終話・鬼集院菫
私は、あの頃の夢を見ていた。
◇
~7年前~
今と違って、その頃の私は、極度の人見知りだった。だから私はいつも、近所に住んでいた彼の後ろについてまわっていた。
だけど、彼との別れは突然訪れた… 彼の引っ越しだ。
引っ越し当日、私は、そうくんとお別れをしていた。
「ほ… 本当にいくの… そうくん…」
「ごめんね、すみれちゃん…」
「うえ~~~ん…」
「泣くなって…」
そう言って彼は、頭を撫でてくれる。
彼は、私が泣くと、よく頭を撫でてくれた。
「えへへへへ…」
私は、それが大好きだ。そして、それ以上に、そうくんの事が大好きだ…
だから、私は、思いきって聞いてみた。
「そ… そうくん!!」
「ん、泣き止んだか?」
「う… うん、ごめんね…」
「いいよ。それで、どうしたの?」
「そ… そうくんは、今好きな人とかいるの?」
「好きな人? 別にいないかな?」
「な… なら、どんな人が好きなの!!」
「ん~、明るい子かな?」
明るい子…
「分かった!! 私頑張る!!」
「? 頑張って。」
「もう行くぞ、蒼夜!!」
「分かった。それじゃあ、すみれちゃん、もう行くね。」
「…うん。こ…これ…」
私は、お母さんから教わった、手作りのお守りを渡す。
まぁ、今思い返したら、これを作るのに必死になりすぎて、連絡先を聞くのを忘れていたんだよね。
「くれるのか?」
「うん!! 頑張って作ったの!!」
「ありがとう、すみれちゃん。大切にするね。」
「うん!!」
私は、車が見てなくなるまで、手をふった。
こうして、私は明るい子を目指すため、色々あって気づいたら、アイドルになっていた。
◇
あの日から、蒼夜くんと会えていない…
だけど、私の気持ちは未だに変わっていない。
だから、また会う日を夢見て、自分を磨いている。
ピンポーン
「菫、迎えに来たわよ!!」
田中さんが、迎えにきてくれた。今日は、確かサイン会だったけ。
「今、行きま~す!!」
そのまま、車に乗り込んで、会場にむかった。
彼との運命の再開をするとも知らずに…
◇
サイン会が開始された。休憩を挟みながら、行った。
顔には、ださないように気を付けているが、疲れがたまってきている。
「次の方どうぞ。」
次で最後だ。最後までしっかりやりきろう。
最後の人が来てくれた。
「!?」
似ている… 夢にまで見るあの人に…
「…お名前は、何ですか?」
分からないのなら、聞けばいい。
「そう… いや、圭一で、お願いします。」
圭一… やっぱり違うのだろうか…
「…圭一さんですか? 間違いないですか?」
「? …はい。土が2つの圭に、漢数字の一で、圭一です。」
「…分かりました。」
私は、サラサラと名前を書いて、サインを渡し、握手をしようとする前に、彼… 圭一さんは、サインだけもって、帰っていった。
名前は違うのに、何故か、目でおってしまう。彼は、出口のところで、人とぶつかって、何かを落としていた。彼は、気づかず、帰っていく。気になったのだが、すぐに取りに行けなかった。後で、取りに行くと、そこには、見に覚えのあるお守りが落ちていた。
「こ… これって… まさか…」
あの頃の思い出がフラッシュバックする…
彼はやっぱり…
「菫、次の仕事場にむかうわよ!!」
「…はい。」
すぐにでも、あの人に会いに行きたかったが、仕事があるのでどうしようも出来ない。お守りを、ポケットにしまい、田中さんについていく。
◇
私が車に乗り込むと、田中さんが急に叫びだす。
「貴方は誰で、何の用があってここに来たのか答えなさい!!」
私は、車の後ろから見てみる、あの人だ。
「天宮蒼夜って、言います。今、車に乗っている、鬼集院さんが、お守りを拾ったと聞いたので、もしかしたら、自分の分が落としたお守りではないのか確認しに来ただけです!!」
「…分かりました。今確認するから、そこで待っていて下さい。」
私は、すぐに車を降りる。
「菫、貴方降りてこないように、言ったでしょ!!」
「大丈夫ですよ、田中さん。」
「菫、貴方何を言って…」
「大丈夫です、田中さん!!」
「はぁ~、分かったわ。何かあったら、呼ぶのよ。」
「ありがとうございます、田中さん。」
田中さんは、車に乗り込んで待ってくれる。
「天宮さん、こちらに来ても大丈夫ですよ。」
「…分かりました。」
彼は、ゆっくりとこちらへ来てくれる。
「時間をとってくれて、ありがとうございます。改めて、天宮です。俺からの用件は、拾ったと聞いたお守りが、自分の物か確認しに来ただけです。それが終わったら、すぐ帰ります。」
私は、あのお守りを、ポケットから取り出す。
「これの事ですよね?」
「はい、それです。返して貰っても、いいですか?」
もう間違いない。やっぱり、そうくんだ!!
