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インストール!ブラストナイト!

 光が鎧へと変化し、二人の身体に次々と装着される。

 真梨奈は青い結晶のような角ばったヘルメット、ゆかりと違い長いスカート型のドレスアーマーを纏った重装甲のスーツを着ている。そして琉斗は炎を彷彿とさせる赤いよりヒーローめいたボディースーツを纏い、首からは橙色のマフラーが伸びていた。


「…………おぉ」


 思わず見惚れる光司。彼も男だ、昔は子供向けの特撮ヒーローを見て楽しんでいた。そんな少年心をくすぐるようなヒーローがそこにいる。

 本当にテレビの中いにるような錯覚さえしてしまいそうだ。


「嘘……? マスター、どうなってるんですか?」


「俺にもわからん! 少なくともあの二人が今覚醒し、社長がギアを渡した。それだけだ」


 混乱しつつも状況を把握しようとする。だが光司達以上に驚いているのは当人達だ。

 真梨奈も琉斗も自分の姿に困惑している。端から見ればコスプレにも見える奇抜な格好。しかしその姿は特撮番組に出てくるヒーローそのものだ。


「真梨奈、これ……」


「私に聞かれてもわかんないって。だけど!」


 力が沸いてくる。これならやれると身体が教えてくれる。戦える、守れると。


「やれるって気がする。あいつらをぶちのめせるって」


「ああ、そうだな!」


 アドレナリンでテンションがおかしくなったのか、気合いは充分。全身を駆け巡る力が二人の背を押す。

 走り出す赤と青の戦士。先手を取ったのは真梨奈だ。


「こんの……」


 腕に再び氷を纏う。大きな手甲が腕を倍以上に肥大化させた。


「くらえっ!」


 脳天から叩き潰す。一撃で潰され拳が地面を殴り衝撃が波打つ。そして潰れた怪人は氷の塊の中に包まれた。


「砕けろ!」


 蹴り上げ宙を浮かぶ氷塊を回し蹴りで粉砕。氷の破片が周囲に散らばる。

 光を反射しキラキラと輝き、真梨奈の姿をより煌びやかに彩る。

 一方琉斗も昂る心のままに走った。身体が熱い。その熱意を本能がままに拳に集める。

 手の平に灯った火を握ると拳から炎が吹き出す。それはまさに炎の剣だ。


「いっけぇ!」


 大きく振るう熱の塊は紙の身体を一瞬で焼き切り真っ二つに。抵抗すら許しはしない一撃必殺。更に切り口から火が燃え広がり、瞬く間に灰と化した。

 黒い燃えかすが宙を舞い、熱に空気が歪む。そこにたたずむ琉斗の姿に光司すら息を飲んだ。


「よし!」


 やれる。戦える。今まで感じた事の無い力がこの手の中にある。

 本能のままに、無意識ながらも力を存分に振るう。まるで今までずっと使っていたかのように、自分の手足のように。


「……マジかよ」


 二人の様子に光司も言葉を失う。初見で超能力を使う事が、コントロールするのがどれだけ難しいか彼自身もよく知っている。

 適応力が高いなんてレベルじゃない。才能だ。天才と呼ぶに相応しい。

 最早ショーだ。紙の怪人達はいとも簡単に凪払われ、消し炭と氷の破片へと次々と姿を変えていく。ヒーローが雑魚敵の群を蹴散らすように。無双し魅せるように戦う手を止めない。

 二人の戦いを茜は驚き、紗奈は楽しそうに見ている。いや、正確には喜んでいる。更に紗奈の隣では山崎がスマホで撮影し、新しい英雄の誕生を記録していた。


「結局こうなるのかよ。社長さんの狙い通りか」


 光司は半ば諦めたように心の中でため息をつく。

 見覚えのある、デジャブを感じる光景だ。今まで出会った()()()のように力を使いこなし活躍する。他の超能力者達とは格が違う存在だ。

 やはり保村琉斗が主人公だった。光司の嫌な予感は的中していたのだ。

 転校生が超能力者でいきなりラッキースケベをかます。()()幼なじみが好意を持ってなくとも今後の活躍でハートを射止めるだろう。こんな環境が整えられた少年が主人公である事は疑いようがない。

 もはやこの戦いすら茶番劇だ。琉斗が炎の剣を振る度に怪人達は簡単に燃え尽きていく。

 だがこのまま指を咥えて見ている事はできない。光司とゆかりも我に返り戦闘に戻る。

 そこから先は一方的な蹂躙だ。辛うじて数で優位に立っていただけの烏合の衆が、あっという間に減っていく。

 だけども敵は撤退する素振りすら見せずに愚直に戦いを挑む。まるで心の無い機械のように。

 もう打ち止めなのだろうか。怪人は残り一体にまで減っていた。


「真梨奈、こいつで最後だ」


「うん」


 真梨奈が頷き二人が同時に飛び出す。もう誰にも止められない。


「破っ!」


 懐に潜り込み鳩尾を殴る。一瞬柔らかく殴った感覚が無かったが、触れた場所から凍り付き固定。上空へと打ち上げる。


「琉斗!」


「任せろ!」


 マフラーから炎を噴射し空高く飛び上がる琉斗。空中で一回転し右足を突き出す。


「とどめだ!」


 業火の飛び蹴りが氷の塊を蹴り砕いた。バラバラになった破片は一瞬で蒸発、湯気の塊となって消えていく。

 湯気の中から飛び出し着地。その姿に光司は思わず見惚れる。本当にヒーローのような姿、立ち振舞いに憧れすら感じる程だ。

 だがそれと同時に不安もあった。今この瞬間は大きな事件の前触れなのではないかと。

 そしてこの空気を読まない人物が一人いる。


「いやはや素晴らしい! 想像以上ですよブラストナイト・ブレイズ、そしてアイス」


 紗奈が拍手しながら歩み寄る。後ろには山崎が相変わらずの無表情で付き添う。


「一先ずは私達と一緒に来てもらいたい。この状況を二人も説明してもらいたいでしょ? さっきの喫茶店で、コーヒーでも飲みながらねぇ……ヒーローメーカー?」


 光司に確認するように聞くも嫌らしい言い方だ。


「はいはい。ったく……」


 彼女の手の中で踊らされているような気分だった。それでも文句は言わず真梨奈達を案内する。何より二人への説明と現状の整理は光司にとっても望ましいからだ。

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