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腕試しなのか?

 唖然とする光司に説明するように、天井に備え付けられたスピーカーから紗奈の声が響く。


『どうですか若林さん。これが我々が開発したブラストギア、それを纏ったブラストナイトです』


 自信満々といったとこだろう。声色が興奮しているように弾んでいる。


『装着者の遺伝子を読み取り強化スーツを形成。超能力に最適な装備を造り出す変身デバイス。身体能力の補助に防護、まさにヒーロースーツに相応しい性能をしています』


「へぇ。確かに特撮番組に出てきそうな見た目だ。これなら世間はヒーロー扱いしてくれるだろうな。しっかし、装着者の遺伝子って事は、使う人によってデザインも細かい性能も違うって事か。こりゃ、すごい」


『ありがとう。それと、言っておきますがブラストナイトの防具は()()()です。この意味は解りますね?』


「ちっ。一番嫌だな」


 光司の能力なら金属製の武器、防具を即座に解体可能だ。金属を操る力、それなら武器、防具だけでなく乗り物も意のままに操れる。金属の道具は敵ではなく味方なのだ。

 だが紗奈の言葉を信じるならあれに干渉するのは不可能。直接力をぶつけ合うしかない。


『さて、ここからは実際に体験してみましょう。九重さん……ウインド、テストを始めてください』


「了解」


 それを合図にゆかりの手足の装甲が変形し隙間ができる。すると空気が揺れ小さな風の音が響く。


「来い。先輩嘗めんなよ」


「覚悟しろ」


 飛んだ。一直線に、光司の方まで。勢いのまま繰り出された跳び蹴りは、銃弾のようなスピードと威圧感がある。


「危っ!」


 間一髪で反応し身体を反らして回避。突風が光司の身体を掠める。

 回避されたのを知るや床を滑りながら着地し、ゆかりは即座に右手の指を光司に向ける。しかしその瞬間に指先の空気が揺らいだのを見逃しはしなかった。


「そういう事か」


 腕の包帯が蠢き盾を造り出す。それを構えた瞬間、重たい衝撃が走った。

 彼女の動き、そして目に見えない衝撃波、さらにこの空気の振動。光司はゆかりの力を把握した。


「っ……。お嬢ちゃん、能力は風だな? 直接ぶつけたり、蹴りも噴射で加速したって訳だ」


「そうだ」


「あっさり答えたな」


「隠す必要もないからね。それにボクはお前の力を社長から聞いている。これでフェアだ」


「そりゃありがたい事……で!?」


 言い終わるよりも先にゆかりの拳が目の前に届く。ぎりぎり防ぐも彼女は攻撃の手を休めない。

 紗奈の言う通り、ゆかりは相応しい実力とビジュアルがあった。

 衝撃波と手足からの噴射による加速による突撃。回避しても慣性の法則を無視するように風で強引に方向転換。一撃離脱を中心にしながらも立ち止まって連撃を織り混ぜる格闘技術。

 銃弾のような跳び蹴りで飛び回ったかと思えば、接近し的確に急所を狙う拳、更に離れて衝撃波を射つ。まるで踊っているようだ。

 光司は両手に盾を造り捌き一撃も貰っていない。だが一方的に圧されているようにも見える。そしてゆかりも決め手を欠けていた。

 ゆかりの攻撃には光司の盾を破壊する威力が無いのだ。

 二人は距離を取り睨みあう。


「流石、強者の影に隠れるだけはある。少しはできるみたいだね」


「そりゃどうも。けど、お嬢ちゃんも火力不足は否めないんじゃないか?」


「当たり前だよ。一応これは訓練だからね。致死性のある本気はしない。あんたは嫌いだけど怪我させるのは違うでしょ。それにボクの力は人を傷つける力じゃない、悪人を取り押さえみんなを守る力だ」


 内心感心した。少なくとも彼女は感情任せに力を振るうようなタイプじゃない。日常生活でも自分をコントロールしているのだろう。

 実際力と感情をコントロールできない超能力者は多い。そういった超能力者が事件を起こす。だがゆかりは違う。だからこそ選ばれたのだろう。


「そうか。よし、全力で来い。本気を見せてみろ」


「何のつもりだい?」


「時には破壊する力も必要って事だ。ああ、それとも俺に負けた時の言い訳にするつもりか?」


 子供っぽい挑発だと自分でも思っている。こんな事をもして乗る可能性は低いが、彼女の全力を知る必要がある。だから誘った。

 ゆかりも構えたまま考えるように立ち止まる。その思考を光司は読めないが、少なくとも彼女は挑発に反応している。

 一瞬、ちらりと紗奈の方を見た。まるで指示を仰ぐように。


「良いよ。確かにこのままだとジリ貧だし、無駄な時間を過ごしたくないね」


 紗奈が小さく頷いたのを見るや拳を握る。


「お望み通り、ボクの本気を見せてあげるよ」


 大きく深呼吸をすると周囲の空気が歪む。空気がゆかりの方へと吸い寄せられていくのを感じる。

 震える右腕を引いた時光司は直感した。来ると。


「っ!」


 両手の盾を粘土のように混ぜ合わせ大きな一枚の盾を作る。下部にはスパイクがあり、床に引っ掻け固定。更に足に巻かれた包帯が変形しアンカーを打ち付け身構えた。


「ぶっ飛べ!」


 拳を突き出すと腕を中心に風が巻き起こり、一直線に風が……いや、竜巻が襲い掛かる。


(でか……)


 光司を丸飲みするような巨大な渦、風の暴力、大自然の牙に押し潰されそうになる。身体を固定しなければ吹き飛ばされていただろう。

 しかし盾を削りながらジリジリと破壊の突風が光司に迫る。


「う……ぐっ」


 少しでも気を抜くと倒れそうだ。必死に耐えているも、あと数秒で盾も弾かれ身体は宙を舞うだろう。


「茜ちゃん、弁償は経費で落といてくれよ」


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