような発信者が自分の裸で犯罪者にされてはいるのだが、少年法等で守られてはいるという状況がこの種の犯罪者の最多という始末だ。
行きずりのパパ。この部屋の主のロリコン男に世話になりながら、隙を見たり誘惑したりでそのパソコンを使わせてもらい、そこから商売をしていたのでいつか足がつくのは想定済みだ。
いろんな場所を渡り歩いて精神科やトー横の友達などからかき集めた睡眠薬を、昨夜ロリコンに盛っておいて正解だった。
プレイも激しかったのでしばらく起きないだろう、普通に生きていたら絶対できないサービスもしてあげたから悔いはないはずだ。男が寝たあとにシャワーも浴びたし、地雷服も洗濯済み、引っ越し準備も完了してる。
背玄関のドアスコープで警察と確認するや、反対側の窓に駆ける。
急いで開けベランダに出ると、鉄柵に結んであった繋いで長くしたシーツのもう片方を表に放る。
所詮三階。落としても大丈夫な程度の荷物が入ったランドセルを先に下の植え込みに放る。
続いて、シーツを伝って下りだした。
まずは二階のベランダだ。まだ住人は起きていない時間であるとも調査済みだし、僅かな時間、平均的な女子小学生並みな小さい身体を支えるくらいの力はある。
壁を伝って三階と二階の間に着いたそのときだった。
「君、大丈夫かね?」
「!!」
突然下から小声を掛けられた。
音は振動なので、伝わるのを阻む隙間を通るなどの性質があるため、小声は以外と下手な大声より聞こえたりする。というのは置いといても、さっき下を確認したときは誰もいなかったはず。
駐車場も反対側だ。
だが、植え込みに隠れるように二つの人影が出てきていた。
成人二人。スーツにコート、男と女。
――警察だ!
「うっざ~♥ 児ポ程度で裏口まで張ってんのぉ!?♥」
驚きで足を滑らせ、転落しながら叫べたのはそこまでだった。
落ちどころが悪かった。
植え込みの花壇を囲うレンガの角に、ピンクに染めたツインテールの頭部を強打。あたしは死んだ。