続・5:求められる想い、探した答え・II
お待たせしました。
マクシムへの返事です。少し長くなりました。
……毎日更新中の作品が少々コメディ寄りというか、恋愛色が薄いので書きやすいのですが、本作は恋愛色が強くなってますので脳みそをフル回転させてます。それでこのクオリティーなのは作者が残念な頭なのでお許し下さい。
シムに会いに行く事にしました。私とニコの1歳下の彼は本来なら嫡男として男爵家の跡取りだったのに正妻さんの子では無いという一点で嫡子として国に申請されていないため男爵家を継げない。彼のお父上は事なかれ主義の思考で正妻さんに嫌味を言われて正妻さんの息子である異母弟達に苛められていても全くシムを庇う事は無い。そのせいでシムは常に人の顔色を窺ってなんでも異母弟達に譲ってしまう様々な事を諦めた子でした。
だから……というのも変なのだけど。シムが手に入れても良いモノは執着心が強い、という性格になりました。多分、私への気持ちはその執着心の延長ではないかしら、と私は考えています。
「マクシム?」
「メル!」
イオット男爵家の裏門から離れへ直接訪問すれば庭にシムの姿が有りました。呼びかければシムが嬉しそうに笑って私を迎えます。こういうところは昔と変わらないのよね。
「何をしていらっしゃったの?」
「……ああ、母上が作った花壇を壊しているところ」
その返事に私は息を呑みました。
「それはだって……」
「良いんだ。今は学園に通っているけれど学園を卒業したらもうこの男爵家から離れる。……いや追い出される、が正しいか。卒業後は城の文官として働くかどこかの領主の元で文官として働く。父上……いや男爵のところで文官は出来ないからね。成績は良いからおそらく王都に出て城の文官として働けるはずなんだ。まだ来年にならないと確定しないけれど。だからそれまでに母上の痕跡は全て消しておかないと。……あの方に消されるよりは自分の手で消しておきたいんだよ」
その目は静かに凪いでいてシムの決意を感じ取りました。
「返事をしに来ました」
私もシムの静かな目に促されるように静かに訪問理由を告げました。離れの応接室に通された私はお茶を入れてくれたシムの相向かいに腰を下ろして深呼吸をした後、口を開きました。
「マクシム。私は貴方の想いに応えられません。私はやっぱりニコが一番で。マクシムとならニコの思い出を語りながら一緒に過ごして行く事も出来るかもしれない、とも思いました。でもね。私はあなたを家族として思えてもあなたの恋人にも妻にもなれないわ。……もしかしたらマクシムと過ごす中で気持ちが変わるかもしれないけど、今の私にはマクシムと恋人になる気持ちが全くないし、妻としてあなたの子どもを産める気にもなれない」
「待つ権利は」
「ごめんなさい。数年後に気持ちが変わる、なんて言えないもの。おばあちゃんになってからようやくマクシムと恋人になりたい、って言うかもしれないし、死ぬ間際までやっぱりマクシムの事は友達……せいぜい家族くらいにしか思えなかったら申し訳ないわ。それにマクシムが王都へ行くとしても、私はあなたについていけない。ニコのお墓があるスリレイ子爵領と気軽に往来出来ないもの。2年後にお父様からどこかの家に嫁ぎなさい、と言われるかもしれない。そう言われるまで私はニコのお墓の側に居たいの。だからごめんなさい」
リクナルド殿下の時とは違って、シムとは長い時を一緒に過ごしてきました。だから結婚したとして“家族”にはなれるかもしれない。でもシムが望む“恋人”にも“妻”にも私はなれるとは思えません。だから率直にお断りさせて頂きました。
「……そうか。少しだけ期待していたんだ。長い時間を一緒に過ごしてきただけ、有利じゃないかなって。でもやっぱりダメだった。でもニコの思い出話を出来るのは俺くらいだろうから、これからも友達としてよろしく」
シムは悲しそうに首を振って泣きそうな顔で友達としてよろしく、と言ってくれました。私はただ無言で頷きました。……それをノーと言える程縁を切りたいわけではないのです。でも私を好きと言う殿方とずっと友達のままでいられるものか、とも考えます。それでもニコの思い出話が出来る相手は貴重なのです。
……早くマクシムに素敵な女性が現れるように願うしか私に出来る事は有りませんでした。
という事でマクシムへの返事は終了です。
そしていよいよレオナルドへの返事に続きます。なるべく早くレオナルド編を書きたいと思います。




