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アップちゃん

「アップちゃんでみゅ! よろしくお願いしまみゅ!!」


 おかしな語尾をした金髪ロリの登場に、スーノとサウムの目がハートマークになってしまった。

 はわわ〜ん的な空気で、アップちゃんの虜になっているようだ。


「可愛いです!! めちゃめちゃ可愛いです!!」


「わたくしたちのことは『お姉ちゃん』とお呼びになってよろしくてよ!!」


「可愛いですよね! セントさん!?」


 まあ、子供的な愛らしさはあるが。

 アップちゃんに聞かれないよう、ウェスタに耳打ちをする。


「このガキ、本当に強いのか?」


「うん。でっかいハンマー振り回してどんな敵もバッサバッサよ」


「えー」


 見たところ、ただの人間の子供。

 どこにそんな腕力があるのやら。

 首を傾げて見つめていると、アップちゃんが俺を見上げた。


「話は聞いていまみゅ! わちし、即戦力になれるよう、がんばりまみゅ!!」


 かわいい! とスーノとサウムがさらに騒ぐ。

 そんなに可愛いか? 正直この語尾イラッとするんだけど。


「わちしを仲間にしてくれまみゅか? セントお兄ちゃん!!」


 ……可愛いじゃん。


 ポン、とウェスタがアップちゃんの頭を軽く叩いた。


「私のおばあちゃん家の近所に住んでてね、一緒に地元のゴブリンとか倒してたから、実力は保証するわ」


「でみゅ!」


 誇らしげに胸を張るアップちゃんに、スーノとサウムはもうメロメロ。

 抱きついて頭を撫でまくっている。


「セント様! 仲間にしましょう!!」


「こんな子を放っておくなんてありえませんよセントさん!!」


 うーん、強いなら別にいいんだけどさ。

 一つ引っかかるとこがあるんだよね。ウェスタや、スーノみたいな、重大な秘密を抱えてるかどうか。


「アップちゃん、上京してきたらしいけど、なんで?」


「立派なギルドマスターになるためでみゅ!! わちしの夢なのでみゅ!!」


「親はなんて?」


「言ってないでみゅ!! 一人で来たでみゅ!!」


 ほらやっぱり。

 家出少女じゃん。

 面倒事持ち込んできそうじゃん。


「ウェスタ、知ってた?」


「知らなかった……」


 知っとけよ友達なら。

 いやいや、だったらお引き取り願いたいんですけど。

 心配だからとか、親の気持ちを考えてとかじゃなくて、俺は可能な限り楽に、効率よくギルドマスターになりたいんだよ。


 児童保育施設をやるつもりも、子育て相談室をやるつもりもない。


 しかし、どう家に返すか。

 仲間に入れなかったら泣き出しそうだし、下手したら一人で危険なクエスト挑みそうだしなー。

 あとから監督責任問われたくはない。

 深々とため息をつく俺に、サウムが話しかけてきた。


「一先ず、この子に付き合ってみてはいかがですの? 満足するなり飽きるなりすれば、家が恋しくなりますわ」


「さすが女なだけあって、子供の扱いを心得ているな」


「なんという女性差別! でもわたくしになら、オッケーですわ♡」


 ならいいじゃん。

 まあ、サウムの言うことも一理あるか。

 しょうがない、アップちゃんを連れて無敵無敵ムテキングスライムにリベンジしてみるか。


 そう思い立ち、受付嬢のもとへ向かおうとしたとき、


「ん? また視線……」


 ウェスタが周囲を見渡した。


「気持ち悪いなー。誰が見てるんだろ」


「ウェスタのファンがストーカーしてるんだろ」


「どうにかしてよ、セント」


「やだよ、俺には関係ない」


「なんと冷たいこと。別にいいけど」


 クエスト終わったらどうにかしてやるよ。

 とにかくいまは、ムテキングスライム狩りだ。


「アップちゃん、武器の準備は大丈夫か?」


「仲間にいれてくれるんでみゅ!? やったーー!! 急いで宿から取ってきまみゅ!!」


 こうして、アップちゃんがパーティーに……とりあえず加わった。

 研修生として、ね。

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