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花と屍と獣と花火  作者: 燕子花猫丸
7/10

終わらない夜の永遠の終わり

 ♯5    終わらない夜の永遠の終わり


  ※                                       ※


 誰かに呼ばれた気がした。


 だけど、振り返っても誰も居なかった。相変わらず、そこには何もない。

 自分自身が何者なのかもよく分からない。どうしてここに居るのかもわからなければ、これからどうすればいいのかもわからない。

 分からないことばかりだったのだけれど、何故かあまり焦ってはいなかった。

 むしろ気が楽でさえある。なんでだろう。分からない。分からないけど、そんなに気にすることは無いような気もした。

 どうしてだろうか。こんなに身体の調子がいいのは久々な気がする。思い出せないけど、ずっと何かにとり憑かれて悩まされていたような感覚だった。

 ……でも、思い出せない。何も思い出せない。何を思いだせばいいのか、思い出せない。

 大切な何かを忘れている気がするけど、大切な何かが本当に存在したのかもわからない。

 分からないまま、ダラーッと時が過ぎてゆく。脳内で何かが揺さぶられた気がするけど、そんなに気にすることも無いだろう。そのまま、どこか遠くまで消えてしまいたい。

 霞のように離散して、そのまま風に乗ってどこかに。

 そんなことをしたところで、何かが変わる訳でもないのだけれど。

 一つ欠伸をして、何もない床に仰向けに寝転がる。


 何故か涙が出てきたけど、どうしてなのかは分からなかった。


 ♭                                          ♭


 今まで聞いたことないレベルの爆裂音と、閃光と、地響きが束になって襲い掛かった。


 ……ついに、始まったらしい。侵略者と、略奪者の、最初で最後の争いが。

 それを実感すると、自然と手の震えが止まらないでいた。どうしてだろうか。別に私が戦う訳でもないというのに。

「ねぇ、さっきのって何? すっごいどかーんってなったけど……」

 怯えるように、私の服の裾を掴む。……そうだ。私がしっかりしないといけない。

 今あそこで戦っているあいつに、託されたんだから。

「……お祭りよ」

「……え、お祭り?」

 出てきたのはそんな下らない嘘だった。当然の如く、不思議そうな顔で見詰められてしまう。

 もっといい言い訳があっただろうに、何を言っているんだ私は。

「えぇ。大きなお祭りが、あそこで始まったのよ。それはもう、すっごい大きなお祭りがね」

「へー、すごいね! お祭り! ハルもお祭りいきたい! りんご飴食べたい! それと、焼きそばとー、かき氷!」

「……あー、えっとね、そういうお祭りじゃないのよ。近づいたらその、絶対に怪我するタイプのお祭りというかね?」

「お店とか無いの? パパもママも言ってたよ? お祭りには色んなお店出るから、それを巡るのがとっても楽しいって。お店が無いお祭りって、どんなお祭りなの? 何もないお祭り?」

「あー、うん……なんていうかその……色々と爆発してるのよ。あそこのあちこちで。近づいたらそれに巻き込まれて、すっごい怪我しちゃうのよ」

「ばくはつ?」

「そうそう。爆発。だから、近づいたらダメなの。怪我したくないでしょあんたも」

「……うん、けがはしたくない。だって怖いし……ひっ!」

 無理やり説得していると、更に大きな爆発音と地響きが起こる。

「大丈夫よ。あんたは私が守ったげるから。ほら、早く部屋に戻りなさい。中の方が安全よ」

 自分の口下手っぷりにショックを受けつつ、裾を掴んで怯えているハルを室内に戻そうとするものの、何故か動いてくれなかった。

「……やだ」

「やだ? 何でよ。危ないわよ?」

「男なら、困っている女の子を助けてあげなさいって、パパも言ってたもん。だから、やだ。ジュリア姉ちゃんを、助けなきゃ。多分、アキラおじちゃんだってそういうと思うし」

 返ってきた言葉に、思わず呆気に取られてしまう。……まだ子供だというのに、この子の持っている精神力は、私以上のものを感じた。

 ……余計に、守らなければと思った。この子の未来のために。明日を迎えれるために。

 そのためには、向こうでドンパチしているあの子が命運を握っているのだけれど。

「……そう、じゃあ、一緒に見守ろうか。お祭りの行く末を」

「うん! そうする!」

「わん! はっはっはっは!」

「ちょ、ワンタン!? あんたいつの間に……」

 いつの間に隣に居たワンタンに驚きつつ、眼下から覗く激闘の様子をただ祈る様に見守る。


 また一つ、盛大な爆発音が響き渡った。


 ☆                                         ☆


 互いの一撃が交錯する度に、周りの地形が抉られてゆく。


 ぶつかる衝撃に、湖だったそこはあっという間にクレーターだらけの荒地に変貌してしまう。

 最早、意地と意地のぶつかり合いだった。私の銃撃がイヴァンの身体にクリーンヒットして身体が砕け散るものの、瞬く間に再生してしまう。

 私自身も、炎を纏った鉱石に飲まれて何度も灰燼と化してしまうものの、溜め込んでいたザウロエネルギーを消費する形でどうにか再生し、持ちこたえていた。

 それを繰り返すこと、三千回以上。一際重い衝撃が私の腹をおもいきりえぐり取り、ひれ上がった湖の底に叩きつけられてしまった。

「はぁ……はぁ……ヴェネティ、エネルギー残量は、どうなってるデス?」

『まだ余裕はあるで。八十五%は残っとる。さっき撃ったエネルギー弾の余剰分も回収してリソースに回してチャージは完了しとるからすぐに次の弾撃てるで……けどやな』

「ええ、言いたいことは分かるデス。……問題は、相手デスよねぇ」

 息を整えて身体を起き上がらせつつ、目の前に立ち塞がる炎を纏った強敵を睨み付ける。

「ははは、どうしたんだい? 息が上がっているように見えるけど? もしかしてもう限界が来ちゃっているのかな?」

 イヴァンは余裕の笑みを浮かべて、これでもかとばかりに挑発を続ける。

 弱点は分かっている。右胸に、エネルギー源であるサングライド鉱石のコアが埋め込まれているのだ。それを明確に一撃で跡形も無く吹き飛ばしたら、無限に再生してしまう強敵であれ、再生出来ずに消滅してしまう。

 ……その筈なのに、何度も何度もコアを的確にスナイプしているというのに、それがどうしたとばかりに、当たり前のように私の前に立ち塞がる。

 何度も、何度も、何度も、何度も。成程、これが嫌がらせデスか。

「ハッハッハ……そんな訳ないでしょ……そういうあなたこそ、息が上がってるデス、よ!」

 返事と同時に、コア目掛けてエネルギー弾を打ち放つ。命中すると同時にイヴァンの身体がパズルのようにバラバラとなるものの、何も無かったかのようにあっという間に再生する。

