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2話・天宮蒼夜編2

 俺は、再び戻り、お守りを探しに行く。

 中に入ると、ちょうど従業員がいたので、聞いてみる。


「すみません。」


「はい、何でしょうか?」


「お守りを落としたのてすが、見ませんでしたか? たぶん、ここら辺で落としたと思うんですけど?」


「お守りですか… そういえば、鬼集院きじゅういんさんがそれらしき物を、拾っているのを見たような…」


鬼集院きじゅういんさんがですか? 今どこにいるか分かりますか?」


「確か、地下の駐しゃ…!!」


「地下ですね?」


「やばっ!? すまん、今のは、聞かなかった事にしてくれ!!」


「…分かりました。」


「そ… それじゃあ、俺はまだ仕事が残ってるから…」


 従業員は、そそくさと、どこかへ行った。


「さて、地下に行きますか…」


 言っておくが、地下に行った後に、駐車場の件は、しっかり忘れる予定だ。

 早速、地下駐車場にむかった。そこには、ちょうど車に乗り込もうとする鬼集院きじゅういんさんを見つけた。

 早速声をかけようと、近寄ろうとすると、


「誰ですか、止まりなさい!!」


 鬼集院きじゅういんさんの後ろで待機していた、女性に先に声をかけられる。また、車から降りてこないように、声もかけている。

 俺は、ちゃんと立ち止まる。


「貴方は誰で、何の用があってここに来たのか答えなさい!!」


 正直に答える。


天宮蒼夜あまみやそうやって、言います。今、車に乗っている、鬼集院きじゅういんさんが、お守りを拾ったと聞いたので、もしかしたら、自分の分が落としたお守りではないのか確認しに来ただけです!!」


「…分かりました。今確認するから、そこで待っていて下さい。」


 そう言い、女性が確認しようとする前に、鬼集院きじゅういんさんが車から、降りてきていた。


すみれ、貴方降りてこないように、言ったでしょ!!」


 降りてきた、鬼集院きじゅういんさんと女性が少しやり取りをしている。やり取りまでは、距離があり聞き取れない。

 話がついたのか、女性が1人で、車に乗り込んだ。


天宮あまみやさん、こちらに来ても大丈夫ですよ。」


「…分かりました。」


 俺がここに来た内容は先程の女性とのやり取りで伝わっていると思うが、俺の事をそこまで、警戒されていないように思える。アイドルがこんな簡単に人を信じていいのか、少し不安になりながら、鬼集院きじゅういんさんのもとへむかう。


「時間をとってくれて、ありがとうございます。改めて、天宮あまみやです。俺からの用件は、拾ったと聞いたお守りが、自分の物か確認しに来ただけです。それが終わったら、すぐ帰ります。」


 もう一度、俺が来た内容を伝える。

 鬼集院きじゅういんさんは、ポケットから、お守りを取り出す。


「これの事ですよね?」


 そのお守りは、上の紐の部分が切れていた。だけど、俺が落としたお守りで間違いない。


「はい、それです。返して貰っても、いいですか?」


「…分かりました。ただ、条件があります!!」


 条件だと… 無理難題でも出されるのだろうか…


「…何でしょうか?」


「わ… 私と握手をして下さい!!」


「え?」


 握手? そんな事でいいのか?


