間幕・私の親友
私、五反田唯には、親友がいる。名は、天宮咲夜。
彼女は、私が小学生2年生からの、付き合いだ。
学校の帰り道、そんな彼女に聞いてみた。
「そういえば、咲夜は、今年のバレンタインデーは、誰に渡すの?」
答えは、分かりきっているが、毎回聞いている。
特に理由はない、まぁ、女子トークというやつだ。
「バレンタインデー? そんなの決まってるじゃん、お兄ちゃんだよ!!」
「…言うと思ったよ。」
案の定、予想通りの答えが帰ってきた。
「あ!! ちゃんと、唯ちゃんたちにもあげるから、安心してね!!」
「それは、ありがたいけど、それを作るのは…」
そう作るのは、毎度の事ながら、
「勿論、お兄ちゃんだよ!!」
…やっぱり
「…例年通りとは言え、蒼夜さんは、毎回良く作ってくれるよね。」
本当に、そう思う… まぁ、でも毎回美味しいから、有り難いんだけどさぁ…
「お兄ちゃん、優しいから!!」
「…私も、そんなお兄さんが、欲しかったよ。」
いや、まじで、そう思う。
「そんなこと言って、圭一さんも、優しいでしょ?」
「確かに優しいかもしれないけど、蒼夜さんと違って馬鹿だし、アイドルオタクだし… そう言えば、この前も、蒼夜さんに、迷惑かけたみたいだし…」
「お兄ちゃんは、特に気にしてなかったよ?」
やはり、蒼夜さんは、大人だな… あの兄を見てると、本当にそう思う。あの、馬鹿な兄に蒼夜さんの爪の垢を煎じて、飲ませたいくらいだ…
「…やっぱり、蒼夜さんみたいなお兄さんが良かったよ…」
「はははは… それじゃあ、私はこっちだから、また明日は、休みだから、明後日ね!!」
「うん、それじゃあね!!」
咲夜と別れた私も、家に帰った。
◇
金曜日、学校にむかっている途中、後ろから声をかけられる。
「おはよう、唯ちゃん!!」
「咲夜、おはよう。」
「はいこれ、唯ちゃん!!」
咲夜から、小袋を手渡される。
蒼夜さんが、作ったチョコだろう。
「ありがとう、咲夜。これは、私からね。」
私も、掲げていた紙袋から、チョコを取り出し、手渡す。
「ありがとう唯ちゃん。それで、今回のチョコも、美味しかったよ!!」
…美味しいとは、思っているが、何であんたの口からその言葉がでるのやら。
「…何であんたも、食べてるのよ。」
「そりゃあ、お兄ちゃんが多めに作ってくれたから、余った分は、私の夜食になったからだよ。」
「そう… まぁ、後で美味しく頂くよ… そう言えば、咲夜は、クラスの男子に、チョコ渡すの?」
咲夜は、クラスの女子から何か言われていた筈だ。
「うん、ちゃんと買ったよ!!」
「…蒼夜さんの手作りですら、ないのね。」
「そこまで、お兄ちゃんに頼れないよ。」
「…そこの分別はあるのね。それで、何を買ってきたの?」
「ん、これだよ!!」
咲夜は、紙袋から◯ロルチョコを取り出した。
「…咲夜、あんた…」
しかも、個別で包んですらいないのね…
私は、開いた口が塞がらなかった…
「ん、どうしたの唯ちゃん?」
もう、私は、考えるのをやめた…
「何でもないよ… 行こうか咲夜…」
「うん!!」
◇
咲夜と私は、学校について早々、チョコを渡していた。
私は、一応クラスの男子用にも、作っていたので渡してまわる。
咲夜はと言うと、私と一緒に渡していた。渡していたのだが、チラリと横目で見てみると、
「はい、チョコ。」
「あ… ありがとう、天宮さん。」
「はい、どう致しまして。唯ちゃん、次行こう!!」
と、さっきから、この一連の流れだ…
私だけでなく、他の女子たちも、男子を不憫に思い、咲夜の事を、可哀想な子を見る目で見ていた…
その後も、咲夜は、全ての男子に同じ態度で、渡していた。何故か、私の方が疲れたよ…
「ん、唯ちゃん、どうしたの?」
「…何でもないわ。」
こうして、私のバレンタインデーは始まった。