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少し前のこと。



時間は少し遡る。


日がようやく昇った頃。


今日もボールド王国王都の城壁の上では、


兵士が夜の巡回警備を終え、

伸びをしながら空を眺め、

交代はまだかと待っていた。



そんな時、

空の彼方にポツンとした点を

見つけた。


最初は見間違いかと

思って目を凝らしていたが、

どうやらおおきくなって、近づいてくる。


これは、何かヤバイものかもしれないと、


兵士は上官に報告するため、

すぐに走った。


上官も最初は兵士の言にいぶかしむが、

何かあってからでは責任問題になることを恐れ、

すぐにその場所に向かう。


兵士と共にその場所に向かいながらも、明らかにその方角から

何かが飛行してくるのがわかった。


すごいスピードでだ。


すぐにその上官は部下達に指示を出す。


警戒体制。正体が確認出来るまで待機。


魔物の襲撃の場合はすぐに応援要請の狼煙。


などなど、指示を出す。


やがて、それは綺麗な長い銀のたてがみをたなびかせ、頭に立派な1本の角を生やして軽やかに疾駆する白馬だということが見て取れた。



馬上には誰も騎乗してはいない。


ユニコーンの魔物だと騒ぐ部下達を静める上官。



その兵士の上官は聞いたことがあった。



ユニコーンの魔物と神獣麒麟を間違えて攻撃してしまった小国が


一撃で都市を壊滅に追い込まれたという話をだ。


神の使いである神使に攻撃するということは神に弓引くということである。


だから、上官は慎重になる。


やはり麒麟様かもしれない。


部下達に先制の攻撃を禁じ、

麒麟様の可能性を伝達させる。


みるみるうちに近づいてきた

その白馬の神々しさ美しさに上官は息を飲んでいた。



兵士に揺さぶられて、気を取り戻す。


やるべき仕事をするべく

気を奮い立たせ、白馬に尋ねる


「恐れ多くも申し上げます。

麒麟様でいらっしゃいますか」


「はい。私は神使の麒麟です。魔物ではないので攻撃はしないでください。」


その言葉を聞くや、

兵士達はざわざわとし、

これは大変だと、騒ぎ始めた。


話をした上官より、上の上官が騒ぎを聞き更に騒ぎだし、

王宮に連絡すべく動き出す。


更に城門にも伝令が出され、

朝の静けさはどこへやら、

半ばパニックになりそうな勢いだ。


それを見ていた麒麟ははぁ、

とため息を一つ吐き、


「用事があるので行きます。」


とだけ言うと、降下を始め、

地面のまだらな草地に降り立った。



降り立つと同時に人間の姿へと変わる。


おおっ。と覗きこんでいる兵士達から歓声があがる。


そして、門のある麒麟から見て左手側の城壁角の方角に歩き始めた。


やがて兵士達から、城壁端の奥に消える麒麟の姿があった。



麒麟は兵士から姿が見えなくなると、

念話をした。


自分の主に到着したと伝える為だ。


瞬く間に姿を現す青髪の女神


あまり行きたくないのか、

ごねている様子。


そんな女神を麒麟がなんとか

宥めすかして、門へと向かう。


この世界。

なぜか女神より麒麟のほうが

知名度が高い。


女神がほとんど正体を表さず、

表にでないかわりに、

麒麟が神託を協会に伝え、

神事を行っているからだ。


大多数からしてみれば、

いるかわからない女神より、

実際に見えて、触れられる麒麟。


天罰という名の実害のほうが

怖いのだろう


何とも、人間らしいといえば

人間らしい現金さである。


とにもかくにもこの世界


女神を見ても、女神と認識するものはあまりいない。


一応女神像なるものは、

あるものの、

大抵こういうものは美化されて

実物とは相反するものである。


女神自身もあまり気にしていない。


なぜか胸囲だけは気にして、

あれこれ注文しているようだが・・・。



かくして、まな板・・

ゴホン。。失礼。。駄女神が・・


あ。これもダメ?