「ん? 何か言ったかな? ちょっと聞こえ辛かったんだけど」

「……少しくらい手加減してくれても良いんじゃないんデスかね」

「仕方ないじゃないか。こんなに楽しい打ち合いは久々なんだよ。お願いだからもう少し楽しませて欲しいものだね!」

「バリバリに聞こえてるじゃないデスか!」

 最早お互いに会話をする余裕さえなかった。少しでも隙を見せたら攻撃を仕掛けてきて、自分の身体を吹き飛ばされてしまう。

 売り言葉に買い言葉とは、正しくこのことだろう。相手が攻撃を仕掛けてくるから、それを防ぐためにこっちもエネルギー弾を打って相殺させる。

 この時点で、実力は互角だった。いや、下手をすればこちらが圧されているかもしれない。

 なにせ、相手がどれほどの余力をまだ残しているのかさっぱり読めないのだから。無尽蔵なのかもしれないし、余裕ぶって実は底が見えつつある可能性もあるだろう。

 ……出来れば後者であって欲しいデス。そう淡い願いを込めつつ、また一発エネルギー弾を弱点に叩き込む。エネルギー残量、六十八%。……うーん、これはどうするべきか悩む。

『ボス、このままやったら埒があかんで。持久戦はこっちに不利や。向こうの底がまだ読めん』

「言われなくても分かってるデスよ! 一撃で完膚無きまでに叩きのめす火力がこっちには足りないんデスって!  ただでさえ相性が悪いというのに……」

「はははははっ! 内輪もめしている余裕なんてあるのかな? まだこっちは行けるよ!」

「あぁもううるさいデスね! ヴェネティ! 銃剣から巨盾にモードチェンジ!」

「もうしとる! でもそれ以上に向こうの投擲が早いから間に合わんって!」

「じゃあそれを上回るスピードでチェンジすればいい話じゃないデスか!」

「んな無茶なうぉう!?」

 銃剣でエネルギー弾を打ちつつ、巨盾で相手の攻撃を防御する。モードチェンジのタイムラグは殆ど無い筈だというのに、向こうはその隙を狙って私の茨鎧に大きなダメージを与える。

 最早、鎧の意味すらなかった。相性の問題は仕方ないとはいえ、どんな攻撃も通さないザウロネスの文明と技術の結晶である赤薔薇の戦闘鎧が、ここまで相手の攻撃を受けてしまうとは。

 ここまで来ると少し心が挫けそうだった。……いやいや何を考えてるデスか。挫ける暇なんて無いというのに。

 考えろ。考えるデス。このままじゃ埒が明かないのは明白デス。

 考えている最中でも、イヴァンの攻撃の手は全く止めてくれない。またこっちのラグを狙って炎の鉱石を投擲してきて、身体の半分が飛ばされる。

 ……あぁもう、埒が明かない。エネルギーを体内に流し込んで回復を試みつつ、イライラだけが積もってゆく。……もういい。こうなったらヤケクソデス。

「ヴェネティ。方針を変えるデス。茨鎧の装甲を二段階解除するデス。モードも銃剣から尖槍にチェンジで。残っているエネルギーの三割を尖槍に移してくだサイ」

『へ? いやいやボス、正気かいな! それって……』

「正気デスよ。もう防御なんて意味ないデス。……攻撃力にステータスを全部注いで、向こうの弱点に一点突破するしかないんデスからね!」

『もうただの捨て身タックルやないかい! もう知らん! どうなっても知らんからな!』

 ヴェネティは文句を言いつつも、最終的には私の体を覆っていた鎧の装甲の一部を捨て、自らの体を巨大な銃剣から鋭い槍へと変化させた。

 流石ヴェネティ。なんだかんだ言いつつ、言う事は聞いてくれる。

 鎧の一部を捨てたから、見た目がフルアーマーから大分スマートになった上に身軽になった。

「……ん? どうしたのかな。その格好と、武器。もしかして……」

「もしかしてデスよ。攻撃される前にこっちから畳みかけることにしたんデス。このように」

 地面が捲り上がる勢いで地面をけり上げて、面白そうにニヤニヤしているイヴァンとの距離を一気に詰める。

 そして、間髪入れずにエネルギーを帯電させた尖槍で思いっきり右胸を貫き、勢いそのまま地面に叩きつけた。不意を突かれたのか、今まで余裕そうだった彼の顔が少し歪む。

「う、ぐっ? へ、へぇ、面白いことするねぇ、でも、その後どうするのかな?」

「分からないデス? こうするんデスよ」

 聞いてきた彼に、今までで一番の笑みで返事をして、帯電していたエネルギーを思いっきりイヴァンの身体に逆流させた。

「うぐがあfsdfcfsdcdxcsdfdsfsfdsvd!!」

 イヴァンの身体をザウロネスエネルギーが虫食んでゆく。体のあらゆる部分から頑丈な蔦や茨が生えて、彼自身を瞬く間に拘束してゆく。イヴァン自身が高熱を発し、それを燃やそうとするものの、こっちの方がスピードも濃度も勝っていた。

 凄まじい奇声を発して抵抗するものの、あっという間に蔦は彼を繭状に覆いつくした。

「……ヴェネティ、追い打ちを」

『わーっとる』

 二つ返事でヴェネティは返事をし、繭と化したイヴァンの足元に、銃弾を一発かます。

 それは直ぐに芽を出して、そこら一面に鋭い茨状の刃が自生した。

『これで、どうや!』

 合図とともに、刃が射出され、幾千ものそれが全て繭を貫く。

 少しの沈黙の後、繭の隙間から血のような液体がドロドロと溢れてゆくのが見て取れた。

 あんなに激しい攻防を繰り広げていた割に、あっけない幕切れだった。

 張りつめていた空気が、やっと綻ぶ。……よかった。不意打ちが上手くいったデス。

「……どうデスか。私だって、やれば出来るんデスよ」

『は、はははは、マジか。やってもーたんかこれで。思ったよりあっけなさ過ぎやろ。あんな見栄張りおってからに。ワイらを侮るからこうなるんやざまーみろ!』

「ヴェネティ、口が悪いデスよ」

『しゃーないやろ。色々うっ憤が溜まっとったんや。てかまだ足りん位や。てか我慢出来ん。もう一発かましたろかな……』

 緊張が緩和されて、ヴェネティも明るさを取り戻すと私との連結を解き、獣形態へと戻った。

おもむろにそこら辺に落ちていた刃の一本を取り出して、既に動かなくなった繭へと近付く。

やっと終わった。何千年にも渡る因縁にやっと決着がついた。……なのだけれど、どうしてだろうか。……嫌な予感がする。まさか。

「……ヴェネティ! 離れて下さい!」


「油断大敵とはまさにこのことだよね。ザウロネスのお嬢さん」


 憎たらしい、爽やかな声がする。次の瞬間、繭から何かが射出されて、ヴェネティの身体を貫き、そのまま思いっきり地面を転がった。

「……な、なんや、て?」

 何が起こったのか、分からなかった。それは叩き付けらてた本人も同じだった。止めを刺したと思った。これでもう勝ったも当然だと思った。

 だというのに、生きていた。イヴァンが、傷一つもなく平然と立ち塞がっていたのだから。

「ヴェネティ! 大丈夫デスか!」

「……すまん、これ、抜いてくれんか……無茶苦茶熱いんや……」

 確認すると、ヴェネティの腹は茨の刃に貫かれていた。しかし、ただの茨じゃない。

刃が、灼熱の炎を身にまとっていた。まるで、イヴァン自身の特製とザウロネスの特製が混ざり合ったような……えっ、まさか。

「そんな驚くことはないだろう? まさかさっきの一撃で僕が死んだなんて思ってないだろうね? 確かにちょっと油断したけどさ。……あーあ、なんかよく分かんないの混じっちゃったじゃないか。どうしてくれるんだいこれ」

