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4話・天宮咲夜編

 家への帰り道、私は友だちと帰っていた。


「そういえば、咲夜さくやは、今年のバレンタインデーは、誰に渡すの?」


「バレンタインデー? そんなの決まってるじゃん、お兄ちゃんだよ!!」


「…言うと思ったよ。」


「あ!! ちゃんと、ゆいちゃんたちにもあげるから、安心してね!!」


「それは、ありがたいけど、それを作るのは…」


「勿論、お兄ちゃんだよ!!」


「…例年通りとは言え、蒼夜そうやさんは、毎回良く作ってくれるよね。」


「お兄ちゃん、優しいから!!」


「…私も、そんなお兄さんが、欲しかったよ。」


「そんなこと言って、圭一けいいちさんも、優しいでしょ?」


「確かに優しいかもしれないけど、蒼夜そうやさんと違って馬鹿だし、アイドルオタクだし… そう言えば、この前も、蒼夜そうやさんに、迷惑かけたみたいだし…」


「お兄ちゃんは、特に気にしてなかったよ?」


「…やっぱり、蒼夜そうやさんみたいなお兄さんが良かったよ…」


「はははは… それじゃあ、私はこっちだから、また明日は、休みだから、明後日ね!!」


「うん、それじゃあね!!」


 私は、帰ってから、夕食の時、早速お兄ちゃんに頼んだ。


「お兄ちゃん、お願いがあるの?」


「お願い? 何だ?」


「あのね… 友達に渡すチョコを作って貰ってもいい?」


「…分かった。明日ちょうど休みだから、作っとくよ。」


「ありがとう、お兄ちゃん!!」


 やっぱり、お兄ちゃんは、最高のお兄ちゃんだよ!!

 明日にでも、材料を買って作ってくれる事になった。



 ◇



 次の日、お兄ちゃんを見送った後、私もお兄ちゃんへ作る用の材料を買いにお兄ちゃんがいつも行くデパートとは、別の場所にむかった。

 材料はしっかり、買い込んだ。そう言えば、クラスの女子たちは、クラスの男子にも渡すと言っていたっけ?

 私は、今回もクラスの男子たちに、特に渡す気はなかったのだが、今年で中学も卒業するし、3年間一緒だった男子にも、思い出作りの為にあげたらと言われたりしたので、買っておくか… ちょうど目に入った、複数の入ってあるチ◯ルチョコセットを買っておく。

 買い物を終わらせ、家に帰った。まだ、お兄ちゃんは、帰りついていなかったので、買ってきた材料を見えないように、冷蔵庫に隠しておく。今日は、いつ帰ってくるかわからない為、今度お兄ちゃんに出掛けて貰ってから作ろうと思う。

 だから、自分の部屋で、気長にお兄ちゃんでも待つとする。

 私が帰って来てから、だいぶたって、お兄ちゃんが帰ってきた。


「ただいま、さき。」


「おかえり、お兄ちゃん!!」


「今から、チョコ作るからラッピングは自分でしろよ。」


「は~い!!」


 夕食を食べ終えた後に、お兄ちゃんが作ってくれたチョコをラッピングする。結構な数を作ってくれてたので、友だちに渡す分を包んでしまった後も、少し余った。残ったのは、当然私の夜食になった。

 美味しかった。流石は私のお兄ちゃん!!



 ◇



 次の日、お兄ちゃんが作ってくれたチョコとチ◯ルチョコを紙袋に入れて学校へむかった。

 むかう途中に、ゆいちゃんの後ろ姿が見えた。


「おはよう、ゆいちゃん!!」


咲夜さくや、おはよう。」


「はいこれ、ゆいちゃん!!」


 私は、お兄ちゃん手作りチョコを渡す。


「ありがとう、咲夜さくや。これは、私からね。」


 ゆいちゃんも、紙袋から取り出した、チョコをくれる。


「ありがとうゆいちゃん。それで、今回のチョコも、美味しかったよ!!」


「…何であんたも、食べてるのよ。」


「そりゃあ、お兄ちゃんが多めに作ってくれたから、余った分は、私の夜食になったからだよ。」


「そう… まぁ、後で美味しく頂くよ… そう言えば、咲夜さくやは、クラスの男子に、チョコ渡すの?」


「うん、ちゃんと買ったよ!!」


「…蒼夜そうやさんの手作りですら、ないのね。」


「そこまで、お兄ちゃんに頼れないよ。」


「…そこの分別はあるのね。それで、何を買ってきたの?」


「ん、これだよ!!」


 私は、買ってきたチロ◯チョコを紙袋から出し、見せる。


「…咲夜さくや、あんた…」


「ん、どうしたのゆいちゃん?」


「何でもないよ… 行こうか咲夜さくや…」


「うん!!」


 学校で、お兄ちゃんの手作りチョコを渡し、案の定好評だった。

 ちゃんと、男子にも配った。普通に配っただけなのに、ゆいちゃんや他の友だちに、変な目で見られた。何だかげせぬよ友だち諸君。



 ◇



 ~土曜日~


 今日も、お兄ちゃんは、出掛けていった。いつ帰ってくるか、尋ねたら、いつ帰るか分からないとの事だった。

 まさか!!と思って、といつ… いや、確認したけど、1人で出掛けるとの事だった。少し怪しいが、たぶん、嘘ではないだろう。

 お兄ちゃんを見送った後、私もお兄ちゃんのために、私のすることを始める。

 まずは、事前に調べておいたレシピをスマホで開き、早速チョコ作りを開始する。

 しばらくして、


「で… 出来た!!」


 ストロベリーチョコをメインとした、チョコが完成した。

 これを、冷蔵庫で冷やして、ラッピングするだけだ。

 明日は、バレンタインデー… 今回は、頑張って、ハート型にしてみた。


「お兄ちゃん、喜んでくれるかな…」


 明日の事を考えながら、後片付けをする。



 ◇



 今日は朝早くから、圭一けいいちさんと、出かけると言っていた。見送る事は、出来なかったので、出迎えはしようと、お兄ちゃんの帰りをまった。

 お兄ちゃんから、もうそろそろ帰るとLIN◯が届いた。

 私は、ラッピングしたチョコを持って、玄関前で待機する。

 少しして、ガチャとドアノブが回される。


「おかえり~、お兄ちゃん!!」


「あぁ、ただいまさく。」


 帰ってきた、お兄ちゃんの手元に紙袋があった。何故か、女の勘が危険信号を放つ。


「ん、それは、何?」


 紙袋を指差しながら、何なのか尋ねる。


「あぁ、チョコだよ。今日貰ったんだ。」


 ち… チョコだって… 誰から…


「誰から貰ったの?」


「知り合いだよ。」


 知り合いねぇ…


「ふ~ん… それってもしかして手作り?」


「確か、そう言ってたな。」


「ふ~ん… そうなんだ…」


 私の頭の中では、すぐにその人をライバル認定する。


「ん、どうしたさく?」


 お兄ちゃんに声をかけられ、


「ううん、何でもない。はいこれ、お兄ちゃん!! 私からも手作りチョコ!!」


 私も、チョコを手渡す。


「ありがとうさく。有り難く頂くよ。でも、さく、自分で作れるなら、友だちの分も作ったらどうだ?」


「私が作ったのを食べていいのは、お兄ちゃんだけです!!」


「そ… そうか。それじゃあ、部屋で休んでくるよ…」


「はい!!」


 無事に、受け取って貰え、ホッとした。

 それと同時に、お兄ちゃんに、先に手作りチョコを渡した、まだ見ぬライバルに悔しさを滲ませた。

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