続・3:恋うる想い乞われる想い・III
本日3話目の投稿です。
リクナルド殿下告白シーン。
「メルラ」
「まぁリクナルド殿下」
「お忍びだ」
「ようこそいらっしゃいましたリック」
ニコの命日から10日が過ぎた頃。リクナルド殿下が遊びにいらっしゃいました。暫く隣国へ留学に行ってらっしゃいましたから、こうして我が家を訪れる姿を拝見するのが未だ慣れません。最も留学前はよくいらっしゃっていましたから直ぐに慣れるとは思いますが。
「メルラ。話したい事が有るのだが」
「王女殿下との事でございますか?」
リクナルド殿下の婚約者であらせられる隣国の王女殿下は、リクナルド殿下の話だけをお聞きするならかなり我儘なご様子です。そして私は良く愚痴を聞いております。最も我が国は弱小国故にリクナルド殿下がおいそれと愚痴を溢す相手が居ない事も分かりますから、聞くだけで良ければ私は構いません。
「いや」
「では?」
「メルラ。私は正妃を迎える身だ」
「はい」
「だが、側妃を迎えることが出来る」
「それは……。正妃様がリクナルド殿下との間にお子を産めなかった場合のみでございますね?」
「そうだ。婚姻してから3年経って出来なければ側妃を迎える。その時、そなたを側妃として迎えたい」
私は驚いて言葉が出てきません。それは、私にリクナルド殿下の子を産め、という事でしょうか?
「私にリクナルド殿下の子を産めという御命でしょうか」
「違う! そうではなく……。私はメルラを愛しく想う。初めて会った時に物怖じせず私と言葉を交わし、それから会う度に私の話を聞いてくれた。私を第二王子ではなくリクナルドとして接してくれた。そんなメルラだから好きなのだ。そんなメルラが側にいてくれるなら私は頑張れると思う」
これは……。もしやシムとレオのように愛の告白をされている、という事で良いのでしょうか?
「恐れながら殿下」
「……言いたい事は解っている。断るのだろう? それを踏まえた上でお忍びだからな。非公式だから何を言ってもここだけの話だ」
……ああ。リクナルド殿下は私のためにわざわざ非公式だと仰って下さる。これがお忍びだから許されるのであって、お忍びでなければ例え我が家にいらっしゃっているだけでも公式扱いになってしまう。それは我が家にも私にも負担がかかる事。
公式であれば、私の気持ちなど問わずに側妃として召し上げられてしまっただろう。本来ならリクナルド殿下はそれが許される立場の方。それなのに。私のためにその立場を行使しない。
私は……マクシム・レオナルド様・リクナルド殿下のお心に全く気付いていなかったのです。どれだけ私は想われていたのでしょうか。ニコを好きな気持ちは変わりません。けれど同時に無意識のうちに恋愛ごとを排除してきた私だから、気付いて来なかった。
「リクナルド殿下……」
「メルラ。リックだ」
「リック」
「ああ。……メルラが今でも亡き婚約者を想っている事は解っている。それをどうこう言うつもりはない。だが亡き婚約者を想いながらも他の者を好きになっても、お前の婚約者は許すと思うぞ」
リクナルド殿下の言葉が静かに私の心に注がれます。
「別に他の男を好きになれ、と言っているわけじゃない。だがお前の生き方を見ていると未亡人のような生活に見える。お前の年齢でそのような暮らしは、お前が幸せだ、と言っていてもお前を好きな男から見ると切ない。まるで自ら世界を狭めているようで。お前に世界はもっと広い、と教えたくなる。
それを知った上で尚、亡き婚約者だけを思って生きるのが幸せだと笑うなら、私は何も言わない。だが今のメルラは見ていて痛々しいと私は思う。メルラに世界が広い事を私が教えたいし、その先でメルラの隣に私が側に居たいとは思う。だが私じゃなくても構わない。誰かがそなたの側に居て幸せだと笑っているなら、それだけで。だからメルラ。……もういい頃合いではないか。一歩進み世界を見てみないか?」
私はリクナルド殿下のその言葉に息を呑みました。私自身はそんな風に閉じこもっているつもりはなかったのですが、殿下の目には閉じこもっているように見えたのでしょう。
もちろん私は今でも十分幸せです。
けれど、マクシム・レオナルド様・リクナルド殿下の言葉やお父様のお言葉を聞いて視点を変えてみると……私は頑なに自らの世界に閉じこもっているとしか、見えない。
私が色々と考え始めた事に気付いたのでしょう。リクナルド殿下が
「言いたい事は言った。帰る。求婚の件は本気だが忘れてくれ」と仰って帰られてしまいました。
私は……出入り口も無い、自分だけの美しい場所に止まっていたのかもしれません。3人の求婚は驚きましたけど真剣に向き合うことで私の中の私と向き合う必要がありそうです。
3話を本日更新しました。
この後はまた間が空く……つもりでしたが、1話王妃視点の話を入れたいと思います。
その後は更新に間が空きます。
結局メルラがどうなるのか。真剣に夏月もメルラの幸せを考えたいと思いますので、皆さまをお待たせしますが、よろしくお願いします。