「……イヴァン、あなたまさか……ザウロネスの血を受け入れて混ざり合ったのデスか!」

 そこに居たのは、燃え盛る鉱石と、鋭い茨状の蔦や刃を器用に操るイヴァンの姿があった。

 考え得る限り、最悪の展開だった。あの状況でザウロネスの力を吸収し、適合させ、自らの糧としてしまった。混ざり合う筈がない二つの力が、混ざり合ってしまった。

「ははは、その通りだよ。いやぁ、悪あがきはしてみるものだね。まさか成功するとは思わなかったけどさ」

「……流石にちょっと想定外デスよ。何でも出来過ぎじゃないデスか」

「そう? 要は臨機応変にどう対処できるかが鍵になるんじゃないかな? 僕にはそれが出来て、君達にはそれが出来なかっただけの話さ。……さぁ、どうするのかな? このままだと君も、君の仲間も危ないんじゃないのかな? んんー?」

 見事に、形勢が逆転していた。煽られているものの、正直言ってどう太刀打ちすればいいのかいい方法が思い浮かばないでいる。

 考えろ。考えるデス。この状況をどうにか打開する方法を……。

「あ、そうだ。このままだとつまらないし、時間も制限させて貰おうかな」

 すると、しびれを切らしたのか、イヴァンは右手を天に翳して、中型の隕石群をあっという間に生み出す。それらをとある方角に狙いを定める。

 そこでやっと気が付いた。今までで一番の邪悪な笑みが、私に向く。


「知っているよ。君は、この星の特定の人間を守ろうとしている。自分自身の私怨だけじゃなくて、その人間達のために、僕を倒そうとしているんだろう? だったら、その芽は早めに摘んでおかないとね。……邪魔だし」

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 その方角の先には、古城があった。この星で一番、大切な居場所が。

 だけど、叫びは届かなかった。


 古城の上空に、隕石の雨が降り注いだ。


 ♭                                          ♭


「……ねぇ、ジュリア姉ちゃん……あれって、なに?」


 波留が、怯えながら私に訊ねてくる。

「ワンワン! ワンワンワンワン! ウウウウウウウ!!」

 ワンタンが、これ以上ない程に暴れまわり、威嚇を続けている。

「……ごめん、私もちょっとこれは……」

 私自身に至っては、開いた口が塞がらないでいる。

 そして、私を含めた皆が一斉に、夜空に広がる光景を茫然と見ていた。

 分かってはいた。これから起こり得る大惨事を目の当たりにして、どうすればいいのか、分かってはいた。

 それなのに、茫然と空を見上げいた。あまりに、その光景が幻想的だったからだ。なにせ。


 流星群が、私達の下に、今様に降り注ごうとしているのだから。


 まるで夢のようだった。幼い頃、初めてプラネタリウムを見に行った時の感覚と似ているかもしれない。

 沢山の星が私を囲んでいて、今にも吸い込まれそうだと子供ながらに感動したのを今でも覚えている。だからか、こんな状況に陥っても、私は今一実感が湧かないでいた。

 幾つもの星が、頭上から降り注ぐ。段々と、段々と、それが大きくなってゆく。

 分かっている。分かっているのに、何故か一歩も動けられない。


『……ア……リア……ジュリア! おい聞いとるか! ジュリア!』


 呼ぶ声がして、ハッと我に返る。通信用に付けていたヘッドセットから関西弁の怒号が聞こえた。ヴェネティだ。

「……何。なんかあったの」

『何かあったやないて! そっちに大量のゴーレムが向かっとる! 造譲獣共に命令出してそっちに向かわせとるけど数がかなりヤバい! すまんがそっちで対処してくれ! こっちもこっちで精一杯なんや!』

「……そう、分かった」

『反応薄っ! あぁそっか緊張しとるんか……あ、あれや! 対イヴァン用にチューニングしたギアあるやろ! それ使ったら多少なりとも楽になる筈や! とりあえずどうにか持ちこたえてくれ! こっちもどうにかぶっ倒すから! あぁもう鬱陶しやっちゃなぁもう! すまんが後は頼むで! また後で……』

 そこで、ブツンと通信が勝手に切れた。うんともすんとも言わなくなったインカムが邪魔になったから、外して捨てる。

「……お姉ちゃん? 大丈夫? 顔が怖いよ?」

「くーん……くーん……」

 ハルが今にも泣きそうな顔で覗きつつ、抱きついてくる。私以上の震えている。

 ワンタンも膝に前足を乗っけつつ、こっちの顔を覗き込んでくる。

 顔を上げると、流星群に見せかけたゴーレムの大群が凄まじいスピードでこっちに落ちてきていた。軽く五百体以上は視認出来る。この大群を、一人で相手をしなければいけないのか。