あの後から、ずっとこのお守りを持っていてくれたんだ…
嬉しく思うと同時に、先程の事を思い出し、つい口走ってしまう。
「…分かりました。ただ、条件があります!!」
「…何でしょうか?」
「わ… 私と握手をして下さい!!」
そう… 先程そうくんは、私と握手してくれなかった…
だから、そんな事を行ってしまった。
「え?」
そうくんは、少し困っているが、握手の事で頭一杯な私は、更に追い討ちをかける。
「だ… ダメでしょうか?」
「…いえ、それくらいなら、大丈夫です。」
「やった!!」
小さな声でそう、呟きながら私は、すぐに手を前にだす。
そうくんは、辿々しそうに、手を握ってくれる。
すぐに、手を離してしまうが、私は満足だった。
「では、お守りをお返ししますね!!」
「…ありがとうございます。」
私は、お守りを返す。
「では、俺これで、失礼します。」
「はい…」
自分の事を、伝えようかとも思ったが、出来ればそうくんから変わった私に、気づいて欲しい。
だから、私は、何も言わず見送ろうとすると、
「すみたん!!」
突然の大声。声のした方をむくと、見に覚えのない男性が立っていた。
「僕の事覚えてるよね… 今そっちに行くよ…」
そう言って男性は、ゆっくりと迫ってくる。
「あの人、鬼集院さんの知り合いですか?」
そうくんは、聞いてくるが、
「…いいえ、全然知らない人です…」
思い返すも、やはり分からない。
「お… 俺のすみたんと話すなぁ~!!」
男は突然怒りだし、そうくんに、殴りかかろうとしている。
危ないと思うと同時に、そうくんは、前に出て、私にむかって、叫ぶ。
「鬼集院さんは、さがってて!!」
私は、すぐに、後ろへさがる。そして、気づけばあの男性は、そうくんによって捕らえられていた。
それを見て、安心した私は、その場に座りこんだ。
「何があったの、菫!!」
車から、田中さんが降りてきて、こっちに来ている。
「田中さん…」
私は、今起こった事を説明すると、警備の人や警察の人を呼んでくれる。だけど、私たちは、次の仕事があるとやらで、警察が来る前に、車にのせられ、次の仕事場にむかわされた。
「大丈夫だった菫?」
「ニーナちゃん… うん、大丈夫だよ。」
「そう? それにしても、凄かったわねあの人。私は、車から見ただけだったけど、あの人が何をしたのかさっぱり分からなかったわ。」
「そうでしょ!! そうくんは、凄いんだから!!」
「そうくん? あの人、菫の知り合いなの?」
「うん!! 昔のだけどね…」
「昔ねぇ… もしかして、菫が、小学生の頃にお守りを渡した人?」
「そうなんだ!! そうくん、あのお守りずっと持っててくれてたの!!」
「良かったじゃない。あの人は、気づいてくれたの?」
「ううん、気づいてなかった… だけど、私ってあの頃と比べて凄く変わったから…」
「そっか… それじゃあ、菫から、伝えれば良かったんじゃないの?」
「そうなんだけど… でも、そうくんから気づいて欲しいから…」
「そう… なら、頑張りなさいね!!」
「うん!!」
ニーナちゃんとそんなやり取りをしていると、次の現場についた。
後から、田中さんが教えてくれたが、あの男性は、私のファンだったらしい。だけど、今回サイン会のチケットが当たらなかったようで、サイン後の私たちの後をつけて、あんな行動に出たみたいだった。
本当に、あそこにそうくんが居てくれて良かった。
そして、お礼の品を送る名目で教えて貰っていたそうくんの住所は、後日お礼がしたいとの理由で、こっそり教えて貰った。
◇
久しぶりの休みの日、私はメガネとマスク、帽子という変装をして近くの大型デパートに来ていた。今度のバレンタインデーで、ニーナちゃんらに渡すチョコの材料を買いに来たのだ。
だけど、途中でファンに見つかってしまい、断りきれずに、突然のサイン会が開催された。
休憩もなく、サインを書き続け、疲れが顔に出てきた。そんな時、急に手を引かれていた。
「え…」
すぐ、手を引いている人を見るが、顔は見えない。後ろを振り返ると、突然な事にポカーンとしていたファンたちも後を追ってくる。
