3:作戦を立てます。・3
引き続き作戦会議という名の打ち合わせ。
やがて目を覚ましたレオナルド様は、失態を詫びてから、本当に私がレーメなのか確認して参りました。嘘をついても仕方ないじゃないですか。
「ご納得頂けたようですので、話を戻しますが。お2人の恋愛を元に新作の恋愛小説を書かせて頂きたい。これが私の見返りですわ。もちろん、ルイン様の許可も得て下さいませね」
「わ、私達の恋愛がレーメ・ルーレラ殿の新作に……」
感無量なカオをしてますが、きちんと許可を下さいね。あと契約書にサインもお願いします。
「私が婚約も結婚も興味無いのは、作家活動を続けるためです。女だてらに働く事を嫌う殿方も多いですし、幸いにもレオナルド様は私の作品を認めて下さいますが、他の殿方の中には、私の作品そのものを否定される方もいらっしゃいます。また、レーメは名前以外、一切を謎としていますが、それはレーメが女である事を伏せているためです」
「……何故です?」
「読者様の中には、レーメが若い男だと思う女性も居て、感想が書かれているだけでは無く、手紙には愛の告白が書かれている事も。そういった女性の夢を壊す事も申し訳ないですし、逆に、男性からもらう感想の中には、女性ではこんな作品など書けるわけがない。これで女性だったら、あなたは異常だ、と」
私が困惑して話せば、レオナルド様は、息を呑まれたようでした。
「レオナルド様にお話したのは、あなたとルイン様の恋愛小説を書かせて頂きたいから、です。ですから、他言無用でお願いします」
「分かった。それなら、あなたに、レーメ殿に、ご協力頂きたい。それと、私自身は、レーメ殿が男性だろうと女性だろうと、面白い作品を書いておられる、と思います」
レオナルド様は、真っ直ぐに視線を向けて、そう仰ってくれた。それは、作家として活動しながら、女が書いている事を伏せていた私にとって、嬉しい一言でした。
「では、私は全力でご協力します。あなた方が幸せになったところを確認しましたら、書かせて下さいませね」
それから、私達は更に打ち合わせをしていった。
結果。
① ルイン様の意思確認
② ルイン様を引き取って下さる家探し
③ 私達の婚約解消は、私が卒業するまでに
④ ルイン様とレオナルド様がご婚約するに辺り、私も後押しをする
という事に落ち着きました。その後、お2人がご結婚されてから、私は執筆活動に入ります。
「では。ルイン様にきちんとお話をして、貴族になる事を了承し、そのための勉強もし、侯爵夫人になるための素地を作る事も了承してもらう。了承が出来ましたら、レオナルド様とルイン様には申し訳ないですが、暫くお2人は離れて頂きます。宜しいでしょうか?」
「ああ。死ぬまで私達が夫婦として居られるためなら、数年くらい、我慢する」
「それでこそ、殿方ですわ! そして、それでこそ信頼しあった愛ですわね! では、その数年で間違いなくどこの貴族ーーと言っても上位貴族は無理ですが。どこの貴族の養女として迎えられても大丈夫な淑女に致しますわ。我がレレン伯爵家が、全力でお支え致します!」
「ありがとう、レーメ殿!」
「では、ルイン様に早速了承をもらってくださいませね。もちろん、私達が仮の婚約者で有ることもきちんとご説明した上で」
「ああ、もちろんだ!」
「それと、きちんと子爵か伯爵で養女に迎えてもらえる所をお探しする。これは我がレレン伯爵家も協力しますから。ただ、申し訳ないのですが、我がレレン伯爵家で引き取る事だけはご容赦を。いくらなんでも、義理の姉に婚約者を奪われた、なんて醜聞は避けたいのでございます」
「それは分かる」
「それから、私達の婚約が解消されるまでは、必要以上にルイン様にお近付きになりませんよう。彼女を醜聞に塗れさせるわけにはいきませんから。お分かりですわね?」
「もちろんだ」
「その辺もお話頂いて、全てご了承を貰えましたら、ご連絡下さいませ。それまでに、淑女教育の教師陣を準備しておきますから」
「感謝する!」
「それは、ご結婚されてから伺いたいですわ」
こうして、私達は協力関係を築いて、婚約者になりました。もちろん、お父様とお母様と2人のお兄様には話して有りますわ。家族も使用人も私の味方ですもの。そう。皆、私の作品を愛してくれていますから、私にはずっと作家活動を続けて欲しい、と言ってもらえています。だから、婚約も結婚もしなくて構わないのですわ。
……それにしても、新作をまた恋愛小説にしてほしい、と要望があったので、困っていましたが、良いモデルが見つかりましたわ!
次話のタイトルは変わります。そして、ルインも登場しますが、年齢は上がります。
現在。
レオナルド……18歳。
ルイン……16歳。
メルラ……14歳。
次話から2年後。
レオナルド……20歳。
ルイン……18歳。
メルラ……16歳。
こうなると、メルラは何歳から作家活動をしているのでしょうね?