 そう思うと、変な笑みしか出てこなかった。

 正直言って無茶苦茶過ぎる。確かにこっちは私がどうにかするといったはいいものの、どうにかするにも限度がある。 

造譲獣を回してくれると言ってものの、その数もたかが知れているだろう。

 それに、こっちは人を守りながらだ。子供と、重病人と、子犬。守りながら防衛するのは、流石に荷が重すぎた。……とか、言っている場合じゃないか。

 出来るかどうかじゃない。やらなくちゃいけないんだ。私にしか、それが出来ないんだから。

 この子達を守らなければ。……病と闘っているあいつを、守らなければ。

 ここが、私の居場所なのだから。

「……ったく、もう……どうにかすればいいんでしょどうにか……」

「……お姉ちゃん?」

「死にたくなければ私の後ろに隠れてなさい。……目に映ってる敵は全員ぶっ潰す」

 もう腹は括った。覚悟を決めて、愛用のスナイパーライフルの引き金に手を掛けた。


 そして、迫りくる星に向かってトリガーを引いた。


 ☆                                          ☆


『ボス! おい! 大丈夫かいな! おい!』


 耳元で、キンキンとうるさい声がする。おぼろげになっていた視界が、ゆっくりと晴れてゆく。ようやく、私自身が倒れていたことに気が付いた。

「……うるさいデスね……聞こえてるデスよ……いてて……」

 ヨロヨロと立ち上がると、周りに見事なクレーターが出来ていた。

 周りの地形が見事に変形している。湖だった面影は既に無い。それどころか周辺を囲んでいた樹海も全て灰塵となって消え失せた。全体が

 荒れ果てた大地には、憎たらしい笑みを張りつけた侵略者がこっちを見下ろしている。 

それだけで、相手の凄まじさが身に染みて分かる。

 ……何せ、当の本人が平然と目の前に無傷で立ち塞がっているのだから。

「あれま。また立ち上がった。君、意外とタフだね。驚いたよ」

「……そっちがしぶとすぎるだけです。何回首切って胸元抉ってちぎったと思ってるデスか」

「そんな君こそ頭部半分抉れてるよ? 大丈夫? 糖分足りてるかい?」

「余計な……お世話……デスよ!」

 欠損した部分を高速で生やして、ヘラヘラと挑発しているイヴァンの頭を掴んで思いっきり握りつぶして投げ飛ばした。

「あっはっはっは、痛いなぁ。お世話なんてした覚えないんだけど?」

 ……数秒で新しい頭が生えた。こいつはどれだけ無尽蔵なのデスか。もう笑うしかない。

『……ボス、ヤバい。溜め取ったエネルギー残量が十パーセント切ってもうた』

「……造譲獣達の残りはどうなってるデスか」

『五分五分やな。あいつが解き放ったゴーレム共殆ど潰したんやけど、こっちの造譲獣共もほとんど潰されとる』

「……ベースの方は……どうデス?」

『さっきから無線飛ばしとるんやけど反応無しや……どうなっとるかもわからん』

「まぁ、そうデスよね……どちらにせよ早く駆けつけないと」

『……あの腐れ外道をぶちのめす方法があればの話やけどな……』

「まぁ、デスよね……」

 もう乾いた笑いしか出てこなかった。有効打になりそうな方法は思いつく限り試してみたデスが、見事に全部不発だった。

 お手上げデス。なんデスかあれ。チートじゃないデスか。弱点と思っていた心臓を何回握りつぶそうとも、頭を吹き飛ばそうとも、全身を灰燼に帰そうとも、何尾事も無かったかのような胡散臭い笑みを浮かべて立ち塞がるのデスから。

 あんなに溜め込んでいた膨大な量のエネルギーも、枯渇してしまう始末デスし。

「ん? なんだい? 僕の顔に何か付いているかな? それとも、僕という個体種としての力に恐れ戦いたのかな? はっはっはっは、僕も罪深い存在ということかな?」

 睨みつけていると、すっとぼけた馬鹿々々しい答えが返ってきた。

「はははっ、そうデスね。……憎たらし過ぎてブチ潰したい位デスよ!」

「もう潰しているじゃないか。ほら、折角の綺麗な顔もドレスも台無しじゃないか」

 油断しきっているイヴァンに近付いて顔を思い切り握りつぶす。

 ……そして当たり前のように、あっという間に再生した。

「これはドレスじゃない……ザウロネスに伝わる伝統的な由緒正しき戦闘服なんデスよ……馬鹿にしないでくれますかね」

「馬鹿にはしてないさ。……でも、君は弱いのさ。弱いから、君にはこの服は似合わない。それを分かってて、ただガムシャラに向かってくる君は本当に……愚かだよ」

「ははははは……余計なお世話デスよ! ヴェネティ!」

『ボス! これ以上はあかん!』

「いいから! エネルギーをギアに回すんデス! 早く!」

『あーもうわーったわーった! どうなっても知らんで!』

 ギアのコアと一体化しているヴェネティを無理矢理説得する。エネルギーが体内に巡る。

 そして、私を……ザウロネス全体をコケにしたイヴァンに一瞬で間合いを詰めた。

「はっはっはっ、また似たような特攻かい? 何度もそんなことしようと変わらないよ?」

 笑いながら、また跳ねのけられる。しかし、その腕は空を切った。

「……ん? あ、れ?」

 余裕そうだった表情が一瞬歪む。そして。

「残念、後ろががら空きデスよ!」

 そんな忌々しい侵略者の背後に回り込んで、槍状に変化させたウェポンギアで弱点のコアを力任せにぶち壊した。

 コアを貫かれたイヴァンは無様に地に落ちて、その反動でまた周辺の地形が凄まじい音を立てて変わる。そしてようやく、荒地に沈黙が流れる。

「……ヴェネティ……エネルギー残量は……」

『……三パーセントや。ったく、ギリギリ過ぎでホンマに……』

 本当にギリギリだった。……これで、やっと一安心した。

 さて、早くジュリア達の下へ急いで戻らなければ。思ったより時間が掛かってしまったデス。

「戻るデスよ。ヴェネティ。艤装解除して急いで戻らなければ……」


「ん? どうしたんだい? 戻るのには早いと思うんだけなど?」


「……えっ?」

「ボス! あかん!」

 後ろから、聞こえる筈のない声がした。そんな馬鹿なと思ったのもつかの間。私は吹き飛ばされ、ヴェネティの身体が幾重もの鉱石の剣で貫かれた光景だった。

 血反吐を吐いて倒れる相棒の姿を目の当たりにして、一瞬何が起こったのか分からず茫然と立ち尽くす。そして、私の左胸も同様の刃で貫かれた。

「……くっそ……むちゃくちゃ痛いやんけこれ……ボス……平気か……?」

「それはこっちのセリフデスよ……見れば分かるデスよね……もう、ヘトヘトデス……」

 お互い、既に限界だった。それもそうだ。溜め込んでいたエネルギーどころか、自分自身の生命エネルギーさえも絞り出して流用してギアに組み込んでしまったのだから。

 ありったけの力を込めて、イヴァンに思いっきりぶつけたのだから。

 そして、見事にそれは失敗に終わった。

「あれ、さっきのが本気かな。うーん、ちょっと足りないなー。もっとすごいのが来ると思っていたんだけどなぁ。……まぁ、程よい暇つぶしくらいにはなったかな」

 何事も無かったかのように、子供のような無邪気な笑みを私達にまき散らしている。

「……けっ……ケツの青いガキがぬかしおる……」

「そのケツの青いガキに君達は殺されかけてるんだけど? 君中々面白い事言うねぇ」

「ははは……何も面白くないデスよ……」

 どうすることも出来なかった。こればかりは本当に参ってしまう。縁も所縁もないこの地で、必死に溜めたエネルギーが見事に枯渇してしまったのだから。乾いた笑いさえも出てこない。

