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オマケ・愛を乞うのか捧ぐのか……は誰次第?・2〜ブレングルス視点〜

結婚式当日です。

引き続きブレングルス視点でお送りします。

結婚式当日になってしまった。今日を迎えるまでにメルラの真意を聞き出しておきたかったのに。全くもって逃げ続けられてしまって俺とした事が情けない。

けれど、と決めた。


今日を最後に2度と訊ねない事にしよう。


そうして俺は先ず教会でメルラを待つ。我が国や近隣国では教会で婚姻証明書にサインをして神父に認めてもらう。その後婚姻証明書を貴族院と王家に提出して結婚披露を行う。これが結婚式の流れだ。王族もほぼ同じで違うのは婚姻証明書には神父だけでなく国王陛下が立ち合う事と披露では国の行事であるため他国から賓客を招く事だろうか。


披露のパーティーまで順調に進んでいよいよパーティーである。こちらは招待客をもてなす必要があるため出迎えるのだが、そこで初めて結婚披露パーティーのために着飾ったメルラを見た。


「レン様」


「メルラ?」


「はい」


あまりにも美しく装っていて言葉も出てこない。照れ臭そうに微笑むメルラがとても可愛い。

ーーこの女性は一体、誰だ?

それが俺の感想だった。

メルラは出会った時に既にニコル君を失っていておそらく喪に服すために着飾る事は無かった。デビュタントでも最低限の夜会でも王妃主催の茶会ですら。黒・グレー・紺などの濃い目の暗い色しか着ていなかった。

レレン伯爵家を訪ねた時もそうだったから普段からそんなドレスやワンピースだったのだろう。


しかし、今目の前に居る淑女は白に淡い黄色のレースが裾や袖口を然りげ無く飾ったドレスで俺の目の色であるサファイアを中心にダイヤモンドが鏤められた首飾りを付けている。だがそれもメルラの細い首に重たく見えないよう首飾りそのものが華奢で無論サファイアもそんなに大振りではない。


披露パーティーのドレスや装飾品等は婚約者が金を出すがデザインなどを含め実際に用意するのは実家の両親だ。

今まで慈しんで育てた娘が婿取りではなく嫁に出る場合は最後の親の務めとして娘に最高に似合う姿で送り出す。それがこの国の風習。もちろん婿入りするもしくは嫁をもらう男の方も同じように男の親が用意するもので。


俺の場合は兄上である国王陛下並びに義姉上である王妃殿下が準備してくれていた。

本当に俺に合う衣装を整えてくれていて照れ臭いな、などと呑気な事を考えていたが……こんなメルラを目の前にしては、この格好の俺では不釣り合いではないか? と初めて焦ってしまった。


「レン様、良くお似合いですわ。素敵です」


メルラに言われて安堵したが、俺は何も言っていない事に気付いた。


「メルラも、美しい」


「ありがとうございます。久しぶりに明るい色をまといましたので似合うかどうか不安でしたの」


俺と今まで参加してきた夜会やお茶会もそれまでと同じ暗めのドレスだった。だがその素材は何ランクもアップしたものだったので黒やグレーでも地味だとは思われず、慎ましやかという表現で落ち着くものだった。

それが明るい色合いのドレスになった途端、蕾だった花が咲き誇ったように開花した。

いや、まだ全ての花弁が開き切っていない初々しい咲き始めだ。


ーーこんな姿、他の男に見せたくない。


強烈な独占欲が頭の中を駆け巡り胸がキリキリと締め付けられた。

だが既に招待客は揃っていて俺達は迎えねばならない。2人寄り添って。

……寄り添って? ああそうか。俺とメルラは結婚したのだ。だからメルラの隣に立つのは、俺なのだ。


胸にストンとその事実が響けばさっきまでの独占欲が嘘のように治まる。そうして俺は我が妻殿に手を差し伸べた。エスコートをして入り口で客を待つためだ。心得ているメルラから差し出された手には指先が白に近いピンク色で徐々に手首へ向かうに従いそのピンクが濃くなっていく手袋。

このように染められるのは小さな我が国とはいえレレン伯爵領の領民のみ。それだけでこの結婚をレレン伯爵家がどれだけ喜ばしいと思っているのか理解出来る。


これだけ大切にしている娘を、俺に託してくれた。


それが誇らしく思えてくる。その可愛らしい手を取り入り口へメルラをエスコートして俺は自然と彼女の腰を引き寄せた。

さすがにもうここまで来れば自分の気持ちに気づく。


ーーメルラは俺の愛する女性だ。

焦がれに焦がれた愛しき存在。

次話はブレングルス視点最後です。


まさかのブレングルスがメルラに恋に落ちました……。作者が意外だった……。

次話をなるべく早くにアップします。

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