異世界に行く為に 勉強しよう
タイトルを略して
中 卒 話
異世界に行く為に 勉強しよう
「勉強が大事なのは
異世界に行って 楽する為です!」
僕は 学校行事がきらいだ
別に 学校そのものが嫌いではないけれど
学校行事は 襟を正して 清く正しく美しく
静かに整列して。。。
この辺が 自分に嘘をついているようで
しんどくなってしまう
だからといって
わざとはしゃいだり
仲の良い生徒どうしでお喋りをして
運営側の先生がたに 迷惑をかけることも
幼稚な行動だと考えているので
そのような行動はとらない
眉間に深いシワをよせて
ひたすら時が過ぎるのを待っている
その学校行事も今日が最後
あくまでも 中学生としては
という意味だけれど
今日の 卒業式で しばらくは
学校行事から開放されるはずだ
とりあえず
証書を受け取る順番の過ぎた僕は
席に戻って
姿勢を正しながら 半分 意識を失っていた
死にかけているわけではないよ
目は開いているけれど
こころ ここにあらず
と 言ったほうが正しいのかもしれないけれど
ようは
まどろんで ぼーっとしていた
時折 どこかから聞こえてくる
女子生徒の すすり泣く様な声に意識が向いたり
すぐ怒鳴っていた 体育の男先生が
号泣していて ふふっ と楽しくなる時もあったけれど
待機に耐えられなくなって
お喋りを始めている 男子生徒に イライラする雑念を消すために
再び
まどろむ世界に 意識を飛ばすことにする
が、次の言葉で
僕の意識は 現代の中学校の体育館に呼び戻された
「異世界に行って 楽する為です!」
気がつけば
卒業式の締め
校長先生が 壇上で喋っている時間だった
他の学校はどうだかしらないけれど
この学校の卒業式は校長先生の話のあと
卒業生が退場して おしまい になる
他の学校の校長先生を
詳しく知っているわけではないけれど
この学校の校長先生は変わっている人だと思う
一限 二限の体育の授業には学年やクラスを問わず
ほぼ参加している様な人で
それも 指導者としてではなく
生徒に混じって 参加していた
さぞ体育の先生はやりにくかったことだろうが
かと言って スポーツ大好き
といった 感じはしない
足も遅いし すぐ息切れして苦しそうだし
そのわりに 生徒と同じ量をこなそうと頑張る姿は
少し胸をうたれる
ただ 学生時代は野球部にいた とかで
ボールを投げることは得意だった
ドッジボール大会でもあればヒーローになれたかもしれないけれど
中学生で ドッジボール大会は
さすがになかった
ちょっと小太りで 頭髪は薄くなく白髪もない
歳のわりには若く見えるけれど
イメージする50歳ぐらいのおっちゃん
で
おじいちゃん と呼ぶには 少々若く感じる印象の人
体育の授業で 校長先生の一人称は
「おっちゃん」で体育の先生以外 僕ら生徒も
校長先生のことを「おっちゃん」と呼んでいた
おかげで 生徒の受けは良い校長先生だ
話をもどしますが
完全に意識を失っていたわけではないので
校長先生の言葉を
思い出せるだけ思い出してみる
。。。。。
卒業生のみなさん
なぜ勉強しなくちゃいけないのかって悩んだことありますよね
その答えを見つけ出せた人は
今 目的をもって勉強出来ていることだと思います
しかし
まだ答えを見つけ出せていない人は
悩んで 集中出来なかったり
勉強を拒絶したりしている人もいます
残念な大人の人に
なぜ勉強が必要なのか聞いても
「方程式 とか 因数分解 とか
学校を卒業したら 使わない」
とか言われて その言葉を信じてしまう子もいるとおもいますが
中学生までの学校で習うことは
どの教科も 知らないと損をすることばかりです
方程式 や 因数分解 を使わなくても生きて行けますが
方程式 や 因数分解 を使うと 損をする確率が減ります
効率良く 生きて行けます
これは
損しない為に勉強をしましょうという話で
親や周りの大人に
「勉強しなさい」
って言われたこと ないですかね?