「……ボス、どないする。もう、何も残っとらんで……」

「どうするも何もへったくれも無いデスよ……あんなの勝てる訳ないじゃないデスか……身の程わきまえるデスよ……」

「いやボスが卑屈になってどないするんやって……気持ちは分かるけどやな……でもどうにかしてこいつぶっ倒して基地に戻らんと……」

「簡単に戻れたらこんなに悩んでないデス……ん? 基地……あっ!」

 ヴェネティの言葉に、一筋の光が見えた。

 そうか、その手があった。というよりこの手しかない。この事態を切り抜けるにはこの方法しかない。……その後どうなるかは二の次デス。

「な、なんやボス! いきなり大きな声出しおって!」

「すいません、でも、いいことを思いついたデス。ちょっと耳を貸して下さイ」

 驚くヴェネティはさて置いて、思いついた案を耳打ちする。

「……はぁ? いやいやボス、正気か? 気でも狂うたんか! んなことしてもうたら……わいら死んでまうやないか!」

「えぇ、死ぬかもしれないデスね。でも、だからどうしたというのデスか。……あそこが守れるのであればそれでいいじゃないデスか」

「……マジかいな」

「えぇ、マジデス」

 当然ながら反論してくるヴェネティに、私は自然とそのような言葉が出てきた。

 以前の私では信じられない言葉だ。ヴェネティは目を丸くさせて、こっちを見つめる。

 ……でも、私自身の言葉に嘘偽りはない。本心で、あの場所が、大切な存在が生きてさえいればそれでいいと思っていた。そのためなら、私の身なんてどうなってもいい。

「……はぁ、分かった。ボスがそう言うんやったら、眷属獣としては従うしかないやん」

 私の思いが通じたらしい。ヴェネティは大きく溜め息を吐いて、立ち上がる。

「分かってくれた感謝するデスよ。ヴェネティ。最後まで迷惑かけて申し訳ないデス」

「ほんまやで全く……でもこれだけは言っとくでボス。……わいは、死ぬつもりはないからな。やから、ボスも死ぬなんて言わんといてくれ。死んでしもうたら、元も子もない」

「……えぇ、分かってるデスよ」

 ヴェネティはそれだけ告げて、残った僅かなエネルギーを媒介にして、小型形態に変化する。

「……ん? もう世間話は終わったのかな? もう満足した? 待ちくたびれたんだけど」

「えぇ、待たせてしまったデスね。でも、安心してくだサイ。もう、覚悟は決めたデスよ。もう少し、楽しもうじゃないデスか!」

 欠伸をして胡坐をかいていたイヴァンに、大砲型のウェポンギアの砲口を向けて躊躇せずに撃ち放つ。しかし、その弾はいとも簡単に避けられてしまった。

「あれ? さっきまでの威勢はどうしたのかな? あんな攻撃、避けて下さいって言って欲しいようなものじゃないか」

「よそ見してていいんデスか? まだ決着は付いてないじゃないデスか」

「もう決まったようなものでしょう? ……もういいや、疲れたし、終わらせようか」

「ははは、……お断りするデス!」

 武器を長槍形態に変形させて、死にもの狂いで突っ込んでゆく。


 もう既に、心の中でくすぶっていた迷いはなかった。


 ♭                                          ♭


 もう既に、限界は超えていた。


 無限に降ってくる鉱石のゴーレムを、屋上のテラスからスナイパーライフルで撃ち続けて、多分一時間近くは経っただろうか。

 もしかしたらそれ以上経過しているかもしれないし、まだ五分程度しか経っていない可能性だってある。既に時間の感覚が無い。考えるのも面倒臭い。

「……はぁ……はぁ……キリが無い……ウジャウジャ湧きすぎじゃないのよ……」

 ぜぇぜぇと息を吐きつつ、溶鉱弾を装填して銃を構え直す。私が聞いていた情報とは全く違った。降ってきた隕石が地面に着弾すると同時に、石から植物の蔓が生えて、地面に根を張り、養分を吸収して肥大化して、ゴーレムの姿を形作っていた。

 しかも無尽蔵に湧いてくる。以前相対したゴーレムとは全く別物だった。

 アウルドルから教えられた弱点であるコアを確実に撃ち抜いているというのに、消滅したと思いきやアメーバのごとく再生と増殖を繰り返す。

 そんな悍ましい量のゴーレム共が、城の周りを取り囲んでいる上に、目や腕から高熱線のビーム攻撃を矢継ぎ早に放っていた。

 古城の周りは防御シールドでどうにか侵入を防いでいる状況ではあるものの、破られるのも時間の問題だろう。むしろ、いつ破られてもおかしくは……。

「ジュリア姉ちゃん、あそこ! おっきいのが! 入ってくる!」

「ワン! ワンワンワンワン!」

「あーもう! 分かってるわよ!」

 見張りをかって出ていたハルが、双眼鏡を外して私の裾を掴んでくる。ワンタンもさっさと倒せとばかりに騒ぎ立てている。

 半ば逆切れしつつ、急いで移動してシールドを割ろうとしているゴーレムのコアを撃ち抜く。

 これが好機とばかりに何体も割ろうとしていたけれど、一体残らず片付けた。

 ……これで、何体目だろうか。もう数えるのも面倒臭い。

 二十か三十波目の敵の攻撃を退けて、大きく息を吐いて額の汗を拭った。

「……ったく、こんなにしぶといなんて聞いてないわよ……」

「ジュリア姉ちゃん、大丈夫? おじちゃんよりお目目がずーんってなってるよ?」

「大丈夫よ……こんなの、よその国でドンパチやった時よりだいぶマシだし……でも、このままじゃ本当に埒があかないわ。ったく、あいつ何やってんのよ。あんだけ啖呵切っといて……」