すると、今度は、
「ごめんけど、ちょうと我慢してね。」
「え…」
お姫様だっこをされる。
突然な事で何が何だか分からなくなっていたが、なんとなく初めはそうくんに… 何てどうでもいい事を考えたいたら、その人は、走り出す。
「きゃ!!」
体でも、鍛えているのか、その人は、軽快に走る。落ちないように、その人に捕まると、顔が見えたと同時に、顔が熱くなるのが分かった。私は、これ幸いと、もっとしっかり彼に捕まる。
しばらく捕まっていると突然降ろされる。周りを見ると、どうやら階段の踊り場の角だった。すると、彼の被っていた帽子を目深に被らされ、彼の手が私の真横の壁におかれ、顔を近づけてくる。
声にはだしてないが、顔を真っ赤にさせ内心バクバクしながら、ニーナちゃんごめん… 私先に大人の階段を登るね何て考えながら、目を閉じる。だけど、いつまでたっても、私の口にあの感触は来ない。
すると、近くにファンたちが集まってきた。私たちを見て、
「チッ、リア充め!!」 「おい、上探しに行くぞ!!」
リア充って私たちの事だよね!!やっぱり、今私たちカップルに見えるよね!!など思っていたら、どんどん足音が離れていった。
「もう、いいかな。」
そう言って、彼… そうくんは、体をどかす。
少し… いや、かなり残念だ…
「鬼集院さん、顔が赤いけど、大丈夫?」
「だ… 大丈夫です!!」
「そう? ならいいけど。それで、急に、連れ出してごめんね。何だか、疲れていそうだったから。」
「い… いえ、助かりました。天宮さん、ありがとうございます。それに、この前も、助けてくれてありがとうございました。」
「いえ、迷惑でなかったなら、良かったです。それにしても、今日はどうしてこんな所に?」
「今日は、お休みだったので、その… ニーナちゃんや田中さんに渡す用のチョコを作る為に材料でも買いに来たのですが…」
「そうなんですね。」
「はい… でも、ここまで騒がれたら、もう買えないですよね…」
「そうですね、少し厳しいでしょうね…」
困ったな… どうしようかな…
「なら、俺が買った分から少し分けましょうか?」
何ですって…
「い… いいんですか?」
「はい。多めに買ってるんで、大丈夫ですよ。でも、ここじゃあれなんで、外にで…」
これは、チャンスよ菫!!
「私の家、近くなんで、そこでどうでしょうか!!」
「き… 鬼集院さんの家ですか? でも、俺なんかが行って、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!!」
「…分かりました。」
よし!!
そうして、私たちは、タクシーで家へむかった。
◇
私の今いるマンションについた。
「そ…それじゃあ、行きましょうか…」
「はい…」
エントランスに入り、エレベーターで上に上がっていく。
エレベーターから降りて、部屋へむかう。
部屋にむかう途中にふと気づく… 私って部屋の中片付けたっけ…
「ここです!! す… 少し待ってて貰ってもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
私は、先に中へ入って片付けをする。
あらかた片付け、そうくんを出迎える。
「ど… どうぞ!!」
「お… お邪魔します。」
「こ… こっちが、私の部屋ですので、ついて来てください…」
私は、すかさず部屋に案内する。
「…分かりました。」
そういえば、飲み物を用意しないと…
「の… 飲み物とってくるので、座って待っていて下さい…」
「…分かりました。」
急いで、キッチンへむかい、紅茶の準備をし、部屋に戻る。
何故か、そうくんは、目を閉じていた。
「お… お待たせしました…」
紅茶を注ぎ、そうくんへ渡す。
「ど… どうぞ。」
「あ… ありがとうございます。」
私が入れてくれた、紅茶を飲んでくれる。
この前は、地下駐車場。先程は、帽子を目深に被っていたので、顔がよく見えなかった。だからか、気づけば私は、そうくんの顔をずっと見ていた。やっぱり、格好いい…
「な… 何かついてますか?」
見てたのに、気づかれた!!