それはね
きっと その大人が
勉強していなかったから損をして
後悔したことがある
だから まだ間に合う
君たち子供に
自分と同じ 損をして 後悔してほしくないから
勉強しなさい
と言ってしまう
これは 優しさ です
でもね
損をしないように 勉強する
って話より
勉強したら 得をする
って話の方が やる気出るよね
だから
今から とっておきの話をします
勉強が大事なのは
異世界に行って 楽する為です!
。。。。
このような話が続いて
ここで僕の意識が目覚めたはず
このセリフのあと
校長先生は ゆっくりと
体育館内の
生徒 教師 PTA 保護者
順番に目線をやり ザワザワしているのが
落ち着くころあいを待って
話の続きが始まるまでに 少し間があった
おかげで
僕は 意識を戻して
記憶をたぐる時間をもらえたわけで
他の生徒も多くが校長先生の話に
意識を向けることになった
。。。。
小説やアニメで
剣と魔法 精霊やモンスターのいる
異世界もの ってあるでしょう
死んで 生まれ変わったり
召喚されたり 迷いこんでしまったり
そんな世界 ある訳ない と思うけど
絶対に無いとは 言い切れない
と 頭の隅っこで 考えている
似たような例で
宇宙人は いる
正しく言うと地球外生命体はいる
これを否定する科学者はいないけど
地球外生命体が すでに地球に来ている
と言う学者はまずいない
つまり
剣と魔法 精霊やモンスターのいる異世界は
存在するかもしれない けれど
そこに行くことは 非常に難しい
小説を書いている人のほぼ全ての人は
妄想や想像を文章にしているはずですが
もしかしたら
一人ぐらい
異世界に行ってきた
見てきた って人が いるのかもしれない
だとしたら
卒業生の皆んなはどう準備をしますか?
私は 異世界ものの小説は 数点しか読んでいないので
詳しく知っている訳ではないですが
死んで生まれ代わって異世界に行く場合
召喚されたり迷いこんで異世界に行く場合
どちらも
今の世界で 計画をもって異世界に行けるケースは
極めて少ない
むしろ
急なタイミング 不意に なんの装備もなく
異世界に行ってしまうケースが多いです。
ここで
小説で語られている
異世界について ちょっと分析してみますが
大きく2つに分けることが出来ると考えています
魔法や精霊 モンスターなど
今の世界には存在しない「もの」が 存在する
ほぼ全ての異世界がこのケースに該当しますが
ここから 2つに分けられて
こちらの世界で身につけた 知識や技能をつかって
それなりに努力して生きて行く場合がまず一つ
もう一つは
強さのレベル経験値 や 特殊能力のスキルなどが
パラメータで表示される まるでゲームの中の場合です
このゲーム型の異世界は
まず レベルやパラメータがある時点で現実味がなく
こちらの世界観と異なりすぎる為
ゲーム型異世界が存在する可能性は
極めて低い もしくは かなり遠くに位置する異世界として
たどり着ける可能性が ほぼ無い と思います
もし この様な異世界に行ったとしたら
レベルやパラメータを管理する
一つの世界を管理することができる何者かに閉じ込められた
と考えた方が良いかもしれません
もしくは
異世界に転生した と思っているだけで
実は病院のベッドで意識を失って 想像の世界に囚われているだけ
なのかもしません
なので
ゲーム型の異世界には 行くことが出来ない