 心配しているハルの頭をポンと叩いて、森の向こうに広がる湖の方角を睨む。

 地面が割れんばかりの轟音と地響きが響くと同時に、大きな爆発も起こっていた。しかも、数秒に一度のタイミングで。 

 人が介入する隙間なんてある筈なかった。向こうで何が起こっているのかもわからない。

侵略者と侵略者が、己の使命を賭して、ぶつかり合っている。それだけは分かっていた。

 無線で確認しようにも、ヴェネティの一方的な忠告があったあとは全く応答しなくなったし、どんなことになっているのかは知る由もない。本当に、向こうで何が……。

「あ! お姉ちゃん! あっちにおっきいのが! こっちとそっちにも!」

「はいはい分かったわよ! 休む暇もないじゃない……」

 向こうがどうとか考える余裕なんてなかった。言われるがまま、侵攻してきているゴーレム共を必死に打ち取る。

 その瞬間、一際大きな爆発音が響いた。今までの比じゃない規模の地響きが起こり、上空に何かが射出されるのが見える。

「……えっ? 何よあれ……」

「ワン! ワンワン! ワンワンワンワン!」

 何かを察したのか。ワンタンが先ほど以上に威嚇をしている。

 それを見て、私自身も身震いしてしまう。射出された何かが大きな弧を描いてこっちに向かってきているのだから。空を切る轟音が徐々に大きくなる。

「……ねぇ、ジュリア姉ちゃん、何かこっちに来てるよ? ……姉ちゃん!」

 ハルの声が届いて、私の中の靄が晴れた。その何かに急いで照準を合わせて、向かってくる何かに銃弾を撃ち込む。

 ただ、銃弾は全弾見事に跳ね返されてしまう。それどころか勢いがますます増すばかりで、そのままの勢いのまま、その何かはゴーレム共がウジャウジャいる城の前に墜落した。

 地響きと共に、辺り一面が土埃が舞い上がる。同時に発生した突風に、私もハルも体を持っていかれそうになる。

「……お姉ちゃん、あれっ!」

 しばらく視界が悪い状況が続く中、双眼鏡を覗いていたハルが何かに気付いた。

 慌てて私もゴーグルを掛けて、砂埃の先を確認する。

「……ちょっと、あれって……えっ?」

 呆気に取られてしまう。そこにあったのは一際小さくて見たことの無い白いゴーレムだった。

 違和感丸出しなそれが、黒色をした大型のゴーレム群の中央にポツンと存在している。

「ワンワン! ワンワンワンワン!」

「ワンタン、どうしたの?」

 その光景が異様としか言えなくて、何かの気配を察したワンタンはずっと威嚇を続けている。

 私自身も警戒を怠らずに、照準をそのゴーレムに向けて、引き金に手を掛ける。

 ……何だろうか。嫌な予感がする。あんな小型ゴーレムの情報なんて全く聞いていないからだろうけど、それ以上に変な汗が出てきている。

「……ヴェネティ、変なのこっちに来たんだけど、何あれ。聞こえてる? ねぇ」

 確認の無線を送ってみるものの、やっぱり反応はない。

 湖の方も、間髪入れずにドンパチが続いている。

 向こうもそれどころじゃないことだけは分かった。そして、そんな謎の存在に動きがあった。

 周りのゴーレムたちが、小型ゴーレムの下に集まってきていた。


 次の瞬間、小型のゴーレムが、大型ゴーレムを喰らい始めた。


「……えっ?」

 いきなりのこと過ぎて、思わず二度見してしまった。

 ワンタンも、ハルも、何が起こっているのか理解出来ずに、ただ茫然と立ち尽くす。

 一体、また一体と、喰らうごとに、小さかったゴーレムが変形されてゆく。


 気が付くとそこには、大型ゴーレムの何倍もの大きさを誇る超大型ゴーレムが存在していた。


「お、お姉ちゃん、あれ……何?」

「……私が知ってるわけないじゃない……でも、これだけは分かるわ」

 今まで以上に怯えながら、ハルが私に縋ってくる。でも、縋られても困る。想定外過ぎて付いていけないでいるのだから。とはいえ、これだけは分かっていた。

 何か行動を起こす前に、排除しなければ。

 思い立ったら即行動に移した。超巨大ゴーレムに溶解弾を何発も撃った。

 ……だというのに、全く効かない。それどころか弾を吸収した。そう来るのであればと思い、弾を変え、ギアを変え、ミサイルも撃ち込んでみたけど、見事に無効化される始末だった。

「いやいや、うそでしょ……全然効いてないじゃないのよ!」

「ワンワン! ワンワンワンワン!」

「分かってわよ! 分かってるけど! あんなのどうすれば……」

 どうしようもないのは分かっていた。どうすればいいのかさっぱり思いつかない。

 焦ったら駄目なのは分かっている。焦ってところで何も解決しない上に良いアイデアも思い浮かばない。……だけど本当にどうすればいいのか思い浮かばない。

 そんな私を嘲笑するように、超巨大ゴーレムは一歩、また一歩と近付いてくる。

 

 そして、ゴーレムの一振りで、ついにシールドが淘汰されてしまうのだった。


「お姉ちゃん! ……お姉ちゃん!」

「分かってるわよ! あれ以上は入れさせない!」

 言われなくても分かっていた。ここは守り抜くと心に決めていたのだから、死ぬ気で守り通すしかない。あいつがもし目を覚ました時、この場所を残しておかないといけないのだから。

 だけど、全く攻撃が効く気配がなかった。

「あぁもう! あんなのどうすればいいのよ! あんなの出て来るとか聞いてないわよ!」

「お姉ちゃん! 後ろ!」

「何よ今度は! 鬱陶しいわ……ね……」

 攻撃の手を止めないでいると、必死の形相でハルに手を引かれる。

 そして、振り返ってみた光景に、愕然と立ち尽くした。


 白いゴーレムが何十体も降ってきて、周囲のゴーレムを捕食し、合体して折り重なっていた。


 何十体もの超巨大ゴーレムが、古城の周りを取り囲んでいた。

「ワンワンワンワン! ワンワンワンワン! ヴヴヴヴヴヴヴっ!」

「お、お姉ちゃん……どうするの? おっきいの、沢山いるよ?」

 ワンタンが吠える。ハルが心配そうに見つめる。

 超巨大ゴーレム軍団が一斉に手を宙にかざし、地中からエネルギーを吸収して、一本のビームサーベルを生成していた。

 今にも、サーベルを振りかざして攻撃体勢に移行しようとしている。

 頼みの綱であるシールドは既に機能していない。最早、詰んでいた。

 諦めたくない。アウルドルネも、ヴェネティも、ハルも、ワンタンも、めげずに、心を折れずに、諦めずに前を向いている。勿論、……アキラも。

 だけど、私の心はもう折れそうになっていた。

 こんなの無理だ。防ぎようもない。次の瞬間、一斉に攻撃を受けて、古城諸共消し炭となってしまうのが関の山だ。攻撃も効かない。助けは呼べない。最早施す手は思い浮かななかった。

「……ごめんね、ダメなお姉ちゃんで。もう、どうすればいいか分かんないや……」

 ハルに謝りを入れて、武器を降ろす。

 夥しい光を帯びた刃が、振り下ろされる。もう、全てを諦めて目を閉じた。


「おいおい、まだ終わっとらんのに勝手に終わらせんといてーな。嬢ちゃんらしくないなぁ」


「……え?」

 終わらなかった。いつの間にか、一匹のへんちくりんな大型動物が存在していた。

 