「す… すみません!!」
「いえ、大丈夫です。」
気まずい間が、流れる。
私は、思いきって、気になっていた事を、聞いてみる。
「そ… そういえば、天宮さんは、何か格闘技か何かやられてたんですか?」
「何でですか?」
「いえ、この前助けてくれた時のお手並みが鮮やかだったので…」
「なるほど。それで、答えですが、格闘技は、一通りの齧ってますね。」
「!? …凄いですね。でも、何でそんなに、格闘技をされてるんですか?」
「親に言われたからですかね。」
「親御さんにですか?」
「はい。両親は共に、海外にいる事が多いので、自分の身や、妹の身を守れってことで、小学校高学年から本格的に初めて、高校に上がる前まで、やってましたね。今は、時間がある時に、やってる位ですね。」
な… なるほど… だから、私を抱えて走っても、大丈夫だったのね。
そ…そういえば、今そうくんは、彼女とかいるのだろうか…
気になった私は、かまをかけてみる。
「そ… それなら、か… 彼女さんも、いつでも守れますね…」
「彼女ですか? 確かに守る自信はありますが、その前に作らないといけないですね。」
「い… 今はいないんですか!!」
「えぇ、いたことはないですね。」
やった!! なら、私にもチャンスはあるのね!!
「私もです!!」
「…共にいい人が出来ると良いですね。」
「はい…」
告白は、やっぱり無いよね…
「あ、これ俺が買った材料ですけど、どれが良いですか?」
そうくんは、袋を広げ、欲しい材料を聞いてくれる。
私は、落ち込むのをやめて、材料を選ぶ。
「…なら、これらでお願いします? 大丈夫ですか?」
私は、数枚のチョコやその他もろもろを選び、聞いてみる。
「はい、大丈夫です。それだけで良いですか?」
「はい、充分です。あ、今お金払いますね。」
私は、鞄から財布をとろうとすると、
「いえ、お金は、大丈夫ですよ。」
「でも…」
「たいした額ではないので、気にしないで下さい。」
私は、財布の変わりに、チケットを取り出す。
「…なら、これを貰ってください!!」
「これは?」
「今度、2月14日にある私たちのライブのチケットです!!」
「こんなもの貰えませんよ!!」
そ… そんなぁ…
「え… いらないですか…」
昔みたいに、寂しげな目で、見てみる。
「あ、いやそう言うわけでは…」
もう、ひと押しだ。
「なら、受け取ってください!!」
「…分かりました。頂きます。」
やった!!
「はい!!」
私は、チケットを2枚渡す。
「それじゃあ、材料も渡せましたので、俺はこれで失礼しますね。」
「…そうですよね。お見送りしますね。」
2人で、玄関までむかう。
「それじゃあ、お邪魔しました。チョコ作り頑張って下さいね。」
「はい!! 頑張ります!!」
「それじゃあ、失礼しま…」
気づけば、そうくんを引き留めていた。
「あの!!」
「ど… どうしました?」
何かないか、引き留めた理由… はっ!!
「ら… L◯NE交換しませんか!!」
「L◯NEですか? 別に大丈夫ですよ。」
「本当ですか!!」
「はい。」
私も、スマホを取り出し、L◯NEを交換する。
やった、連絡先もゲット!!
「ありがとうございます!!」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。今度のライブ楽しみにしてますね。」
「はい、精一杯頑張ります!!」
そうくんを見送った後、私は自分のベットの上で、スマホを見ながら足をバタバタさせながら、今季最大の試練が迫っていた。
「な… 何て、送ろう…」
書いては消して、書いては消してを繰り返す。
たまに、ニーナちゃんに相談しながら、無難な内容を送る。
送った後は、ソワソワしながらチョコ作りを始める。
ピィーロン
すぐに、スマホをとり、LIN◯を確認する。
"こちらこそ、ありがとうございました。日曜日は、知り合いと、一緒に行かせて頂きます。ライブは楽しみにしてますが、体に気をつけて下さいね。おやすみなさい。"
気を付けます!! 気を付けながら、精一杯頑張ります!!
そう私は、決意した。
◇
次の日、私が作ったチョコをニーナちゃんや田中さんたちは、美味しいと言って、食べてくれた。
そして、その日の夜、私は、ある決心をして、L◯NEを送った。
"日曜日のライブが終わった後に用があるので、一度会えませんか?"
返信は、少しして、来た。
"分かりました。どこに行けばいいですか?"
"場所は後日送ります!!"
