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プロローグ
今も夢に見る。
武装した兵士たちが襤褸切れの様な服を着た人々を一方的に虐殺していく風景。
恐くて泣いて大人たちの指示する通りに逃げ惑った。引いてくれていた手がなくなり、何処に逃げればよいのかもわからなくなって強く願った。
どこか遠くへ。
ここではない、静かな誰も傷付けられることのない何処か。
奴隷を表す鉄の首輪を引かれて息が詰まった。無情にもそのまま持ち上げる。
恐くて恐くて苦しくて苦しくて強く願った。
どこか遠くへ。
気が付くと静かな森にいた。
水が飲みたいと思った。すぐそこに清らかな細い流れが見えたけれど、もう身体を動かす力は残っていなくて、酷い渇きの中でまた意識が失われた。
恐ろしい夢の風景を理解出来たのは現世の歴史を教わった時だ。師匠が頃合いを見計らって教えてくれたのはよく解かった。とても静かな目で自分を見ていたから。
その奴隷の反乱を「アルベリクの反乱」と呼ぶのだという。