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アップちゃん追放作戦

「そうだったんだ……」


 アップちゃんパパから真実を告げられた翌日、俺は女子三人を酒場に呼び出し、聞いた話を語った。

 こんなことなら誘わなきゃよかった、と後悔するウェスタの横で、スーノが悲しそうに瞳を涙で滲ませる。


「同じパーティー内に憎しみがあるなんて、悲しいです。イステさんには罪がないのに」


「本当だね」


 お前も気をつけろよ。


「わたくし、アップちゃんとはもっと仲良くなりたかったですが、しょうがないですわね。アップちゃんパパが心配している以上、アップちゃんは家に帰さないと」


「そうねー。私も、ちゃんとアップちゃんパパに話してから誘えばよかった」


「それでセント様、なにか策が?」


 じゃなかったらこいつらを呼び出したりはしない。

 俺の作戦を語ると、女子共は賛同してくれた。

 決行は明日。そう、明日俺は、アップちゃんをパーティーから追放するのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 さらに日を跨ぎ、俺はアップちゃんを酒場に呼び出した。

 もちろんウェスタも一緒だ。

 スーノとサウムはいないのだが、理由はあとで。


「アップちゃん、大事な話がある」


「な、なんでみゅか? セントお兄ちゃん、深刻そうな顔でみゅ」


「俺たちはこれから、ギルドマスタークラスのクエストを受ける」


「え!?」


「竜人族、イステの討伐だ」


「イステ……」


「知っているのか?」


「おじいちゃんの仇でみゅ!!」


 ウェスタは目を見開くと、悔しそうに拳を握った。


「うそ……あいつ、アップちゃんの家族まで……」


「まで、て?」


「スーノとサウム、食べられちゃったのよ。そのイステに」


「でみゅうううう!!??!?」


 嘘である。

 ウェスタ、なかなかの演技力である。


「アップちゃん、危険なクエストだが、俺たちと一緒に戦ってくれるか?」


「もちろんでみゅ!! 許さないでみゅイステ!! スーノお姉ちゃんとサウムお姉ちゃんのためにも、わちしが成敗するでみゅッ!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 てなわけで、町外れの公園にやってきた。

 そこには既にイステがいて、見知らぬ一般人相手にお喋りをしている。


「いたぞ! イステだ!!」


「う! お前らは!!」


「ここで会ったが百年目、スーノとサウムの仇!」


「なにを〜、返り討ちにしてやる〜。……てかさ、今日の昼、魚の煮付けを食べたんだけど、骨が残っててさ」


「うるさい黙れ!」


「あ、ごめん」


 実は知り合いだってバレたらどうすんだバカ!!


 察しがついているだろうが、作戦はいたってシンプル。

 イステを倒したことにする、だ。


 だからイステには事前に事情を話し、協力してもらっている。

 スーノとサウムが食べられたっていうのは、イステの残虐性をより色濃くして……というのは建前で、本当はリスク回避のためだ。


 イステと接触する以上、万が一に備えないとね。

 ウェスタは、アップちゃんをあやすためにいてほしいけど。


 アップちゃんがハンマーを構えた。


「おじいちゃんの仇!! 今日ここでぶち殺すでみゅ!」


 物騒なこと言うじゃん。


「おじいちゃんの仇ねえ。あ、じゃあ君がアップちゃんか。セントが言っていた通りパワーファイターなんだ……」


「だまれイステ!! バカ!!」


「ごめんごめん」


 この作戦を潰す気かこのおしゃべりクソ野郎。


「アップちゃん、奴の言葉に耳を貸すな!!」


「わかったでみゅ!! いくでみゅー!!」


 アップちゃんが走り出すと同時、イステが竜の姿になった。


「ウェスタ、俺たちも」


「うん!」


 俺とウェスタも走り出し、イステに攻撃する。

 といっても、攻撃のフリだけど。


 なにも知らないアップちゃんは全力でハンマーを振っているが、イステは余裕そうだ。

 ほらね、アップちゃんよりイステを残すべきでしょ?


 作戦ではこのまま少し戦闘ごっこをしてから倒すことになっている。

 ある程度苦戦して勝利した方が、アップちゃんが得られる満足感も増すだろう。


 イステの口から、小さな光弾が発射される。

 光弾はアップちゃんの側の遊具を破壊した。

 ワザと外したんだろう。


「はーずーしーたー」


「危ないとこだったでみゅ!」


 イステ、お前案外ごっこ遊びが得意なやつか?

 将来良いお父さんになりそうだね。


「アップちゃん! トドメを!!」


「やってやるでみゅ!! うおおおお!!!!」


 アップちゃんがハンマーを振り上げる。

 そのとき、


「仲間割れは、よくないわね」


 あの仮面の女が現れて、ハンマーを止めたのだ。

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