「だ… ダメでしょうか?」


 そんな上目遣いされたら、断りづらい。


「…いえ、それくらいなら、大丈夫です。」


 鬼集院きじゅういんさんは、小声で何かを呟いた後、お守りを持ってない方の手を差し出してくる。

 俺も、その小さく柔らかそうな手を握る。思った通り、柔らかかった。少しして、手を離す。


「では、お守りをお返ししますね!!」


「…ありがとうございます。」


 お守りを返して貰う。


「では、俺これで、失礼します。」


「はい…」


 俺が帰ろうとすると、


「すみたん!!」


 突然の大声。声のした方をむくと、あの時、俺とぶつかった顔色が青白い男が立っていた。


「僕の事覚えてるよね… 今そっちに行くよ…」


 ゆらゆらと、男性は近寄ってくる。


「あの人、鬼集院きじゅういんさんの知り合いですか?」


「…いいえ、全然知らない人です…」


 よく見ると、少し肩を震わせている。


「お… 俺のすみたんと話すなぁ~!!」


 男は突然怒りだし、俺にむかって、殴りかかってくる。

 俺は、鬼集院きじゅういんさんの前に咄嗟に出る。


鬼集院きじゅういんさんは、さがってて!!」


 さがったのを確認する暇もなく、男は目の前に迫っていた。

 俺は、男の拳を少し左下に屈むように避けながら、それと同時に、右手で男の襟首を掴む。驚いた男の足を手前に払いながら、倒す。

 仰向けに倒れた男をうつ伏せにしながら、両腕を後ろにまわし、押さえ込む。

 男は、次第に何をされたのか理解しだしたのか、暴れだすが、ガッチリと押さえ込んでいるので、抜け出す事が出来ない。


「何があったの、すみれ!!」


 車から、先程の女性が降りて、すぐに鬼集院きじゅういんさんに駆け寄る。


「田中さん…」


 女性は、田中さんと言うらしい。

 鬼集院きじゅういんさんから、説明を聞いた田中さんは、すぐに警備員やら警察やらを呼んでくれた。

 何とか、誰も怪我することなく、無事に男を警察に引渡せた。

 ナイトセリナの二人組は、次の仕事があるとの事で、マネージャーの田中さんのみ残った。2人で、事情聴取を受け、解放された。


「えぇと、天宮あまみや君だっけ、今回はすみれを助けてくれて、ありがとうね。」


「いえ、何事もなくて、良かったです。」


「本当は、すぐにでもお礼をしたいんだけど、私とすぐに、彼女たちと合流しないと行けないから、また後日、お礼をさせて貰うわ。」


「別に、お礼なんか…」


「ダメよ。」


「…分かりました。それじゃあ、俺はこれで失礼します。」


 別れた後は、急いで圭一けいいちのもとへ戻る。


「悪い圭一けいいち、色々あってな。」


「ん、あぁ、おかえり蒼夜そうや。いいよ別に、それより、お守りはあったか?」


「あぁ、見つかったよ。」


「それは、良かったな。それじゃあ、飯食べ行こうぜ!!」


「あぁ、行くか。」


 その後は、近くの飲食店でご飯を食べて帰った。

 もとは、圭一けいいちの奢りだったが、待たせたこともあって、俺が奢ろうとしたが、結局割り勘になった。

 後日、ナイトセリナの事務所から、ナイトセリナの限定グッズとクオカードが送られてきた。



 ◇



 アイドルを暴漢から助けてから、はや3日がたった夕食時


「お兄ちゃん、お願いがあるの?」


 チラッとカレンダーを確認する。そう言えば、もうこの時期か…


「お願い? 何だ?」


「あのね… 友達に渡すチョコを作って貰ってもいい?」


 やっぱりか…


「…分かった。明日ちょうど休みだから、材料を買いに行って、作っとくよ。」


「ありがとう、お兄ちゃん!!」


 さてと、何を作ろうかね…



 ◇



 ~翌日~


「それじゃあさく、買い物に行ってくるよ。」


「は~い、いってらっしゃいお兄ちゃん!!」


 昼御飯を食べた後、俺は、大型デパートに来ていた。

 適当にチョコやフレークなど買っていく。多めに買っておく。

 買い終わったので、帰ろうとすると、人垣が出来ていた。

 避けて帰ろうかと思ったが、人垣の声が聞こえてきた。


「おい、すみれちゃんが来ているみたいだぜ!!」


すみれちゃんてあの、ナイトセリナのすみれちゃんか!!」


「あぁ、そのすみれちゃんだ!!」


 最初は、誰の事か分からなかったが、次第に思い出してくる。


「あぁ、鬼集院きじゅういんさんの事か…」


 何となく、気になった俺は、その人垣に足をむける。

 鬼集院きじゅういんさんの姿は、すぐに見つかった。ただ、少し様子がおかしい気がする。

 まわりには、警備の人やマネージャーの田中さんもいないし、顔には、疲労を感じられる。

 再び、まわりの声を聞くと、


「何でも、今日は、プライベートみたいだぜ。騒ぎを聞き付けて、どんどん集まったみたい。」


「みたいだな。俺もさっき、サイン貰ってきたよ。一生家宝にするわ~!!」


 なるほど、プライベートねぇ… あの感じだと、何となく、断れなくなって次から次へとって感じか…

 心配になった俺は、被っていた帽子を目深に被り、人垣を進んでいく。


「おい、順番守れよ!!」 「ちょっと!!」


 周りから何か言われているが、全て無視して、先頭にたどり着く。

 ちょうど、サインを書き終えたところだ。

 俺は、疲れきっている鬼集院きじゅういんさんの手を引く。


「え…」


 鬼集院きじゅういんさんも、驚いていたが、そのまま手を引き、その場を離れようとする。少し固まっていたファンの人たちも、騒ぎだし、追ってこようとするため、


「ごめんけど、ちょうと我慢してね。」


「え…」


 俺は、そのまま鬼集院きじゅういんさんをお姫様だっこの要領で、抱き抱え、走り出す。


「きゃ!!」


 少し、引き離した後、階段の踊り場の角で鬼集院きじゅういんさんをおろし、俺の被っていた帽子を目深に被らせ、俺の体で隠す。

 すぐに、ファンの連中が集まってきた。俺たちを見て、


「チッ、リア充め!!」 「おい、上探しに行くぞ!!」


 足音が離れていく。


「もう、いいかな。」


 体をどかし、鬼集院きじゅういんさんを見ると、顔を真っ赤になっていた。


鬼集院きじゅういんさん、顔が赤いけど、大丈夫?」


「だ… 大丈夫です!!」


「そう? ならいいけど。それで、急に、連れ出してごめんね。何だか、疲れていそうだったから。」


「い… いえ、助かりました。天宮あまみやさん、ありがとうございます。それに、この前も、助けてくれてありがとうございました。」


「いえ、迷惑でなかったなら、良かったです。それにしても、今日はどうしてこんな所に?」


「今日は、お休みだったので、その… ニーナちゃんや田中さんに渡す用のチョコを作る為に材料でも買いに来たのですが…」


「そうなんですね。」


「はい… でも、ここまで騒がれたら、もう買えないですよね…」


「そうですね、少し厳しいでしょうね…」


 俺は、チラッと自分の荷物を確認する。


「なら、俺が買った分から少し分けましょうか?」


「い… いいんですか?」


「はい。多めに買ってるんで、大丈夫ですよ。でも、ここじゃあれなんで、外にで…」


「私の家、近くなんで、そこでどうでしょうか!!」


「き… 鬼集院きじゅういんさんの家ですか? でも、俺なんかが行って、大丈夫ですか?」


「大丈夫です!!」


「…分かりました。」


 鬼集院きじゅういんさんの勢いにおされ、結局家に伺う事になった。

 その後は、ファンの人たちに、見つかることなく、デパートを出て、タクシーに乗り込み、鬼集院きじゅういんさんの自宅にむかった。

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