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アップちゃん追放作戦2

 再び現れた仮面の女。

 アップちゃんのハンマーを蹴りではたき落とすと、アップちゃん自身も放り投げた。

 こいつ、なにしに来たんだ。得にもならないはずなのに、俺の邪魔をしやがって。


「つ、強いでみゅ」


「こんなところで仲間割れとは、呆れて物が言えないわね」


「仲間?」


 やばい、この女、イステが俺のパーティーメンバーだと知っている。

 なにを勘違いしているのか知らないが、はやく口を閉じないと。


「この竜人は、セントたちの仲間でしょう?」


「え!?」


 この、バカ女が!!

 イステがあははと笑う。


「あー、バレちゃったねセント。おっと、言っちゃダメなんだった。ごめんごめん。でもさー」


「うるせえっつってんだろイステ!!」


「……ごめん」


 くそ、つい感情的になってしまった。

 これでは、イステが仲間だったと暴露しているようなもんだ。

 ウェスタが「あちゃー」と額に触れる。

 そしてアップちゃんは、困惑で目に涙を浮かべていた。


「ど、どういうことなんでみゅか、セントお兄ちゃん。ずっとわちしを、騙していたんでみゅか?」


「そうじゃない」


 考えろ、ここから巻き返す方法。

 納得できる理由。

 騙し通せるハッタリ。

 こんなガキ一人を追放するのに、手こずらせやがって。


「いや、本当なんだ、アップちゃん」


「そんな! でみゅ」


「俺たちも、騙されていたんだ」


「みゅ?」


「イステは強い。だからパーティーにいれた。だけど、こいつの凶暴な本性は見抜けなかった。気づいたときには、スーノとサウムは……。アップちゃんに黙っていたのは、その……伝え忘れていただけなんだ。あまりの怒りで、こいつを倒すことで頭がいっぱいで」


「そうだったんでみゅか……」


 よし、しょせんはガキだ。

 仮面の女に睨みを効かせる。口出しをするなと、強い意思を込めて。


「さあアップちゃん! 憎きイステにトドメを!!」


「わかったでみゅ!! うりゃああああ!!!!」


 ポコン、とイステを叩くと、


「やーらーれーたー」


 イステは人間態に戻り、気絶したフリをしてくれた。


「やった、やったでみゅう!!」


「凄いぞアップちゃん!!」


「おじいちゃん、スーノお姉ちゃん、サウムお姉ちゃん、終わったでみゅ……」


「そうだね!! じゃあパパが心配しているから帰ろっか」


「はいでみゅ!! ばいばいでみゅー!!」


 アップちゃんが去っていく。

 一応、ウェスタに途中まで見送りさせるが、無事に実家に帰れることだろう。

 ばいばいアップちゃん。立派な大人になれよ。


「イステ、もういいぜ」


「ん、起きて大丈夫?」


「おう。悪いな、めんどうかけて」


「いいってことよ。んじゃ、このあと用事あるから」


 イステもいなくなる。

 アップちゃんも、ウェスタもいない。

 さて、これでようやく二人っきりになれたわけだ。

 あの忌々しい仮面の女と。


「で、結局お前、なに?」


「……さっき、あの子のパパがどうこう言っていたわね」


「は? あぁ、八歳でギルドは危険だからって心配しているんだ。親なら当たり前だろ」


「はぁ……。情けない。可愛い子には旅をさせよ。獅子は子を崖から突き落とす。甘やかしては子供は育たないわ」


 この感じ、覚えがある。


「危険なこと、困難なことにドンドン挑戦させるのが親の役目。死んじゃいそうになってから守る。私はこれまでそうやって育ててきたつもりよ。……ね、セント」


 女が仮面を外した。

 仮面の下に隠れていたのは、俺の母さんの顔だった。

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