5:非常事態です。
ルインさん、動きます。
「……えっ?」
私は目をパチパチと瞬いた。いきなり、次にレオナルド様と会う日に、私も同席して欲しい、とルイン様から言われた。驚くな、という方がおかしい。恋人達の邪魔をするのは心外なんですが……。どうしても、と言われてしまえば、分かりました、と頷くほかには出来ない。そうして、ルイン様とレオナルド様が会う日。私は困惑したレオナルド様と同じくらい困惑して、2人の逢瀬に立ち会った。
「レオ。私、あなたとの恋人関係を解消したいの」
………………えっ。
私でさえ固まったのだから、レオナルド様は更に固まっている。大丈夫、だろうか。
「な、何故だ!」
あ、動いた。大丈夫か。
「その理由を話す前に、私、メルラ様に謝らないと」
「私に?」
「私の代わりに、ご令嬢達の嫉妬を受けさせてすみませんでした」
「それは」
「本当なら私が受けるべきでした。でも怖くて出来なかった」
「それはそうだと思います。女の嫉妬は怖いわ」
「だけど、メルラ様は私を庇ってくれたのに、私はメルラ様を助けられなかった」
「いえ、それは気にしなくても」
「いいえ。人として、最低でした。だから、私はレオ、あなたに相応しくないの。そう思った。今の私は平民に戻りたい。それが願いなの。私では令嬢達の嫉妬に立ち向かえる自信が無いわ」
私に謝っていたルイン様は、レオナルド様に視線を向けてキッパリと告げる。私、ここに居ない方がいいと思うのですが。
「私は外れますから、お2人でよく話し合われたらどうでしょう?」
私の困惑をルイン様もレオナルド様も理解しているように、頷く。いや、多分レオナルド様はまだ混乱中でしょうけど。突然、最愛の恋人に別れを告げられたら混乱しても仕方ないと思います。
どうか、お2人が納得いく形に収まって欲しいですが……。
確かにご令嬢方の嫉妬は怖いのは分かりますが、それはレオナルド様が守って下さると思うのですけれども。私は仮とはいえ婚約者ですが、殆どレオナルド様と会話をしていませんし、手紙のやり取りも会いにいらっしゃる日取りを決めるくらいですから、ルイン様とレオナルド様の事に口を出せませんし。
でも、困りましたわ……。緊急事態ですわぁ。新作、やっぱり恋愛作品以外で書くことになりそうかしら……。
ああ、いえ、お2人の事の方が大事ですわね。私の新作なんかどうでもいいですわ。私ってば、自分の事しか考えずに、お2人に悪いです。反省しなくては。とりあえず私はこの場を離れる事にしました。
「メルラ様。話し合いが終わりましたら、お伺いします」
ルイン様がそう仰るので、私は分かりました、と頷きました。
恋愛小説どころじゃなくなったメルラ。新作は冒険モノにするか、と考えています。
次話はレオナルド視点。




