続・2:恋うる想い乞われる想い・II
本日2回目の投稿です。
メルラ視点のレオナルドの告白シーン。
シムからの唐突な告白に目を白黒させていた私のところにレオナルド様……レオから手紙が届きました。なんでも以前差し上げた万年筆のお礼を届けたい、とのことです。大した物では無いのに……。都合の良い日を記して返事を出してからお父様にシムの事をご相談させて頂きました。
「お父様」
「どうした?」
「あの、マクシム・イオットの事なのですが」
「シム? メルにようやく想いを告げたのかい?」
私がどう切り出そうか考えるよりも前にお父様が首を傾げて当てていらっしゃいました。お父様、ご存知でしたの?
「何故ご存知です?」
「シムがメルを好きだなんて周りの誰もが解っていたくらい分かり易かったからね」
……そう、だったのですか!
もしかして私はかなり鈍かったのでしょうか?
「私、鈍かったのでしょうか?」
「それは否定しないけど。メルはニコを一途に想っていたからね。恋愛ごとは無意識に避けているように思えたよ」
お父様に指摘されて気付きます。確かに恋愛ごとに近寄っていく気は無かったです。レオとルイン様の恋を応援している時も他人の好意や恋愛ごとには興味津々だったけれど自分に関しては全く何も有りませんでしたわ。
物語を紡ぐ身としては注意力散漫と言いますか観察眼が衰えていると言いますか。
……いいえ。自分を偽ってはいけません。私は「私」に関する恋愛ごとを拒否していました。自分で排除をして来ましたわ。
ーーだって私はニコとの思い出を失いたくなかったのですから。私は怖かったのでしょう。ニコ以外の男性と恋をした時、ニコの事を忘れてしまうのでは無いか、と。
「お父様は……マクシムの気持ちに気付いていらっしゃったのですね……」
「まぁうん」
「だから、お父様が婚約者をお探しにならないで好きな人との結婚を勧められたのでございますね……」
「そうだね。マクシムの事も有るけれど。幸い我が家はメルラに政略結婚をさせなくてはいけない事は無いし。我が家の仕事や領地などにも問題無い。何よりメルラに幸せな結婚をしてもらいたいんだよ。きっとニコルもそれを願っている」
「そう、でしょうか」
「だってニコルはメルラを他の誰かに奪われたくなくて、他の男に笑顔を見せて欲しくなくて婚約したんだよ? メルラが笑顔溢れる結婚をしてくれるのがニコルにとって一番じゃないかな」
「私は今でも十分幸せですわ」
「そうだね。私も結婚すれば幸せだ、と言わない。けれどね。これから先の長い人生でメルラの側に常に寄り添ってくれる人を見つけて欲しい、と私を含めたレレン家の者は皆がそう願っているんだ。それは分かってくれるかい?」
お父様の真摯な目から私は逸らす事が出来ません。お父様、お母様、お兄様達・使用人達の願いを聞いてしまって、それを拒否出来る程豪胆な性格をしていない私には、皆の願いを受け入れるしか無かったのです。
結局、シムの告白は私が自分の気持ちと向き合う必要がある、と知っただけでした。
それから少ししてレオとの約束の日を迎えました。こう言ってはなんですが、私の家族や使用人達からレオの評判は悪いです。その、ルイン様……私は様付けをして呼んでいますが、平民に戻ったルイン様を様付けするのもおかしい、と使用人達から言われてます……が、結局侯爵夫人になるための覚悟がきちんと出来ていらっしゃらなかった事に怒っているので……レオも当然のように評判が悪くなってしまいました。それを理解しているけれどレオは私との友人付き合いをやめないのです。友情に厚い方なのですね。きっと。
「レーメ殿。……いや、メルラ・レレン嬢」
我が家に来て早々サロンに案内して腰を落ち着けたところでレオが真顔で私を真っ直ぐ見る。私は呼ばれて首を傾げました。
「何か?」
「いきなりこのような事を言うのを許して欲しい」
「ええと?」
「俺……いや、私はメルラ嬢が好きだ。あなたと結婚をしたいと思う」
……何を仰っていらっしゃるのでしょう?
「急だと思う。他の女を好きだったところを見せているのに、何を言う、と思われるだろう。けれど真剣なんだ。4歳も年下のメルラ嬢を私はかけがえのない大切な女性だと思っている。あなたが私のことをどう思っているのか分からない。だがあなたを他の誰かに奪われたくない」
「あの」
どこまでも真っ直ぐな姿勢はおそらく嘘では無いと思われますが。私はレオをそのような対象に考えたことが有りません。ですが、どう言えば良いのか悩みます。ハッキリ言って大丈夫なのかしら?
「メルラ嬢が私の気持ちを受け入れない、と思うならそれは率直に聞きたい。あなたと会うのが最後でも……いや、最後になる覚悟で想いを告げている。この想いを口にする覚悟が出来た私は1つだけあなたにお願いがあるのです。どうか、私の気持ちと向き合ってもらいたい。それから返事を聞かせて欲しい」
「レオの気持ちと向き合う……」
「そうだ。今すぐ返事をくれ、と言っているわけじゃない。メルラ嬢の頭の中を私でいっぱいにして。私の気持ちと向き合って私に返事が欲しい」
なんて言えば良いのか分からなかったので私はその提案にゆっくりと頷きました。突然の事ですし、レオを異性の友人とは思っていても恋をする相手だと考えた事は無かった。けれど、レオがそれを望むのなら。私はレオに対する想いを考える必要があるのでしょう。
レオは私の頷きに安堵の表情を浮かべて「これを伝えたかった」と言いながら、私に上質な紙をくれた。万年筆のお礼とのことで、私の作品を読んでくれている一読者として、この紙に作品を紡いで欲しい、と言い残しました。
ーーもしかして、レオの私に対する想いも、やはり周りから見れば分かり易かったのかもしれない。
この話を執筆中、うっかり間違えてログアウトしてしまいまして。登録し直すのが大変だった夏月です。かなり焦りました。
さて。レオナルドですが。かなり焦って唐突に想いを告げましたが、これが吉と出るか凶と出るか。
普通に考えるとかなり強引な展開なので、レオナルドは振られてもおかしくないと思うんですけどね。でもメルラは優しい娘なので、レオナルドのそういう強引なところも認めていると思われます。でも考えてみれば、かなり自分勝手ですよね、レオナルド。もう少し相手の立場や気持ちを考えて行動しないと、呆れられてしまうよ。
さて。もう1話……リクナルドの話を書いたらまた暫く間が空くかもしれないです。