 そして、その大型動物が、超大型ゴーレムを一体残らず倒してしまっていた。


 何が起こったのか。真面目に分からないでいた。心配そうにしていたハルも、吠えまくっていたワンタンも、目の前の光景が信じられずに茫然と立ち尽くす。

 そんな私達に、こんなことをして当たり前のような素振りで、ヴェネティはこっちに近付く。

「何や、顔になんかついとるんか? そんな顔せんでもええんちゃう?」

「いや、そんな顔するわよ! どうしてここにあんたが……アウルドルネはどうしたのよ!」

「あぁ、そういうことな。ちょいと忘れ物取りに来たんや。ついでにちょっと様子見や。いやー、なんや危なかったっぽいな。間に合ったみたいでよかったわ。坊主も平気か?」

「う、うん……大丈夫……」

 キョトンとしたまま頭をポンと叩かれたハルは、まだ状況把握が出来ていないらしい。

 挙動不審のまま、その場で立ち尽くしている。

「んー、でもちょっとヤバないかこれ。まさかシールド壊されるのはちょいと想定外やで」

「そ、そうよ! どうするのよこれ。シールド張り直しとか出来ないの?」

「出来る訳ないやん。ただでさえエネルギーの残りがヤバいんやで。……まぁでも安心せい。直ぐに終わらしたる」

「……ヴェネっち! あそこ!」

 ポカンとしていたハルが、何かに気付いて声を荒げる。

 指を差した方向には、倒した筈の超巨大ゴーレムの一体がいつの間にか起き上がり、こっちに向かってきていた。しかし、ヴェネティは振り返なかった。

手元に小さめの光弾を作り出したかと思うと、見向きもせずにそのゴーレムに打ち込む。

 そして、胸に直撃したかと思いきや、感電したような素振りを見せて、今度こそ倒れ込んで動かなくなった。

「……ゆーたやろ、すぐに終わらしたるって。もうちょいだけ耐えてくれ」 

 それだけを告げて、ヴェネティは踵を返したと思いきやテラスを降りて、とある場所へと向かった。……え、忘れ物ってもしかして。

「ヴェネティ、忘れ物って……それ?」

「そやで。安心せい。逃げるんやない。……これを利用するんや」

 そう言って、ヴェネティは忘れ物と称し宇宙船たに手を翳す。全身から蔦が生えたと思いきや宇宙船を囲む様に包みこんだ。

 包み込んだより、取り込んだと表現した方がいいかもしれない。

 気が付くと、目の前には、宇宙船と融合して戦闘機のような姿と化したヴェネティが存在していた。いや何よこれ何でもありじゃない……。

「か、かっこいい!」

「ワンワン! ワンワン!」

ハルもワンタンも、目を輝かせながらそれを見つめていた。あぁ、確かにこういうの好きそうだもんね、子供だし……。

「……んじゃ、ちょっくら行ってくるわ。頼んだで。ジュリア」

「え、えぇ……分かったわ」

 ちょっと動揺しつつ、慌てて返事をすると、戦闘機モードとなったヴェネティはあっという間に飛び去ってゆく。

 

 その後ろ姿は、何かを覚悟したような背中をしていた。


 ☆                                         ☆


「ねぇ、聞いていいかな。どうして君はそんなにしつこいんだい? 鬱陶しいんだけどさぁ」


「……理由なんて……単純デスよ……あなたが大嫌いなだけデス……」

「そんな理由で、縁も所縁も無いこの星を守る理由になるのかな? 理解出来ないんだけど」

「そんなの、どうでもいいじゃないデスか……」

「やっぱり、あそこに大切な存在が居るからだね。だって、あそこに手下を送り込んでから目の色変えちゃったもん。ははは、君って意外と単純だね」

「そんなこと……どうでもいいじゃ……ないデスかああああああああああああ!!」

 うるさい。耳障りにも程がある。それ以上に余計に腹が立つことがあった。

 さっきからネチネチと話しかけてくる彼の言葉が、一言一句正論で、否定することが出来ないことだ。なにせ、私の中に残っているエネルギーは既に枯渇しているのだから。

 顔を抉られようと手足が捥がれようと体が爆発四散されようとも、無理矢理絞りだす形でどうにか再生を繰り返していたものの、再生にかかる時間が最早間に合わない。

 再生する前に、イヴァンに別の部位を削り取られる。

 最早、勝負じゃなくなっていた。ただの一方的な暴力と化している。

 もう抵抗する力もほとんど残っていない。気力と根性のみで、雄叫びをあげながら、悠然と立ち尽くして挑発を続ける彼に立ち向かう。……そしてまた、無様にも一蹴されてしまった。

「あはははははは! もう諦めなって。流石に僕も弱者を痛めつける趣味はないんだけど?」

「……は、ははは……黙るデスよ爽やかインチキ屑野郎……配される筋合いはないデス……」

「いやいや、心配しちゃうって。もう君、立つのもやっとの状況じゃないか。さっきまで君と一体化していたよく分かんない動物もいつの間にか居ないしさ。……これ以上、戦っても無意味だよ。君だって理解しただろう。君如き下等種族が、銀河を統べるこの僕の命を取ろうなんて何百年以上も早いんだよ。身の程を弁えたら?」

 ……返事はしなかった。返事をする代わりに、奴の顔にエネルギーを流用して作成した槍を思いっきり投擲した。

 躱されてしまったものの、頬を掠り、血がタラリと伝った。同時に、彼の笑みが消える。

「……ははは、なるほどね。そうくるか。分かったよ。これで終わりにしようか。……死ね」

 そこには、さっきまでヘラヘラと笑っていた優男は存在していなかった。

 指を鳴らすと、辺り一面の地面が揺れ、何千体もの新たなゴーレムが生み出される。

 その全てが、イヴァンの元へと集まり、混ざり合う形で融合し凄まじい勢いで形を変貌させ、大きくなってゆく。そして目の前には、炎を身にまとった超巨大な禍々しい龍が存在していた。

「ははははははは! どうだ! 恐れ戦いたか! これこそ、我らサングライド集合体の全てを結集させた真の姿だ! もう少し楽しんでからこの星を飲み込もうと思ったが、もう容赦はしない。……この星もろとも死ぬがよいわ! 下等種族が我らに挑もうなんざ命がいくらあっ手も足りないだろうけどね!」

 龍の口から、先程とは比べようもならない程の質量を持った隕石群が、私の元に降り注ぐ。

 もう体力もエネルギーも何も残っていない。防ぐ盾も存在しない。無防備な私に向かって、猛スピードで近付いてゆく。

 

