3:作戦を立てます。・1
メルラは物怖じしない子です。
「さて。先ずは、婚約が整った事をお互いの親に報告します。それから、レオナルド様はルイン様にきちんと説明をする。ここまではいいですか?」
善は急げ、とばかりに私はそのまま打ち合わせに入りました。執事と私付きの侍女は、何も言わない。というより、レレン伯爵家の者は皆、私の味方なので、問題無い。お父様にも後々解消することを前提として、婚約した、と言えばいい。
「ああ」
「次に必要なのは、ルイン様の意思です」
「ルインの意思?」
「平民から貴族になるんですから、その意思を確認しなくてはいけません。貴族になるのに、どこかの家に養女として引き取られるわけですが、それを了承出来るのか。貴族令嬢としてのマナーや知識や教養を覚えられるのか。その際には、なかなかレオナルド様と会えなくても大丈夫か。私と仮とはいえ、婚約する事が了承出来るか。彼女の意思を確認しなくては」
「そう、だな」
「レオナルド様はバラス侯爵様にルイン様の事をお話は?」
「していない」
「その方が宜しいか、と。おそらく侯爵様の事です。レオナルド様がルイン様と恋人なのはご存知でしょうが、もしかしたら遊びだと思っていらっしゃるのではないでしょうか」
「遊び? そんなつもりは」
「ですから! 落ち着いて下さい! 侯爵様がそう思っていらっしゃるなら好都合でしょう。下手に本気を示して、ルイン様と別れさせられたら嫌でしょう?」
「い、嫌です」
「でしたら、落ち着いて話を聞いて下さい!」
「……はい」
「仮にご存知でも、侯爵様がレオナルド様を大切に思っていらっしゃるなら、問題ないですけどね。もしかしたら、正妻ではなく愛妾としてお迎えになる事くらいは許すでしょうし」
私がブツブツ呟くと、レオナルド様が「なんだ?」と首を傾げて聞いてきますが、私はその辺の事は憶測でしか無いので、首を振りました。
「……とにかく、ルイン様の意思を確認して、全てを了承されましたら、次はルイン様を引き取って下さる家を探します。男爵家ではさすがに身分差が難しいので、子爵家……出来れば伯爵家です。これは、レオナルド様だけでは難しいでしょう。私も一緒に探します!」
「君は、何故そこまでして……」
レオナルド様がテキパキと提案する私を、またポカンとして見てきます。
「もちろん、見返りを頂きますわ!」
「見返り?」
レオナルド様が、やはり金目当てか。というカオで私を睨みますが、私は自分で稼いでいますし、契約金としてもらう気はないですわ!
「今回の件、上手く行きましたら、私にお2人の恋愛小説を書かせて頂きたいのですわ!」
レオナルド様は、本日、何度目かのポカンとしたカオを見せて下さいました。
そしてメルラは作家だった。
彼女はベストセラー作家、という設定です。