2:説明します。・2
説明回その2。
「ということで、現在、御夫人方を中心に、バラス侯爵家に不名誉な噂が流れ始めております」
「不名誉⁉︎」
まぁ殿方は、女性の噂に注目していないだろうからねぇ。私、婚約も結婚も興味無いけど、社交はそこそこしてますよ?
「噂1。レオナルド様には胸に秘めたお方がいる」
レオナルド様が顔を真っ赤にします。うん、やっぱりこの噂が真実ですか。
「噂2。実はかなりの女好きで、しかも既婚者が相手」
「なっ……。そんな事実は無い!」
「ですから不名誉な噂だ、と申し上げております」
「うっ」
「噂3。実は女性が恋愛対象ではなく、男性が恋愛対象」
「無いっ! 有り得ない!」
おや。では、胸に秘めたお方は女性ですね。
「まぁ大体がこの3つですわね。後は、王女殿下に恋をしているけれど、他国にご婚約者が居るから諦めている。いいや、逆に掻っ攫うつもりで虎視眈々と狙っている……というのもございます」
「そ、そんな噂が」
レオナルド様。本当に18歳ですか? 私、14歳ですが、その私よりも噂に右往左往されていますわよ? あーあー、顔を真っ青にしていらっしゃるわ……。
「だから、周りを見られない愚かだと申し上げたのです」
お分かりですか、と問えば、レオナルド様は、かなり落ち込んで俯いています。なんだか苛めているみたいで嫌だわ。
「そんな、私は、別に……」
「そこで、私はバラス侯爵様から連絡を頂きました。我が父・レレン伯爵とバラス侯爵様は学友とのことで、バラス侯爵様直々に、私に是非、何としてでも、婚約を受けて欲しい! と」
「ち、父上が……」
「お帰りになってお確かめ下さいな。ですから、私は、婚約しないとレオナルド様が仰っても、わかりました。そうします。とは言えないのです」
「そんな……」
「ですが。私なりに考えてみました。過去の6人の女性達に、これと言って落ち度は見当たらない事は調査済みです。ならば、レオナルド様に問題が有る。婚約以外は優秀なレオナルド様が、婚約しない、と仰るならば、どなたか想う方がいて、その方に一生を捧げようと考えていらっしゃるのではないか、と思いました」
私の説明が、推測が、当たったのでしょう。レオナルド様が、私に敬意を表する目を向けてきます。先程、睨んできた方とは思えないくらいですね。
「その、通りだ」
「やはりそうですか。その方とレオナルド様は恋人同士ですか?」
「……ああ。思い合っている」
「それなのに、ご婚約には至っていない。お1人目のお見合い相手の時から、と考えますと、既に2年の期間ですわね。それでも婚約出来ないならば……、身分違い、でしょうか?」
「凄いな。そこまで解るのか」
「推測です。どのような方なのです?」
私が尋ねると、レオナルド様は、その方の事を思い浮かべているのか、優しい目で窓の外を見ています。
「私付きの侍女でね。ルーは、ああ、彼女の名前はルインと言うんだが、優しくて気がきいて、控えめで、はにかんだ笑顔が可愛くて、抱きしめると良い香りがして、真っ赤になって、潤んだ目で私を見上げてくるから守りたい、と庇護欲がかきたてられるんだ」
「左様でございますか。侍女ということは平民でしょうか」
「うん」
「では、ルイン様を貴族にする必要が有りますわね」
「……えっ?」
「えっ? では無いです。とりあえず、バラス侯爵様直々に頼まれている以上、私とレオナルド様の婚約は決定です。でも、私は婚約も結婚も興味が無いので、ある程度したら婚約を解消しましょう」
「えっ、えっ?」
「ということで。それまでにルイン様をどこかの家に引き取ってもらい、レオナルド様と結婚出来るようにしなくては、ですね。協力致しますわ」
私はニッコリとレオナルド様に笑いかけた。
次話は、タイトル変わります。
もうお分かりでしょうが、メルラは恋愛に一切興味無しです。なんだったら、他人の恋愛を観察するのが趣味で、応援するのが現在の彼女の楽しみの一つです。