続・6:求められる想い、探した答え・III
お待たせしてしまいました。
レオナルドへの返事の回です。
レオナルド様を呼び出して庭園へ案内する。そこは私が選んだ場所。レオナルド様とルイン様が愛を語り合った我が伯爵家のガゼボ。レオナルド様……レオは約束の時刻に現れて傷ついた表情を見せた。やはり、と私は納得する。
「レオナルド様。お呼び立てしてすみません。ようこそいらっしゃいました」
「……あ、ああ」
「こちらへどうぞ」
私が座るように促すとレオは辛いと言いたそうな表情でそこに立ったまま。
「レオナルド様」
「……どうしても此処じゃないとダメか」
苦しそうに喉を詰まらせてレオが私を見てきます。……あまり虐めるのも良くない事ですね。私は苦笑してゆっくりとガゼボから出て庭園を歩き出す。レオはホッとした表情を見せて私の後をついてくる。
「レオナルド様。長らくお待たせ致しました。お返事をさせて頂きたいと思います」
「……あ、ああっ!」
私が微笑めばレオが嬉しそうに顔を綻ばせる。おそらくレオが私に好意を持って下さっているのは本当なのでしょう。ですが。
「お断りさせて下さいませ」
「な……ぜ」
「私の心は今もニコルのものですわ」
「俺は、私はそれでも構わない」
「……そう仰って下さるのは嬉しいのですが。レオナルド様は難しいか、と」
私が告げれば私より4歳年上のはずのレオは迷子のような途方に暮れた顔を見せる。
「レオナルド様。あなた様はまだルイン様との事を忘れていらっしゃらない。ガゼボに座れなかった事が何よりの証。別にそれは構いませんわ。誰だって心に住まわせる大事な方はいらっしゃいますもの。私のニコルのように。ですが私が仮にレオナルド様の元へ嫁いだと致しましょう。でも私は実家に戻る事もありますわ。その時迎えにいらしたレオナルド様はあのガゼボを必ず目になさいます」
「必ずかどうかは分からないし、仮にそうだとしてもメルラと結婚すれば大丈夫だと思う」
「いいえ。私は側に居る事でレオナルド様の傷が少しでも癒えれば良いと思っておりました。しかし傷が癒えないままレオナルド様は私を好きだと仰った。それは……ルイン様を失った穴を埋める替えが私のようなもの。寂しさを紛らわすために私が側にいたので私に救いを求めてしまわれた」
レオは黙って私の言葉を聞いていらっしゃる。
「レオナルド様は私ではなくルイン様を思い出さない別のご令嬢と婚約されて新たな関係を築かれる方が良いと思われます」
「だが俺は」
言いかけてレオは口を噤まれました。私の言葉が全てでは無いにしても何処かでご自分も考えていらした事なのでしょう。敢えて見て見ぬフリをして来た事を求婚している私が指摘した事で突き付けられたのかもしれません。
「私はニコルを今でも好きですわ。レオナルド様も別に今もルイン様を好きでいても宜しいのではないか、と。レオナルド様のお心にルイン様を好きなご自分の部屋を作って差し上げて下さいませ。その部屋に鍵をかけてから別の方を想う部屋を作れば宜しいのです。普段は鍵がかかっていても時々その鍵を外して偲ぶくらいは許されましょう。私は未だニコルだけが心の真ん中にいて他の殿方の部屋を作る事は出来ないようですわ」
私がにこりと微笑めばレオは何処か困ったように笑いながら口を開きました。
「作家であるレーメ・ルーレラ殿がそのように言うならそうなのかもしれないな。ルインを無理やり忘れるのではなく部屋を作って鍵をかける、か。さすが作家の方は仰る事は違う。……ありがとう。メルラ嬢」
「いいえ」
「時々は友人として交流させて頂いても構わないだろうか」
「ええ」
レオは理解してくれたのでしょう。私に対して一歩引くような態度に変わりました。それからレオはガゼボをチラリと見てから私に頭を下げて帰られました。……これで3人の求婚を全て退けた事になりますが、別に勿体ないとも思いませんし寧ろホッと安堵しただけです。空を見上げてから屋敷に入ってお茶を愉しむ事にしました。
体調を崩してしまい、ようやく更新出来ました。感想が有りましたら明日以降返信させて頂きます。
この後来月中に1話アップしたいと思います。多分。




