1話・天宮蒼夜編
ピピピピピピピピ
スマホのアラームで目を覚ます。
ベッドから出て、洗面台で顔を洗いに行く。
顔を洗った後は、自分の弁当と朝御飯の用意をする。
両親は共に、海外出張に行っていて、たまにしか帰ってこれないようだ。
だから、今この家には、俺と1つ下の妹しかいない。
妹は、部活動をしているので、自然と俺が家事をするようになっていた。あらかた、朝御飯の準備を終わらせた後は、まだ寝ている、妹の咲夜を起こす。
「お~い、咲、ご飯出来るから、起きてこ~い!!」
少しして、ドタドタと階段を降りてくる音がする。
「おはよう、お兄ちゃん!!」
「あぁ、おはよう咲。」
肩につかないくらいの黒髪、身長は155cmと小柄で、贔屓目に見なくても、可愛らしい、15歳の妹だ。
今日も、髪が少しはねている。
「ほら、髪がはねてるぞ。」
いつもの事なので、常備していたブラシで髪をとかしてやる。
「えへへ~、ありがとうお兄ちゃん!!」
「ほら、終わったぞ。すぐ準備するから、顔でも先に洗ってきな。」
「はい!!」
咲が顔を洗いに行っている間に、準備を終わらす。
その後は、顔を洗い終わった咲とTVを見ながら、朝御飯を食べる。
『大人気アイドルユニット・ナイトセリナが3週連続で音楽ランキング1位を取りました!!』
「最近、このアイドルユニットが人気だよねお兄ちゃん!!」
「そうなのか?」
「お… お兄ちゃんまさか、知らないの?」
「ん、あぁ。TVはあまり見ないからな。」
「それでもだよ、お兄ちゃん…」
「そんな事よりも、今日は早く出るんじゃなかったのか?」
「あっ!! そういえば私、今日日直だった!!」
咲は、急いで朝御飯を食べ追える。
「お茶碗は、俺が洗っとくから、置いといていいぞ。」
「ありがとうお兄ちゃん!! 夜は私が洗うね!! それじゃあ、行ってきます、お兄ちゃん!!」
「あぁ、いってらっしゃい。」
後片付けを終え、俺も学校にむかった。
学校についた俺は、いつも通り、読みかけの本を読みだす。
しばらく読んでいると、ドタバタと騒がしくなってきた。入り口を見ると、幼なじみの五反田圭一が来ていた。あいつは、来てそうそう俺を見つけ、声をかけてきた。
「そうえもん~、一生のお願いだ~!!」
パシンッ
俺は、迷いなく頭をひっぱたく。
「痛って~!! そんなに力込めなくてもいいじゃねぇ~か!!」
「お前は、何度一生のお願いがあるんだよ…」
「いや~」
「誉めてねぇよ… はぁ~…」
俺は、ため息をつきながら鞄から数学のプリントを取り出す。
「ほら。」
「ん、これは?」
「あれ? てっきり、数学の宿題を写させて欲しいのかと思ったが違ったのか?」
「…それもあるが、今回は違うんだ。」
「いや、写すんなら、違わないだろ… なら、今回は何なんだ?」
「蒼夜、お前今度の土曜日に用事とかあったりするか?」
「土曜日? 日曜なら妹と買い物の約束をしてあるけど、土曜日なら、予定はないな。」
「なら、一緒にCDショップに来てくれ!!」
「…着いていくのはいいが、理由を先に言えよ。」
「ふふふ、これを見てくれ!!」
圭一は、ポケットからスマホを取り出し、その画面を見せてくる。
そこには、何かの紙が写ってあった。
「…何だよこれ?」
「良く聞いてくれた、これはあの大人気アイドルユニット・ナイトセリナのサイン会参加券だ!!」
「ナイトセリナ?」
「そ… 蒼夜、お前まさか、あの二人組の大人気アイドルユニット・ナイトセリナを知らないのか!!」
「圭一、声が大きいぞ!!」
ん、アイドルユニット・ナイトセリナ… あぁ、朝御飯の時に咲が言っていたアイドルか…
「これが、声を大きくしないでいられるか!! お前、本当にナイトセリナを知らないのか?」
「いや… そんなことないぞ…」
「なら、2人の名前を言ってみろ。」
知るわけないだろ…
「それよりも、そのサイン会参加券は、どうしたんだ?」
「あぁ、これは何枚もCDを買ってやっとの思いで手に入れた物だ!!」
よし、話をそらせたな…
「それで、俺は何をすればいいんだ?」
「このサイン会に一緒に行って欲しいんだ。」
「何でだ?」
