オマケ・メルラとレンと騒がしき新婚生活・1
大変お待たせしました。
結婚式が終わり、レン様と城のレン様の私室で寛いでいる所です。
「メルラ」
「はい」
「今夜は初夜を迎える。本当ならばメルラの気持ちを待ってやりたいが、中々そうはいかなくてな。王族には王族の慣習がある。その一つとして、たとえ臣下に下がる王族であろうと挙式と初夜までは、王族の慣習に則る。というのが、この国の古い考えだ」
「そう、なのですか」
「うん。そしてこれは妻になる女性は皆嫌がるのだが、王族の義務として、立会人がいる所で初夜を迎えなくてはならない。他人に肌を晒すのは嫌だろうが、許して欲しい」
レン様のその言葉に私は息を呑んだ。王弟であるレン様が「許して欲しい」と仰ったことも驚きだが、レン様以外に肌を晒さなくてはならないことも驚きました。いくらか閨教育は受けました。とは言っても、殿方に全てお任せするように、とのことでしたが。肌を晒すことも聞いてはいます。
ですが、他人に肌を晒すというのは聞かされませんでした。いえ、侍女には肌を晒しますけど、そういうのとは違うのでしょうか?
「侍女に全身を洗って頂くのとは違うのですか?」
「うん。侍女達は君を磨く仕事だろう? 立会人も仕事ではあるのだが……。閨ごとを最後まで見届けるんだ。大抵は侍女長がそれにあたる。済まない」
そんなに謝られることなのでしょうか?
とはいえ、王妃様も経験なさっている事ではあるのでしょう。でしたら私も乗り越えるべきことだと思います。
「レン様が謝る事は何もないですわ。王族の慣習ならば致し方無し。王妃様も経験なされたことでございましょう?」
「それはそうだが……。義姉上は元々王太子妃……ゆくゆくは王妃になるための教育で聞いていた。きちんと覚悟を決める時間があったし、それに兄上とも相思相愛だから乗り越えられたはず。だがメルラは……」
たった今、聞かされましたね。レン様が臣下に下がるので王族教育を受けておりませんので、初耳でした。そして、レン様が懸念されるもう一つ。
「相思相愛でないと乗り越えられないこと、なのでしょうか?」
「いや。昔は政略結婚で親愛の情はあっても恋情の無い王族夫妻もいただろうから、そんなことはないと思うが……。だが、それでも過去の淑女達は皆、王族教育の一環で初夜について聞かされたはず。それなりに覚悟が出来ただろう」
「覚悟が必要、ですか」
「淑女は入浴以外に他人に肌を晒さないだろう? しかも閨ごとには普通は他人は介入しない。王族だから立会人がいるのだ」
「王族だから、ですか」
私が首を傾げればレン様が困ったように微笑んで話してくれた。
「大抵の淑女は初夜まで男と閨を共にする事はない。だが、閨ごとは、結婚していなくても出来る男女の行為だ。娼婦という職業もあるくらいだしな。だから、その、王族の妻になった女性が本当に初めての閨ごとなのか、立ち会う必要があるんだ」
娼婦という職業はお茶会で耳にした事があります。そうですか。結婚していなくても出来る男女の行為ですか。そして女性が初めてかどうか調べなくてはいけないのですね?
「女性が初めてだと知らないといけないのですね」
「王族の男や高位貴族は寧ろ初めてだとマズイんだ。閨ごとは愛を確かめ合う行為だが、子どもを作る行為でもある。だから男は一度でも経験して自分が子どもを作ることが出来るか知らないといけない。だが女性の場合は、初めてでないと、誰の子を身篭っているんだ? という話になる。高位貴族も血筋は大事だが、それ以上に王家は血を残さなくてはならないから」
「ああ……そういうことですか。分かりました。気遣って頂きありがとうございます、レン様」
私がにこりと笑えば、レン様が「済まない」ともう一度仰った。あまり気に病んで欲しくないです。
私、レン様だから、大丈夫だと思うんですよ?
感想・レビュー欄は閉じてあります。
お詫び申し上げます。