と言う前提で 今から異世界の話を始めます
異世界に行っても なんの努力もしない人は生きていけませんし
のんびり生きるついでに 弱いモンスターを何匹倒しても
それは 弱いモンスターを倒す経験しか得られません
経験値という 数字で管理されていない世界では
最弱のモンスターを何百年倒しつづけても
最弱より少し強いだけです
念のために
私は ゲーム型の異世界 小説 を批判している訳ではありません
ゲーム型の異世界小説は 面白い作品がたくさんあります
面白いです
ですが
今は この卒業生が
異世界に行けてしまった時の対策を話しています
可能性の低い
ゲーム型の異世界についての対策を割愛させていただいているだけ
ですので どうかご理解いただきたい
何人かの 冷たい視線と
引かれている方々の空気は察しておりますが
卒業生の万が一の事態にそなえ
少しでも 無事でいてもらう為に 話をつづけます
あと
異世界に行って スライムに出会ったら逃げてください
スライムは最強モンスターの一角です
強いのです
何年か前に
金色の鎧をまとった勇敢な騎士が
囚われの姫を助ける為に登った塔のゲームで
初めに現れる弱いモンスターとしてスライムを登場させたことで
スライムが弱いと勘違いしている人が多いですが
スライムはダンジョン(地下迷宮)では
ドラゴンを遥かにしのぐ 最強のモンスターです
また ダンジョンという言葉も
日本語では 地下迷宮 や 洞窟 という意味で使いますが
海外では 城の地下や砦の牢獄 という意味で使う場合が多いです
ただし 最近では
日本のサブカルチャーに詳しい人には
迷宮としての意味が通じる場合が増えています
つまりですね
こちらの世界の中でも ダンジョンという言葉が通じないので
異世界に行けたとして 言葉が通じるとは限りません
むしろ
今のこちらの世界ですら 船で大陸に渡っただけで
言葉が通じなくなります
異世界に言ったら言葉が通じるはずがない
と考えていた方がいいです
そして
ゲームやアニメだけで仕入れた
間違った情報をもとに行動すれば すぐに死が待っています
だから 今の内にきちんと勉強してほしいのです
日本語と英語は 言語の順番が大きくことなります
しかし 世界の。。。
おっと失礼 こちらの世界 での言語は
この二つの言語の仕組みを理解していれば
あとは 単語を覚えるだけで なんとか言葉が通じるようになります
もちろん 簡単なことではありませんが
言葉を理解できる可能性は高くなります
異世界で言葉が通じないとしても
今の内に 日本語と英語の基礎を押さえておけば
なんとかなる かもしれない
もし異世界が 魔法が発達しすぎて
科学が遅れていたのならば 中学生までの理科の知識ですら
一躍 英雄に慣れるかもしれない
もし異世界が 文化の発達が遅れている
政治の未成熟の世界ならば 中学生までの社会の知識で
今後の情勢が予測できるかもしれない
もし異世界が 経済が未熟だとしたら
方程式を知っているだけで 効率の良い商売ができるかもしれない
ここまで話して 気が付いた人もいるかもしれませんね
もし異世界が 今のこちらの世界より
すべてにおいて進んだ世界だったら
中学生までの勉強が 何も役に立たないかもしれないじゃないか?
ってね
あれ?
だれもそんなこと考えていませんでしたか?
もしくは 私の話に全然興味がなくて 聞いていないとか?