「この参加券は、1枚で2名まで参加可能なんだ。だけど、どちらかのサインしか貰えないだ。でも、俺は両方欲しい。だから、蒼夜について来て貰って、俺が貰えなかった方のサインをゲットしてきて欲しいんだ。」
「はぁ~… 圭一、ついて行く分は、構わないが、もし、俺がそのアイドルを好きだったら、サインをお前に渡さないんじゃないのか?」
「!?」
雷に打たれたかのような、顔をしている。
「た… 頼む貰ったサインは、俺にくれないか!!」
その場で、土下座をしだす圭一。
「分かった分かった。だから、頭を上げろ。」
「ありがとう、心の友よ~!!」
キンコーンカンコーン
チャイムがなる。
「また、後で聞くから、席に戻れ圭一。」
「了解。それじゃあ、またな蒼夜!!」
圭一は、席に戻っていった。
しかもあいつ、ちゃっかり数学のプリントは、持っていって行きやがった。
◇
昼休み、圭一から、詳しい話を聞いた。
聞いた話は、さっき聞いた話がほぼほぼ全部だった。
「なら、俺は、それについて行って、サインを貰ってからお前に渡せばいいんだな?」
「あぁ、頼む!!」
「はぁ、分かったよ。その代わり、昼飯おごれよ。」
「あぁ、お安いご用だ。ありがとう蒼夜!!」
こうして俺は、今度の日曜日にアイドルのサイン会に参加することになった。
◇
日曜日
「それじゃあ咲、悪いけど行ってくるな。」
「うん、いってらっしゃいお兄ちゃん。」
俺は、妹に見送られながら、駅へむかった。
駅についた時には、すでに圭一は、待っていた。
「悪い、待たせたな。」
「いや、眠れなくて、早くきただけだから、気にしなくてもいいぜ。それよりも、早く行こうぜ!!」
「分かった分かった。そう急かすな。それよりも、参加券は、忘れずに持ってきたか?」
「あぁ、持ってき…」
圭一は、顔を青くしながらポケットを叩き、鞄をひっくり返す。
「わ… 忘れた…」
「はぁ… 時間はまだあるから、取り行くぞ。」
「わ… 悪い…」
参加券を取りに戻り、急いで参加場所にむかった。
時間には、間に合ったが、最後尾だった。
ここに来る電車の中で、ある程度の情報を聞かされた。
ナイトセリナは、二人組のアイドルユニット。
1人目が、身長160cmの黒髪ロングの16歳、鬼集院菫さん。
2人目が、身長165cmの金髪ボブで碧眼、ロシアと日本のハーフの16歳の井上ニーナさん。
電車の中で、スマホの写真を見せながら、熱心にナイトセリナを語る圭一と少し距離をおいたのは、察してくれ。
サイン会は、2列に別れて、開始された。
圭一は、井上さんの所に並ぶみたいなので、俺は、鬼集院さんの所に並んだ。大体、半々ほど並んでいた。
休憩を挟みながら行っていたので、約3時間ほどたった。
「次の方どうぞ。」
やっと、俺の番がまわってきた。
目の前に、写真で見た鬼集院さんが座っていた。
少し驚いたように見えたが、気のせいだろう。それより、やつれているようにみえる。俺が最後なので、早めに貰ってから終わらせてやろう。
「…お名前は、何ですか?」
「そう… いや、圭一で、お願いします。」
「…圭一さんですか? 間違いないですか?」
「? …はい。土が2つの圭に、漢数字の一で、圭一です。」
「…分かりました。」
サラサラサラとサインを書いて手渡してくる。
俺は、それを受けとり、頭を下げ、その場を後にする。
出口にむかう途中、顔の青白い男とぶつかったが、謝りもしなかった。
出口には、すでに圭一が、待っていた。
「悪い待たせたか?」
「いや、俺もさっき終わったところだ。」
「ほら、鬼集院さんのサイン。」
サイン色紙を手渡す。
「ありがとう、蒼夜!!」
「それじゃあ、ご飯食べて帰ろうか?」
「あぁ、蒼夜の好きな物を食べ行こうか!!」
近場の飲食店を調べようと、スマホを取り出すと、
「あれ?」
「ん、どうかした?」
「いや、つけてたお守りがなくなってる。」
昔、知り合いから、貰ったお守りだ。
「すまん、探してくるから、ちょっと待っててくれ。」
「一緒に探すか?」
たぶん、あの時… ぶつかったときに落ちたんじゃないかと思う。
「いや、大丈夫だから、待っててくれ。」
「了解。ここで待っとくな。」
俺は、再び戻り、お守りを探しに行く。