えーい。めんどい。

言論の自由を主張します!


誰に話してるかはさておき。


女神が姿形を変えて出歩いていることもあり、


正確に容姿を把握しているものは

すごく少ないのである。




門にたどり着いた麒麟と女神。


麒麟は女神の正体を隠すことにした。

女神ではなく、従者とした。

全てはこれからの目的の

円滑な遂行のためである。


麒麟と会話した門兵は、

上官を呼ぶ。


その上官は馬車を用意する

といったが、麒麟はお構いなく

と言い、町の中へすたすたと

歩きだしてしまった。


叱責されるのでと、

止めるのもまったく意に介さず、

聞かずに歩いてしまい。


数歩もいくと、

まるで誰もいなかったように

スッと消えてしまった。


上官はただただ呆然とするばかりに

その光景を見ていたが、


はっと、叱責の懸念に気付き、

急いで王宮へと伝令を飛ばすことにした。


同時に教会へも人をやった。



門兵を振り切った女神と麒麟は、

物見遊山気分の女神を麒麟が何度となくひっぱりながら、

一路貴族街を目指していた。


町中で、ときおり老人などが麒麟を見かけ、

説法などで見たことがあるのだろうか、膝まづいて拝み始めたりした。


その度に麒麟達は道を変え、

騒ぎにならないようにしていたのだが、


何回か繰り返しているうちに

町中の人々がまだ朝も早いのに

追いかけてくるようになってしまった。


そうなってしまえば、あとは早いもので、

瞬く間に何だ何だとやじうまが増え、

道を変えてもひとひと、また人。。


人が人を呼び、後をついてくる。


何も知らない人が見れば、

反乱かと見違えるくらいの

人の群れである。


さしもの麒麟も、

この王都の人の多さに面食らうも

どうすることも出来ない。


それだけ麒麟の存在が貴い存在であり、目にできただけでも奇跡とも言われている。


巷では、一度目に出来れば幸運が訪れ、

その声が聞ければ生涯安泰、一族繁栄が訪れ、約束されるといわれている。。


真実がどうかは都市伝説の域をでないのだが。


女神の信仰がそれだけ深いとも

言えるかもしれない。。


ともかくこちらから危害を加えるつもりもなく、

また加えてくる者もいないので

麒麟達は諦めてそのまま進行することにした。


女神に聞くところによれば、

バルドニア子爵家に目的の人物はいるらしい。


女神に居場所を聞くも埒が明かないので、


これ幸いと周りに群がる民衆たちに

都度聞くことにする。


そして、どんどん膨れ上がる民衆達と共に

バルドニア子爵家に辿り着くのであった。


その数は、今や五千を越え、

一万に届こうかという勢いである。


そして麒麟はバルドニア子爵家の門番に話してかけた。


だが民衆の声が邪魔して

うまく伝わらない。


更に門番自体が突如現れ、

近づいてきた群衆に言葉を失い

自失している。


仕方ないので、麒麟は群衆に向き直る。


両手を振りかざすと


おおっ!と歓声があがる。


それを静止、大きな声で


「静粛に!」


と言った。


そして、手をそのまま降ろしたのだが、


跪けと勘違いしたのか前の人が

跪くと前からまるで波のように群衆が跪いていく。


一瞬、ん?と自分の手を見て、

焦る麒麟だが、すぐに理解して、

とにかく静かになったので、

放置することにしたようだ。


門番に自分は神使であり、

取り次いでもらうようにと言った。


中から喧騒を聞き付けた

下男らしき男が出てくると、


ちょうどその言葉を聞き、

取り次いで来ます。お待ち下さい。

と大声で叫び、なにやら叫びながら

走り去って行った。


主人を呼ぶ大声が聞こえる。



そして、すぐに戻ってきた下男の男に先導され、

門を潜り抜け家に向かうのだった。


家の入り口に入るとすぐに女神が

何かを感じとり、スーパーダッシュして

いった。


二階に上がり赤ん坊に土下座するのは

このすぐ後のことである。







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