"分かりました。では、おやすみなさい。"
"ありがとうございます。おやすみなさい。"
そう、送った後、私はベッドの上で跳び跳ねながら、ニーナちゃんに電話をかけた。
「やった、やったよ、ニーナちゃん!! 私頑張ったよ!!」
「ど… どうしたの菫?」
「ライブ後に、そうくんと会う約束をしたの!!」
「頑張ったじゃない菫!!」
「うん、私頑張ったよ!!」
そんな話をしながら、私は電話を続けた。
土曜日には、田中さんにある物を、用意して貰った。夜には、それを使い、ある物を作った。
そうくんに待ち合わせ場所の◯INEしておくのも忘れない。
それが終わると、明日に備えて、しっかりと睡眠をとった。
◇
ライブは、大盛況に終わった。
ライブ中何度も、そうくんと目があった気がする。その度に、私のきれが上がった感じがした。
「それじゃあ、ニーナちゃん、私行ってくるね!!」
「頑張ってね!!」
「うん!!」
私は、紙袋を持ち、急いで待ち合わせ場所にむかった。
少し早く来すぎたのか、そうくんは、まだ来ていなかった。
少しして、そうくんがやった来た。
「こ… こっちです天宮さん!!」
「すみません、お待たせしました、鬼集院さん。」
「いえ、無理言ってるのはこっちですから、全然大丈夫です!!」
「それで、鬼集院さん、俺に用とは何でしょうか?」
「あ… あの… その…」
渡すとなると、途端に恥ずかしくなる。
顔が熱くなるのを、感じながらも勇気を振り絞る。
「あの、これ受け取って下さい!!」
紙袋を差し出す。
「…これは?」
「て… 手作りチョコです!!」
「何で俺なんかに?」
「あ… いえ… その… 色々して頂いたので…」
「そうですか。では、有り難く頂きます。大切に食べますね。」
良かった…
「はい!!」
チョコを受け取ってくれた、そうくんは、腰掛けポーチから袋を取り出す。
「そ… それなら、これは俺からです。」
袋を私の手の上に、のせてくれる。
「え…」
「大したものでは無いのですが、お土産の一つでもと思って買ったものですが、チョコのお返しになれば、幸いです。」
「・・・」
「あれ? 鬼集院さん、もしかしていりませんか?」
「い… いえ、頂きます!! 返してと言われても、絶対返しません!!」
「よ… 喜んで頂けたなら、良かったです。」
その後、マネージャーの田中さんが迎えに来るまで、そうくんと話をした。楽しかった。頂いた物は、後で見てくれのと事で、まだ、見ていない。
「おかえり、菫。それで、チョコは渡せた?」
「うん!! 無事に、受け取って貰えたよ。それに、お返しも貰っちゃったんだ!!」
そう言って、貰った袋をニーナちゃんに、見せる。
「やるわね、菫の王子さまは。」
「えへへ、王子さま何て…」
「それで、中身は見たの?」
「ううん、まだだよ。」
「ここで、見るの?」
「ニーナちゃんには、悪いんだけど…」
「ん、どうしたの?」
「家に帰ってから、開け見よう思ってるの…」
それで、いいんじゃない? あ、でも、私も中身気になるから、後で写真送ってね!!」
「ありがとうニーナちゃん!! 絶対送るね!!」
今日の仕事は、ライブだけだったので、早い段階で仕事が終わった。帰った私は私は、お風呂に入ってから、袋を開ける前に、仮眠をとった。
ぞくりっと謎の悪寒で目が覚める。
何だったんだろうな…
その後は、寝付けなかったので、そうくんに貰った袋を開けることにする。まずは、袋を前に正座する。
では、開けさせて頂きます。袋を開けると中から、月をモチーフにした髪飾りが入っていた。
とても、綺麗で可愛い。私は、写真を撮り、ニーナちゃんに送った。
ピィーロン
返信が、すぐに来たかと思ったけど、そうくんからのLI◯Eだった。
すぐに見てみる。
"ライブお疲れ様です。言葉に表せない位良かったです。そして、チョコもありがとうございました。とても、美味しかったです。疲れていると思うので、ゆっくり休んで下さい。"
何だか、涙が出てきた。涙を拭いながら、時間をかけ、返信する。
"天宮さんも、ライブに来てくれてありがとうございました。喜んで頂けて良かったです。それに、天宮さんがくれた、月の髪飾りとても、綺麗で可愛いかったです。今度使わせて貰いますね。"
送った後は、髪飾りをつけて、鏡で確認見てみる。
やっぱり、泣いた後の顔でも、月の髪飾りは、私の黒髪とマッチし、とても、綺麗だった。
皆様は、どのようなバレンタインデーをお過ごしですか?
私はまぁ、言わずもがなです…
天宮たちの、お話は、これで、おしまいですが、いかがだったでしょうか。
一応、完結しておりますが、もしかしたら、再び連載するかもしれません。まぁ、気分ですね。
初めての恋愛物(そうであって欲しい…)でしたが、皆様に少しでも、楽しめて頂けたなら幸いです。
それでは、残り僅かですが、良いバレンタインデーをお過ごし下さい。