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続・1:恋うる想い乞われる想い・I

お待たせしました。

メルラ視点の話です。

あと2話投稿した後、一度別の方視点の話を入れる予定です。

今年もニコの命日がやって来た。あれから8年の月日が流れても私の心はニコと共に在る。少ないけれど友人が居るし家族から愛情をもらっているのに。それでも寂しいと思ってしまうのは……きっとニコルが居ないから。


初恋で婚約者で私の心を奪っていったまま居なくなっちゃった人。


悲しくて寂しくて苦しくて辛くて……怒った。何故私を置いて行ってしまったの? 何度心の中で詰ったかしら。だけどどれだけ詰っても嫌いになれない。ニコが私の心に居るって思えるようになるまで凄く時間がかかったけれど。私の心の中に居る事が分かってからの私は、ようやく笑えるようになった。


ねぇニコ。大好きよ。だけどそろそろニコだけに私の心を割けなくなってしまったわ。ニコも知っている通り私は伯爵家の令嬢で。どこかに嫁にいかなくてはならないの。お父様もお母様もお兄様達も何も言わないけれど、いつまでもレレン家に居られない。令嬢としての義務を果たす必要があるの。お父様は政略結婚が必要でもないし、好きな男性と結婚する事を勧められたわ。

ニコが居ないのに?

寧ろ、政略で結ばれた方が私はきっと諦められたのに。

優しくて酷いわ、お父様。


だけど家族と……おじ様、ニコのお父様と約束をしているの。私がニコルだけを想って居るのは10年まで、と。結婚ばかりが幸せとは言わないけれどニコを想って未亡人のような生活を続けるのはダメだ、と言われてしまっているの。

もっと他に目を向けて沢山の笑顔を見せて欲しいっておじ様に言われたら「無理です」なんて言えないわ。


何より喪に服すだけの日々を一生送って欲しくない。


おじ様にそんな事を言われてしまったら我を突き通す事なんて出来ないじゃない? 結局「10年間まで」と条件を付けられてしまった。私は後2年、ニコだけを想う事が許されているわ。でも2年だけなの。こんなにあなたが好きなのにどうしてそれだけではいけないのかしら……。


そう思っていた私に現実を突き付けて来た人がいる。ニコの親友で私も幼い頃から友人付き合いをしてきたシム……マクシム。1歳下で穏やかな性質の彼を疎んだ事は無いけれど、現実を突き付けてきた時だけは……私の前から居なくなって欲しかった。


「自分がニコルを死なせたと思ってない?」


と尋ねられて。私の中にある罪悪感を暴いてきたシム。確かにその通りなの。だけどそれを暴かないで欲しかった。だっておじ様は私がそう考えていることを一番懸念しているのだから。だけど私を気遣ってくれる友人の心配を無かったことに出来る程、私にとってのシムは蔑ろにしていい存在ではなかった。

ニコとの思い出を共有出来る人。

心許せる友人。

同じ伯爵令嬢のアイラナや子爵令嬢のゼーラタと同じくらい信じられる殿方の友人。


ーーそう思っていたのに。


「……えっ?」


私は今、ニコのお墓参りを終えて屋敷に帰って来たところ。そしてシムがいつもと変わらず私の屋敷に来て庭の散策を2人でしていた。そして言葉を失う。


「聞こえなかったならもう一度言うね。私は……マクシム・イオットは、メルラ・レレンが好きだ。どうか私と婚約してもらえないだろうか。もちろん後々結婚したい」


「……なに、言って」


「メルは全然私の気持ちに気付いていなかったよね。ニコのご両親やメルのご家族でさえ気付いていたのに。これでもアピールだってしていたんだけど気付いてもらえなかったから、はっきりと告げようと思った。メルがニコをずっと好きなのは知ってるよ。私はそれで良いと思っている。無理にニコを忘れろ、なんて言わない。ニコを好きなメルが好きだからね」


「……そんな、急に言われても」


私はようやく思考が追いついてシムに言葉を返す。


「急だと思っているのはメルだけだよ」


シムがほろ苦く笑う。こんな笑みを浮かべられるような人じゃなかったのに。強い視線。男性を、1人の殿方を思わせる微笑み。彼はこんな表情をする人だっただろうかーー。


「でも」


「今すぐ返事を、と言うわけじゃないよ。強引だけど気持ちを知っていてもらいたい。メルはあと2年経てば前向きに結婚を考えなくてはいけない。その相手に立候補したいんだ」


私の結婚についてお父様と約束した内容は、シムには話してあった。だけどシムを友人として見ている私に求婚をしてくるなんて思ってもみなかった。……私の気持ちがついていかない。


「あの。あのねシム。私はシムを……マクシムを友人として見ているだけだったの」


「うん、解っているよ」


「どうして。私じゃなくても良いでしょう?」


「いいや。ニコと婚約していた頃からずっと君が好きだ。とはいえ君を忘れようとして他の女性に目を向けるべくお見合いもした。それでも私は君が好き。ただそれほど想っていることを先ずは知って欲しい。これから2年間、メルラを好きだと言い続けるよ。強引だと思う。押し付けがましいかもしれない。友人だと思っていたのに裏切られた、と思うならばそれは謝る。だけど私は後悔したくないんだ」


……急にシムが知らない殿方に見えた。


「先ずは私がメルラを女性として想っている事を自覚させたかった。今日のところはここまでにしておくよ。ただ私は君の中のニコを受け入れられる自信がある。それくらい好きだ」


それを機にシムは帰って行った。私に大きな難問を残して。

そんなわけでマクシムに告白されるメルラの話でした。あとはリクナルドとレオナルドの話を書きます。


そして未だにメルラが誰と恋に落ちるのか作者自身が想像出来ないのでリクナルドとレオナルドの話が終わったらまた間が空くと思われます。

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