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オマケ・それだけは知りたくなかった・2〜マクシム視点〜

すみません。

お待たせしてしまいました。マクシム編です。

メルが学園を卒業する直前のこと。卒業に向けて準備が忙しいはずのメルが態々会いに来てくれて手紙を渡された。本当は話す時間が取れたら良かったと言いながら渡された手紙。それからメルが悩んだように口を開閉させてから言った。


「ごめん、ね」


何についての謝罪か分からないままだけれども問い返すのは怖くて曖昧に受け入れた。メルは困ったように笑って忙しいから、と去って行く。それを見送ってから手紙を開封すれば謝った意味がそこに書かれていた。よりによって僕の手が届かないような相手と結婚を決めたらしい。……王弟殿下なんて逆立ちしたって敵わない相手じゃないか。


問い返さなくて良かった。問い返していたら……メルラの口から聞かされていたらきっと立ち直れなかった。手紙で良かった。


……なんとなく分かっていたんだ。

僕の気持ちがメルラを追い詰めたんじゃないのかって。本当は僕の気持ちなど告げずに友達でいられたら良かったのかもしれない。でもそんなのは僕が耐えられなかった。ニコルと婚約していた小さな頃からメルラを見て来たんだ。あの頃からずっと好きだった。諦めが悪いことも分かっている。


ニコルの隣で笑うメルラが可愛かった。

ニコルに内緒ね、とイタズラしているような目でニンマリ笑うメルラだって好きだった。

ニコルと一緒にメルラを揶揄って怒るメルラも輝いていた。

ニコルを失って途方に暮れていたメルラを慰めている時、僕では代わりにすらならないと理解した。

ニコルのためだけに涙を流すメルラを愛しいと思っていた。

でも全部全部ニコルのためで僕のためにはならない。

僕に笑いかけてくれるのも僕を応援してくれるのもニコルの幼馴染みでニコルの友人だったから。僕自身ではなくてニコルを通して僕に接していた。僕は解っていたのに知っていたのに見ないフリをしていた。


……だってそれを認めてしまったらあまりにも僕が惨めだと思ったから。


でもそうじゃなかった。ニコルを通して見ていたのはメルラだけじゃない。僕も同じだった。ニコルとの共通の思い出に浸れる僕達。そのことで僕は優越感に浸っていたけれど同時にどこまでいってもニコルのことが過ぎっていた。ニコルを想うメルラごと好きだから、なんてカッコいいことを言ったけれど僕だってニコルを想っているんだとメルラに負けないんだとどこかで考えていたように思う。結局のところニコルに囚われているのは僕も同じで。


そしてニコルを好きなメルラを支え切れる程僕は自分の足で立っていなかった。

寧ろどこかでメルラに寄り掛かっている自分が居た気がする。

きっと聡いメルラのことだから漠然と僕のそんな部分に気付いていたのだと思う。本能的に僕を受け入れてしまえば僕と共倒れになってしまう事に気付いたのだろう。僕はメルラに振られてようやく自分の足元が見えた。そうしたらメルを支えるどころか自分の足元が固まっていなかった。

そんなんで良くメルラを受け入れようとしていたな……って自分が恥ずかしかった。僕はイオット男爵の妾の子で。だけど正妻の子より先に生まれてしまった難しい立場で。だから正妻から嫌がらせをされて逃げ場が欲しかった。母は僕が小さい頃に死んでしまったし、父は正妻より僕の母を好きになったけれど正妻と結婚することは避けられなかったから結婚して。でも母を捨てられなくて妾として囲ったくせに正妻に見つかったら途端に正妻怖さに僕と母を助けてくれない、そんな人で。


僕は愛情が欲しかった。

幼い頃に出会ったニコルに友情を教わり、親から貰えなかった愛情をメルラからもらおうとしていた。

そんな只の子どもだった。そんな僕がニコルを失ったメルラごと支えられるわけがなかった。だから。


僕はメルラに振られてようやく自分の足で立てる気がした。だからメルラ。幸せになって下さい。ニコルと僕の分まで。僕はメルラの幸せを祈るよ。でも僕もまだまだ未熟だから素直に口には出せない。いつか言えるようになるまでは……僕の方こそ、ごめん。

マクシム編終了です。

マクシムは親からもらえるはずの無償の愛をメルラからもらおうとしていた子です。

でもメルラは無意識にそれは出来ない、とマクシムを振ったんですね。きっと。(この話を書いていて作者が初めて知りました)


次話はいよいよレオナルド編です。

その後メルラとブレングルス殿下の新婚編へ突入します。尚、新婚編はおそらく1話には収まらないと思います。なんとなくですけど。

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