 そして、それらは私に当たることはなく、猛スピードで横槍を入れてきた何かに、全て撃墜されたのだった。


「……すまん。待たせたな。ボス」

 いきなり飛来した何かは、私の側に降り立って、守るように巨大龍の前に立ち塞がる。

 その姿を見て、ようやく私はホッと胸を撫で下ろした。

「……遅いデスよ……死ぬかとおもったデス……」

「いやそんな時間経ってないやろ。これでもなるはやで駆けつけてやったちゅーのにやな……」

 そこには、先程戦線を離脱していたヴェネティの姿があった。命令通りの物をこっちに持って来てくれている。

「……おい、どういうことだ。どうして貴様がそこに居る。捻り潰した筈だぞ」

「どうしてって言われても、ちょっと忘れ物取りに戻っとっただけやで。捻り潰されるわけないやん。そういう確認はキチンととっておくべきやと思うで」

「忘れ物を取りに? ……はは、ははは……どいつもこいつも僕をコケにしやがって……何を取りに行こうが無意味にも程があるだろう! いい加減にしろ!」

「けっ、相変わらず鬱陶しいやっちゃ。……ボス、ええんやな」

「……何度も言わせないで下さい。……私と一緒に、死んでください」

「……そうか。分かった」

 満身創痍の私の答えに頷き、ヴェネティは手を差し伸べる。そして、私の手に触れた瞬間、ヴェネティの身体から幾重もの蔦が生えて、あっという間に包み込まれる。

「……おい、何をしようとしているんだよ。……僕を無視して勝手に何かしようとするんじゃねぇよぉ!」

 無視をされているイヴァンは激昂して、攻撃を仕掛けてくるものの、繭に包まれたこっちには通用しない。私の中に、溜め込まれていた膨大なエネルギーが流れ込んでくる。

 そして、全てのエネルギーを吸収し終えて、イヴァンの前に立ち塞がる。

「……貴様、何だその姿は。馬鹿にしているのか。然程変貌はしていないように見えるが」

「いいえ。本気デス。……ザウロネスの叡智を全て結集させたマザーシップに蓄積していたエネルギーを全て拝借しまシタ。出来ればこの方法は取りたくなかったのデスけどね」

 姿形に大きな変貌はない。いつもの戦闘鎧に、ちょっとばかし大きな翼が生えて、ちょっとばかし光に包まれた巨大な槍を手にしただけだ。

 攻撃を仕掛けたふりをしてヴェネティを戦線離脱させて、取りにいかせたのは宇宙船だった。

 溜め込んでいたエネルギーは枯渇した上に、張り巡らした地脈からのバイパスも奴の手によって破壊されてしまった今、奴を倒すために残っているエネルギーはそこにしかない。

 最早滅ぼされてしまったザウロネスの全てが詰め込まれているそれを全て賭して、イヴァンにぶつけるしかない。


例え、エネルギー過多で私自身の身体がボロボロになって朽ち果てようとも。


 もはや悩んでいる余地はなかった。私自身のことなんてもう、どうでもよかった。

「……成程、貴様……自らの命を糧として、僕を貶めるつもりか」

「だとしたら、どうします?」

「決まっているだろ。……全力で叩き潰すだけだ!」

 その言葉と共に、今までで一番巨大な隕石がこっちに落とされる。

 だけど、遅い。スローモーションに感じる。きっと、五感が最大級に研ぎ澄まされているからだろう。凄まじい勢いで落とされたそれを、槍の風圧のみで叩き落とした。

 それを見て、余裕そうだった龍の表情も少し歪む。

「……どうしたデス。本気で来るデスよ」

「……そうか。よっぽど、死にたいらしいな。では、全力で相手しようじゃないか!」

 エネルギーを全て、槍に集中させる。エネルギーを流し込む度に、槍は神々しく光ると共に大きさを増してゆく。あっという間に、私の体長の何十倍もの大きさに膨れあがった。

 最早それはただの槍ではなかった。高濃度のエネルギーの質量を保った凶器だった。

 私が取り込んだエネルギー全てを喰らいつくそうとしているその槍は、手に持っているだけで精神が擦り切れてゆく感覚に襲われた。気を保つのも精一杯だ。私が私じゃなくなってゆく。

「……ボス、覚悟はええな」

「……え、えぇ。……とっくに、出来てますよ……」

「……一応聞こうか。何の準備が出来たのかな」

「決まってるじゃないですか。貴方諸共死ぬ覚悟ですよ!」

 脳内に、槍状に変化したヴェネティの声が届く。返事をするのもやっとだった。

「なるほどね、じゃあ……この星諸共しねえええええええええええええええええええええ!!」

「ぬぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 圧倒的な物量で襲い掛かってくるイヴァンに、槍を翳して一直線に立ち向かう。

 最早、正気は保っていなかった。無意識のまま、奴の懐に飛び込んでゆく。


 そして。会い見えた瞬間。大爆発と共に真っ白な光が、辺り一面を包み込んだ。


 ♭                                          ♭


「……な、何よあれ……」


 その光景を垣間見て、何が起こっているのか理解が出来なかった。

 理解が出来ないとかいう範疇を超えている。

 

 空から降る光と、地上から放たれた光がぶつかり合っていた。

 

 あれだけ好き放題に暴れていた超巨大ゴーレム共も、ぶつかり合った途端、動きを止めた。

 防戦一方だった私も、泣きそうになりながらも勇気を奮い立たせ偵察を続けていたハルやワンタンも、それぞれが一斉に空を見上げていた。ゴーレム共もだ。

 何が起こったのか。本当に理解が出来ないまま、ただ茫然と空を見上げる。

 ……いや、違う。分かることは一つだけある。

 アウルドルネと、イヴァンが、命を削ってぶつかり合っている。

 しばらく、光と光のせめぎ合いは続く。頭がおかしくなりそうな程の轟音と、立っていられない程の地響きと突風が、私達に容赦なく襲い掛かる。

「お姉ちゃん、あそこ……何が起こってるの……?」

「ワンワン! ワンワンワンワン!」

「アウルドルネとヴェネティが戦っているのよ。何がどうなってあんな戦いをしてるのかはわからないけどね……あんた達、私の後ろに下がってなさい。ちょっと嫌な予感がする」

「え、でもお姉ちゃん」

「私はいいから」

 戸惑うハル達を宥めて、隠れるように指示を出す。瞬間、あれだけ吹き荒れていた風が止んだ。それだけじゃない。轟音も地響きも、何もかもが一瞬止まった。

 信じられない程の静寂が、その場を包み込む。何が起こったのかと思い湖を見ると、せめぎ合っていた光と光が混ざり合い、収束しているのが見えた。

 そして、暗がりに包まれる。……直ぐに理解出来た。ヤバい。確実に次の瞬間。

「ハル! ワンタン! 伏せなさい!」

「え、な、何で? ねぇ!」

「いいかr」

 戸惑う一人と一匹を無理矢理抱き寄せて伏せた途端、爆発が起こった。

 ただの爆発じゃない。今までの爆発がお遊び程度じゃないかと思う程の、超大規模の大爆発が、湖で起こった。

 光と音はあっという間にここに届く。そして、大型のハリケーンが襲い掛かったかのような衝撃が、古城周辺を襲いかかった。

 必死になって耐える。ただただ耐える。まるで、大時化の大海原に放り出されたような感覚だ。もうどうすることも出来ない。

 今まで渡り歩いてきた幾つもの戦場がちっぽけに思えてしまう程、凄惨な状況下に置かれていることだけは確かだった。

 痛い。全身が痛い。何もかもが痛い。少しでも緩めたら、意識はおろか何もかもが持っていかれるような感覚だった。

 守っているハルとワンタンが、何かを叫んでいる。指を差している。あれを見てと、叫んでいる。そんな余裕は無い。そんな余裕はないというのに、それでも止めようとしない。

 観念して、守りつつ、指を差している方向を向く。同時に、驚いた。


 そこに広がっていた景色が、今までみた何もかもより、綺麗だった。


 この現状が、どうでもよくなってしまう程に、綺麗だった。例える言葉が見当たらない。

 ただただ、その光景を、目に焼き付けようとしていた。

 何分経っただろうか。気付いたら何もかもが収まって、ただの静寂だけが取り戻されていた。

あれだけウジャウジャ居たゴーレム共も、バラバラになってそこら中に転がっていた。動く気配もない。まるで、電源を抜かれたおもちゃのようだった。

「……姉ちゃん、お姉ちゃん!」

「ワンワンワンワン!」

 ボーっとしていると、正気に戻れとばかりにワンタンに噛まれた。

「いっつ、ちょっと何すんのよ!」

「姉ちゃん! あそこ! 何か降ってくる!」

「はぁ? 降ってくるって何よ……」

 怪訝に思いつつ空を見上げた途端、小さな隕石のような落下物が墜ちてきているのが見えた。あっという間に墜落して、大きな衝突音を起てて粉塵が巻き起こる。

 そしてやっと、事の重大さに気が付いた。


 落下した場所が、一番守るべき大切な場所だった。 


 直ぐに身体を起こして、一目散に走り出した。


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