まあ 校長という立場は
壇上で聞き流される話をしつづけることには慣れていますので
さらに 異世界の話をつづけますが
小説でも異世界が未来都市のケースって見ないですよね
私も今のところ 異世界に行ったら未来都市だった
って話はまだ読んだことがありません
異世界と思ったら
滅んだ未来の地球だった って話は昔からありますけど
猿の惑星 とかね
探し回れば
異世界が未来都市の様なこちらの世界より進んでいる場合の話もあるでしょうが
タイムマシーンの理論を踏まえても
異世界が こちらの世界より文明が進んでいる可能性は低いんです
タイムマシーンの理論も 中学生までの理科と社会と数学で説明できますが
長くなりますので タイムマシーンの話は
また来年の卒業式にでも話そうとおもいますので
おいといて
異世界に行けたとしても
持っていけるものは
知識と教養だけの可能性が高い
ってことは 忘れないでほしいんです
スマホがあれば なんでも調べられるし
計算だってできる 翻訳もある程度できる
スマホがあれば 勉強なんてしなくていい
そんな気がしますよね
でも
そのスマホを異世界に持っていける可能性は
極めて低いし スマホを持っていけたとしても
こちらの世界のネットにつながる可能性はもっと低いと考えます
異世界ではスマホが使えないと考えましょう
小説の話ですが
異世界に転生した少年が魔法の構造を解析して
詠唱を組み換え より効率よく魔法を発動する
という話を読んで
この少年の作業は 因数分解を利用しているな
と感じましたし
その少年は 方程式を利用して 簡単な商売をして
自分の目標の為にお金を稼ぐこともしていました
この話も
中学生までの勉強で
方程式と因数分解を 読む人間が理解していないと
ただ賢い少年が
異世界で賢く生きているようにしか 読み取れないのかもしれません
なんてことはなく
この少年は 簡単な教養をうまく利用していただけ
ちなみに
この少年は こちらの世界では 中年のおっさんでした
凄く難し勉強をしましょう
と言っている訳ではないんです
中学生までの勉強は ほとんど 基礎 でできています
このぐらいのことは知っておいた方がいいですよ
という 程度なんです
きっと異世界にいっても 役に立つはず
勉強とは情報の収集と その情報の利用です
私は スマホやパソコンで集められる
インターネットでの情報の大部分を信用していません
教科書に載っていることにも間違いがある
なんて言う人もいますが
その教科書を提供する学校や 発行している出版社は
間違いがある場合
責任を取るつもりで教科書を生徒に渡しています
この点は
終わったコンテンツなんて言う人もいる TVや新聞も同じです
発信者 発行元が分る場合も
その人達や組織は 間違いがあれば責任を取るつもりです
どこの誰が書いたかのか分からないネットの情報ほど危険なものはありません
まだ
個人情報を平気でさらしている 呟きSNSでの どこかの誰かの方が信用できます
まあ それも
どこかの誰かが判別できないので 危険な情報には変わりないです
今この場の卒業生の中の何人かは
私が言った
「異世界は 絶対に無いとは 言い切れない」
と言う言葉に目を輝かせてくれました
これはですね
人間は信じたくない情報より
信じたい情報を優先して信じてしまうという心理
そして
信じたい情報に反する情報を自ら拒絶してしまい
偏った情報ばかりを集めて正しい結論を導きだしたと
勝手に勘違いした 嘘情報を信じてしまう現象
これを
確証バイアス といいます
先ほど
勉強とは情報の収集と その情報の利用
と言いましたが
いきなり 訂正します
正しい情報の収集 と その情報の正しい利用
と させてもらいます
勉強が嫌いな人はまだ間に合います
いつ異世界に飛ばされてもいいように
もう一度 基礎の勉強をしてみましょう
最後に
中学校とくれべれば 高校は異世界のようなものです
剣と魔法 精霊やモンスターのいる 異世界 と比べれば
簡易な異世界ですが 練習がてら がんばって生きましょう
。。。。
校長先生の話が終わり
不思議な空気の中 僕たち卒業生は
体育館を後にした
校門の近くや グランドの隅で
仲の良い者達があつまって
いくつかのグループが出来ていたけれど
僕は そういった”人溜まり” が とても嫌いなので
何人かに声を掛けられて
肩を組んで写真を撮ったりしてもらったが
めんどくさいので これ以上誰かに呼び止められる前に
こっそり一人で家路につきながら考えていた
こんな話を卒業式でしていて
来年もこの学校に居られるものなのだろうか?
あと
校長先生は
ちゃんとした場所での 一人称は
「おっちゃん」 じゃなくて 「私」 なんだなぁ
筆が遅いので 次回作は 一年後の可能性があります
何はともあれ
中学生は中学生までの勉強を 出来るだけ 頑張った方がいい
おじさんは 勉強しなかったことを後悔している
頑張らないと こんな文章を書いているおじさんになっちゃうよ
でも
全然できないことは あきらめてもいい
その代わり 一つでも得意なことを伸ばしてください
将来が不安だ
と思うことは きっと良いことだ
頭がいいから 先の予測が出来て 不安材料に気が付ける
将来が不安 → それは 賢いから 伸びしろが大きい ってことさ