オマケ・愛を乞うのか捧ぐのか……は誰次第?・1〜ブレングルス視点〜
お待たせしました。
リクエスト第2弾。
メルラとブレングルスの結婚生活編です。
5話くらいで終わる予定です。……多分?
1話目は結婚式までのメルラとブレングルスの様子をブレングルス視点でお送りします。
俺の結婚を国内外へ発表するのと同時に、メルラはあれ程伏せたがっていた『レーメ・ルーレラ』が自分である事を発表したい、と俺と王妃殿下に告げてきた。王妃殿下はメルラの意思を尊重するとだけに留まったが俺は何度も「それは良いのか」と尋ねた。手紙で5度。直接会って3度。王妃殿下を経由して1度。そのどれもに対してメルラの答えは「構わない」だった。あれ程頑なに公表を避けて来たというのに、アッサリと掌を返す。それがどうしてもメルラらしく思えなくて
「何故」
と問いかけるのも9回。その9回全てにおいてメルラはただ微笑んで
「レン様と共に居る事になるから、ですわ」
と返事をする。俺との結婚が嫌なのであれば解消すると言えば、そうではないとも答えるが。一体どういう意味なのか、と尋ねてもふふっと笑って聞き流すだけ。結局5回目に尋ねた頃。
「メルラが良いと言っているのですから公表します!」
と繰り返す俺に業を煮やしたように王妃殿下が宣言して俺とメルラとの結婚発表から1ヶ月後。メルラが『レーメ・ルーレラ』であることが国内外に向けて発表された。途端にメルラが俺と結婚する事に対して口さがなく「死神令嬢」のくせに、とか。一時期婚約者として噂されていたバラス侯爵令息・レオナルドに「振られた」くせに、とか。嘲っていた者達が掌を返したようにメルラに擦り寄った。
俺はそんな奴等を全員纏めて叩きのめそうとしていたが、メルラが一足早く微笑みながら奴等の人心を掌握していた。それは本当に見事だった。見透かせる程見え透いたお世辞を垂れ流して擦り寄って来る奴等を時に「新作が出ましたら皆さまにはいち早くお知らせしますわ」と餌をちらつかせ、時に「まぁ女の分際であのような文章が書けるわけがない、などと仰る読者様もいらっしゃいましたがこうして私の周りに集まって下さる皆さまはそのような女性を見下すような旧き考えに囚われた頭の固い殿方達ではないでしょうから心強いですわ」と牽制して。
あっという間にメルラ嬢と話せる自分はメルラの真のファンである、と誤認させた。メルラは「皆さま」相手であって誰一人として優遇措置を取っていない。つまり誰一人として特別扱いなどしていないのに関わらず、自分こそが“特別なファン”だと思い込ませた。
これは下手を打てば恨まれかねない対応だが、メルラは取り囲まれた全員を等分に見ながら「皆さま」に発言しただけであり、お茶会では近くには必ず王妃殿下が、夜会では必ず隣に俺が居るから、メルラの発言に不満を持つ者が現れても俺達が証人になれる。逆を言えば俺達が居ない時のメルラはニコリと笑って当たり障りなく返事をするだけ。つまり足を引っ張られるような材料が無いように立ち回っていた。
これに気付いた貴族達は早々と俺とメルラの結婚を祝福する方向に舵を取った。
メルラの頭の回転の良さを見てしまえば藪をつついて蛇を出すわけにいかないのだろう。
こう言ってはなんだが、俺自身少しだけメルラを侮っていた。“王弟殿下・ブレングルス”という人間の価値を俺は良く理解していた。だから俺と結婚する事になるメルラが恨み・妬み等を買って嫌みを言われて足を引っ張られて虐めを受けて泣かされる事など無いように守らなくては、と思っていたのに。全くその必要など無かった。それどころか受けて流して捌いてしまっている。
更に言えば掌を返して来た奴等との付き合いも個人個人の差は多少あれど全て一線を引いて接している。深入りせず、だが離れていかない程度の付き合い。それは正に“王族の妻”として相応しい対応で。なんだか俺はメルラに必要とされていない気がした。……そう思うとなんだか胸が痛んで頼りないと思われているような気がしてなんだか久しぶりに自分の足元が不安定な思いをしてしまう。
俺はメルラが必要でメルラも俺が必要。
そう思っていたがメルラは俺が居なくても大丈夫ではないのか? と考えてしまう。それならメルラのことだから俺の結婚の申し出など断っていたと思うが。チクチクと痛む胸が何故なのか分からずに俺はその痛みを無視する。そうして俺とメルラとの結婚式当日を迎えた。
サクッと結婚生活話に突入するのも有りかと思ったのですが。
少しブレングルスの心境を書きたかったので結局結婚式までの様子。結婚式当日(結婚式そのものは執筆しません)からの結婚生活話かな、と。
次話もブレングルス視点が続きます。




