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パニック関連

漂流している宇宙船の中における人間模様

作者: よぎそーと
掲載日:2022/09/24

 星から星を渡る旅客宇宙船。

 様々な理由で宇宙を渡る者達をのせたそれは、突然遠く離れた宇宙まで転移した。



 偶発的な事故だった。

 空間のゆがみを感知したと思った瞬間に、全く見知らぬ場所に移動していた。

 すぐに座標を調べるべく機械が計算を始める。

 星の位置を見て、現在地を特定していく。



 その結果、旅客宇宙船は地球圏を遠く離れた場所にいる事が分かった。

 帰還するのは事実上不可能。

 宇宙船だけならば到達するだろうが、それも何千年・何万年、あるいはそれ以上も先になる。

 中に乗ってる者達は、当然死に絶えてからになる。



 それが判明した事で、乗客の多くは絶望した。

 どこにも帰れないのが分かったからだ。

 不時着できる場所もあるか分からない。

 残った酸素と食料を食い潰す事になる。

 それらが無くなる前に、せめて居住可能な星でも見つかれば良いのだが。



 雁に見つかったとしても、生き残る事が出来るかどうか。

 この旅客宇宙船は植民移住船ではない。

 星の環境改造、いわゆる地球化改造などに必要な機材は無い。

 その他、開拓に必要な物資や機材もない。

 遭難した時のために食料や酸素などをつんではいる。

 最寄りの星に降りるための降下艇もある。

 しかし、本格的な植民・開拓は出来ない。



 もし、仮に居住可能な星に到着したとしてもだ。

 そこから再び文明を回復させる事は難しい。

 やるとなったら、石器時代からやり直す事になるだろう。



 それでも、落ち着ける場所があるならまだ良い。

 もし、そういう星が見つからなかったら。

 その時は宇宙船の中で全員が人生を終える事になる。

 宇宙をさまよいながら。



 ここで今後どうするかを決める事となった。

 石器時代からやりなおすにしても、居住できる星を見つけてそこで暮らすか。

 滅多に無いその星を探すのを諦め、遺体だけでも帰還できるよう、地球に向けて進路をとるか。

 嫌な選択肢である。

 だが、現状選べるのはこれしかない。



 一応、観測できる範囲で居住可能な星があるか調べてみた。

 探査船ではないので、それほど広範囲を調べる事は出来ない。

 精度も下がってしまう。

 それによれば、残念ながら、見渡せる範囲に適した星は無いという事になった。



 ただ、居住可能な星がある可能性の高い場所はある程度予想できた。

 それが地球とは反対側にあるのが悩みどころだった。



 ここでやはり紛糾する。

 少しでも地球側に向かった方が良いという者達と。

 そちらの方面にも進んでいけば居住可能な星があるかもしれないとも言う。

 僅かな望みであっても、居住可能な星のある方を目指そうという者達で。

 確実とは言えないが、確率の高い方を選ぼうと。



 結局は、地球から離れても居住可能な星を目指そうという事になった。

 どうせ駄目でも、その時に地球方面に進路をとればいい。

 そうなる前に、着陸できる星が見つかれば儲けものと考えて。



 しかし、それで紛糾が終わるわけもなかった。

 備蓄はあっても、空気も食料も制限がある。

 それを乗客全員で分けていったら、消耗も早くなる。

 出来れば口減らしを、間引きをしようと考える者も出て来る。

 自分の取り分を少しでも確保するために。



 少しずつ争いが始まっていく。

 老人や子供から食料を奪ったり。

 船内で少しでも広い自室などを確保しようとしたり。

 あの手この手で自分の有利になるようにしようという者が出て来る。

 それに追従して美味い汁を吸おうとする者も。



 そうした動きに対抗するために戦う者達も出てくる。

 特に船長は船内の治安維持も任される立場だ。

 不毛な争いを起こす者を取り締まる、場合によっては殺害しなくてはならない。

 警察などにたよる事が出来ない宇宙船の中だ。

 その安全と治安を預かるのも船長の仕事だ。



 対立はすぐに激化していった。

 最初は不穏分子の逮捕・隔離・拘束に留めようとしていたが。

 問題を起こす輩に分ける空気と食料がもったいないとう話にもなる。

 そうなると、そこまでする必要はないと、問題を起こした者を擁護する者も出て来る。

 騒動は激化を辿り、収拾がつかなくなる。



 そして、何かをきっかけとして殺し合いに発展していった。

 船内の乗員が様々な派閥に分かれて殺し合っていった。



 それは最後の数人になるまで続いた。

 生き残りは何の因果か、ほとんどが高齢者だった。



 船内の状況がそうなった頃。

 旅客宇宙船は居住可能な星を見つけた。

 向かってみると、地球型の星にたどり着いた。

 無人機による調査を行い、それから降下艇で生存者は地上におりた。

 久しぶりに青い空と海、植物生い茂る緑の大地を目にした。



 だが、生き残りの絶望感は大きい。

 残ってるのは高齢者。

 もう子供をもうける事も出来ない年齢だ。

 例え居住可能な星に着いても、種族の存続ははかれない。



「終わりだな」

 ぽつりとこぼれた一言が、その場にいた全員の気持ちをあらわしていた。



 それでも生存者はその星で余生を過ごした。

 残った食料は寿命が来るまでの期間をまかなうのに充分な量だった。

 それらを消費しながら、無為な日々を生存者は過ごしていった。



 その最後。

 生存者の最後の一人は、旅客宇宙船に戻り地球へとむかっていった。

 生きてたどり着くとは思ってない。

 だが、やはり望郷の念が頭をもたげてきた。

 たとえ少しでも故郷の近くにいきたいと。

 遺体だけでも地球に戻りたいと思った。



 そんな彼は、宇宙船で起こったことの記録を地球に向けて送信していった。

 受信されるかどうかも分からないが、念のためだ。

 宇宙船にも記録はあるので、地球にたどりつけばそれらは伝わる。

 それでも、少しでも早く情報がわたるようにした。

 愚行を伝える事で教訓になるように。



 そんな宇宙船の中で、最後の一人は人生を終えた。

 その遺体は数万年の時を経て地球圏へと帰還した。

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