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説得

途中からサウム視点です

 クマ退治をした日の夜、宿の部屋にサウムを呼び出した。

 サウムはなんだかそわそわしていて、心なしか顔が赤い。

 セックスをするとでも思っているのか?


「ついに、この日が来ましたわね」


「サウムは、どうして俺が好きなんだっけ?」


「わたくしより強いからですわ! それに、セント様は優しく、頭もいいですもの」


「ふーん。嬉しいな、サウムみたいな美人に褒められて」


「あーん♡ 今日のセント様って大胆ですわ♡」


 この様子じゃあ、俺への忠誠心はそうとうなものだ。

 なら本題に入っても問題だろう。


「俺の言うこと、なんでも聞けるか?」


「もちろんですわ」


「ならさ、ウェスタを殺すの協力してくれよ」


「……は?」


「邪魔なんだ。ていうかもういらない。穏便にパーティーから消したい」


 サウムの瞳孔が開いている。

 さすがに素直に受け入れられないのだろう、夢や幻なんじゃないかと、半笑いを浮かべている。


「協力って言っても、なにもしなくてい。本当に、なにもするな。こっちで上手くやる。お前は雰囲気を察して、邪魔さえしなければそれでいい。今日のクマ退治のときみたいな」


「ほ、本気で言ってますの?」


「本気だよ。ウェスタを殺したら、俺はお前を一生愛す。結婚しよう」


 なにも言い返してこない。

 まだ飲み込めていないのか、グズめ。


「あの、わたくし……」


 強引に、サウムをベッドに押し倒す。

 軽くキスをしてやって、耳元で囁いた。


「こんなこと、俺だってしたくないんだ。俺が好きなら、俺の辛さを理解して、協力してくれ、頼む」


 泣く演技をしてやると、サウムはようやくマトモに喋り出した。


「き、きっとわたくしはわからない深い理由があるですわよね」


「あぁ」


「わ、わかりましたわ!」


「ありがとうサウム。愛してる」


 もう一度キスしてやると、サウムは起き上がった。


「今日は自分の部屋で寝ますわね。キスで満足しちゃいましたの」


「そうか」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 自室に戻った直後、わたくしの体はいままでにないほど震え、立っていることさえ困難になってしまいました。


「違う、あれは、セント様じゃない!」


 記憶を失って、やはりセント様は変わってしまった。

 でもどうすればいいのでしょう。どうすれば、あの優しいセント様に戻ってくれるのでしょう。


 賢者の書、これを消滅させれば、セント様は記憶を取り戻すのでしょうか。

 書は現在、スーノさんが所持しています。

 いますぐにでも彼に会いに……。

 ドアノブに手をかけた瞬間、なにかとてつもなく、嫌な予感がしました。


 もし、裏切る素振りを見せたら、セント様はわたくしのことも……。


 そのときです、ドアの向こうから、セント様の声がしました。


「サウム、調べたんだけど、悪魔との契約はこっちが一方的に破棄できるみたいだな。そうなったらお前は、無差別に人間の生気を吸わなくちゃあこの世界にはいられない。また、お尋ね者になるな」


「……」


「そのときはスーノには内緒で、イステと二人で討伐しにいってやるよ。ははは!!」


「……あの!」


「余計な真似はするなよ」


 セント様の足音が遠ざかっていきます。

 わたくしはいったい、どうすれば……。

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